見出し画像

【五月病対策】『暗闇の囁き』『太陽のパスタ、豆のスープ』『人を動かす』


GW明けの本格的な1週間、5月10日の週は、お休みからの反動もあって、ほんの少し気持ちが挫けそうになった。

いわゆる五月病を吹き飛ばすような読書を考え、私は3方面から本を選んで読んでみた。


1.異世界で気分転換『暗闇の囁き』


まず一冊目は、『暗闇の囁き 新装改訂版』(綾辻行人著)。私はこの囁きシリーズ、『緋色の囁き』しか読んだことがなく、新装改訂版が出たら読もうと心に決めていた。


ミステリーやホラーは、一度現実世界の煩わしいことを忘れて、異世界で気分転換をするのにぴったりだと思う。


大学生の拓也は、卒論執筆に集中するため山奥の別荘へ向かう道中、二人の美少年と出会う。彼らは実矢と麻堵という兄弟で、白亜の洋館に滞在していた。


拓也は彼らを洋館へ送り届けた。少年たちや、彼らの家庭教師である女子大生の遙佳と関わるうちに、拓也の昔の記憶が徐々に甦る。


非現実的な世界観だが、読み始めると、違和感なくすっと入り込める。死の描写もあるし、気味が悪い場面も少なくないのだが、残虐さよりもあやしい綺麗さが印象的だ。


味わい深く、気持ちはすっかり日常から離れ、この本の舞台である烏裂野へ飛んでいた。


2.困難に立ち向かう主人公から勇気をもらう『太陽のパスタ、豆のスープ』


次は、『太陽のパスタ、豆のスープ』(宮下奈都著)。異世界から、少し現実世界に戻ってきた。


婚約を解消され、どん底の明日羽が、叔母の勧めでドリフターズ・リストを作り、家族や友人、同僚に支えられて少しずつ前へ進んでいく様子を描く。


ドリフターズ・リストは、その人が進んでいく指針になるような、やりたいことリストだ。


やりたいことリストの項目は、自分で叶えるしかない。特効薬があるわけではなく、明日羽がもがく姿に勇気づけられた


私は仕事の色々なことを考えながら読んだので、お休み明けの明日羽と上司の山吹さんのやりとりは刺さるものがあった。

会社の仕事って、誰かが休めば誰かが代わりにやる、それが基本でしょう。(中略)その人にしかできない仕事なんてあっちゃいけないのよ
その人にいてほしいのは特別な仕事ができるからっていうだけじゃないと思うのよ。
大事な会議の資料を任せられるのはどうしてだと思う?あなたに頼めば間違いないからよ。(中略)あなたには自信を持って仕事をしてほしいの


認められたいし、誰かの役に立ちたい。でも、一人ですべてを抱えることはできないし、それは適切ではなくて、部下・後輩に上手く振ることも必要だ。部下・後輩に負担がかかりすぎないようにしなければいけないけれど、一方、彼らだって認められたいし誰かの役に立ちたいと思っているだろうから、作業ではなく仕事を振らなければ…。


誰か一人がいなくなったら全体が回らない組織は良くないし、皆で支え合うのが理想だ。一方で、その場合、自分がこの席にいる意味を、どうやって作っていけば良いのだろう。


そんなことをぐるぐる考えていた私には、山吹さんの言葉が静かに沁みた。


3.悩みに正面から向き合う『人を動かす』


3冊目は、『人を動かす』(D.カーネギー)。私はがむしゃらに目の前の仕事を頑張っていれば良かった立場から、部下・後輩のマネジメントを考えなければならない立場への過渡期にいるため、小説で癒やされるのと並行して、直接的にその悩みの解決に資すると思われる本を読んだ。


人を動かす3原則や人に好かれる6原則など、周りの人と上手くやるための方法を説明している。


小手先の方法ではなく根本的な原則が扱われている分、目新しさはあまりない。どちらかと言えば、わかっているけれどできていないな、と思わされることが多い。


しかし、畳み掛けられるように紹介される実例によって納得感が高まり、意識してみようと強く思えた。


自分がされて嬉しいことをする、嫌なことはしない、相手の話をよく聞く、正論を言うときほど言い方に注意する、というような基本を改めて忘れないようにしたい。


五月病から抜け出せていない方、何かに落ち込んだり悩んだりしている方、低気圧でなんだか元気が出ないなという方に少しでも参考にしていただけたら嬉しい。


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,937件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?