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「土地の魅力の届け方を求めて」 大手企業の会社員の私が地方創生スタートアップを始める理由 <第3回>

地元の魅力を伝える媒体はどこに?

旅行に行くとわかるのだが、観光情報誌や観光系まとめサイトの情報は、旅行中「もっと知りたい」と思っても情報量が不足している。しかし、旅中では、現地にいるわけなので、より深い情報が欲しくなってしまう。旅に慣れた人に聞くと、そんな時は、現地住民にヒアリングをし、より深い情報を引き出しているというが、大半の人は、そこまではせず、何となくやり過ごしてしまっていると思う。

SNSは「爆速」情報伝達手段

ここで、旅のきっかけは何であったかを考えると、TV番組やfacebook、インスタグラムの写真に喚起されて、旅行に行きたくなることがあると思う。人の脳は、画像を文字より6万倍早く処理できるので、「直感で魅きつける」には画像が向いている。それもあってか、最近では旅行雑誌を「読んで」行きたい場所を決めるよりSNSによる「直感に訴えかける画像」が観光誘引に一役買っている。(本屋に行って立ち読みする機会も減ってますよね。)

SNS情報は忘却も「爆速」

第2回で書いたよう、誘引に価値のある情報というのは、観光地まで顧客を引き込むが、それ以上は能力を発揮しづらい。SNSで見た情報を、保管し忘れて、何に感動したのかさえ忘れてしまう、そんな経験は無いだろうか。旅行に行きたいと思った衝動でさえ、消えていってしまう。忘れないようにするためには、スクショをとって画像として保管したりしてないだろうか。そうでもしないと、情報を留めておく術がないのだから仕方ない。

あゝ儚いかな、SNS情報

SNSの情報は1つひとつをとって見れば素晴らしい情報だ、しかしそれらは刹那的で、タイムラインという儚い時間軸に乗って流れていってしまう。だから「覚えておきたい!」と思った人はスクショをとるのだろう。私の直感的感覚だが、SNS情報の平均寿命は良くて3日以下ではないだろうか。あゝ儚い。

方程式:SNS情報×目的地=遠い

SNSでの出会いを一期一会として、スクショに留めコレクションするのも一つの手だろう。しかし、世の中そんなマメな人ばかりではない。今観光地に来ていて、SNSの書き込みを見返している時。行こう!と思ったこの瞬間に「どこにあるか」こんな基本的な情報が、実は伝えきれてないのではないだろうか。「吉永小百合がTVCMで歩いていた、魅力的な景色はどこだろう」そう感じた人は、ネット検索を駆使し、いろいろなWEBページやブログの書き込みなどから場所を特定。そしてGoogle マップを開いては、自分のいる場所から行ける所なのかを確認する。この間どれだけWEBの海を漂ってしまっただろう。行動に移すまでの道のりが遠い。このやり取りに、うんざりしてくる人もいるのでは?

気持ちを冷ますな、チェーンさせよう

観光サイトや雑誌に書かれているおすすめスポットは実はかなり目が荒い。面白そうなところをいくつかピックアップし、巡ろうと思ったら、それぞれの場所が離れていたり、交通手段や時間がバラバラだったり、結局全部を巡れなかったりしたら、楽しい気持ちも冷めてしまう。旅行には移動する方向や手段が多々あるのだから、なるべく最適な進み方で、多くの魅力的なスポットを回れるよう、チェーンさせる仕組みが必要だ。

「オススメコース」のジレンマ

オススメコースは、とてもいい。何も考えなくても、地元のオススメスポットを巡ることが出来る。しかし、オススメコースの利用は諸刃の剣の側面がある。すでに計画されたコースを画一的なロールプレイで回るため、旅の目的が「回ること」と勘違いしてしまい、終わりには「回りきった満足感」で満たされる恐れがあるのである。この場合一度コースを回った観光地には「もう行ったこと(回ったこと)があるから、もういいや」といった具合に「回りきった満足感」が邪魔をして、リピートにつながりにくいというジレンマがある。

偶然の出会い→感動→リピート

最近の観光客は賢い。観光コースに作為的なオススメスポットがあれば、押しつけられたように感じてしまい、冷めてしまうし、正直、地元の人もあまりそういったスポットは、お勧めしたいとは思ってないんじゃ無いだろうか。それは、直感的に、旅の価値は「偶然の出会い」にあることを解っているからだと思う。その土地で偶然の出会いがあった時、その感動は心に深く刻まれ、また同じ感動を求めて顧客はリピートしてくれる。

多くの偶然の出会いを起こそう!

旅行の目的は「行くこと」や「巡ること」ではなく「心に感動を残す」ことだった。この2つは似ているが、大きく異なる。最も異なるのは、顧客がリピーターになるかどうかである。感動をより多く供給することが出来れば、リピート率が上がるのであれば、もっと多くの偶然を誘発させようではないか!観光地に多くの感動と出会えるチャンスを増やしていくのだ!

感動を顧客に提供する手法は?

前述したように、SNSの情報やブログなどの書き込みなど、素敵な情報はWEB上に溢れている。そのひとつ一つが、旅行中にしっかりと顧客へリコメンド情報として供給され、現地で体験することがでれば、感動を増やすことが出来る。しかし、儚くもタイムライン上で流れ消えていくSNSではそれは難しそうだ。これらの情報を恒常的に顧客へ提供し続けるにはどうすれば良いか。つまり、儚い情報の群れを、サスティナブル(持続可能)な情報に変換する方法である。私の出した結論は、地図にまとめることである。

チリも積もれば地図は最強ツール

観光している時に調べたスポット情報の使い方を想像してみる。「海鮮丼が美味しい店」複数ヒットする。中でも1店舗に絞る。1日に食事ができる回数はせいぜい3〜4回が限界なので、他の海鮮丼店舗の情報は今回の旅では優先度が下がる。しかし、一度海鮮丼で調べ始めると、そのほかのリコメンド情報まで、みんな海鮮丼になってしまうので、次の目的地を決めるためには、検索のし直しだ。しかし、地図なら海鮮丼を食べたお店の周辺にどんなスポットがあるのか一目瞭然だ。そこには「足湯」があったり、お土産物屋があったり、神社があったり。今いる位置を起点に目的地が決められるから都合がいい。どんな小さな情報でもいい。ダイバーシティ化する顧客に対して、何が感動のスイッチかはわからない。だから今いる位置から行動できる範囲内で、感動できる偶然の出会いを、地図で誘発するのだ。

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出典:伊豆の国市観光協会「伊豆長岡温泉ごあんない」より
イラストが周辺情報の魅力を直感的に伝えてくれるので、ワクワクする。

紙の地図の限界を覆せ

地元にしか置いていないタウンマップ、私はこれが好きだ。先ず絵がいい、ぱっと見て地元の雰囲気が一瞬で伝わってくる。WEBに載っていないようなコアな情報も満載で、まさに偶然の出会いへの期待感のかたまりだ。だから、もっと情報はないのか、もっと、もっとと、考えてしまうのだが、紙には面積に限界があるので、情報が増えすぎた地図は見るに耐えない。文字だらけでどこから読んだら良いかわからなくなる。この弱点を克服するには、紙をとてつもなく大きくする、デジタルマップにするしかない。現在すでに、Google mapをベースとしたマップサービスが多くあるが、みなさんはGoogle mapにシズル(魅力)は感じるだろうか?

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出典:信州渋温泉ホームページより
文字を多く掲載すれば写真は入らなくなる、写真を入れると文字で語れなくなる。紙の地図は紙面に限界があり痛し痒しだ。

地元の魅力は地元独自のクリエイティブから

Google mapは最高に便利な地図であるのだが、多用途に対応できることが裏目になって、地元の魅力発信には最適化しにくいのである。地元タウンマップの魅力は地元らしいクリエイティブがあってからこそだ。そんなデジタルマップがあれば魅力や感動がもっと届けられるはずだ!だから、オリジナルのデジタルマップが日本中の観光地でもっと増えると、観光客にはもっと多くの感動を届けられると信じている。

開発費が高すぎて誰も手が出ない問題

しかし、地元の観光協会や自治体がクリエイティブの優れたデジタルマップを開発すれば良いのか?これは、予算の面で難しい。クリエイティブの優れたタウンマップに関しては兎にも角にも膨大な開発予算がかかる。先日ヒアリングした自治体では、約100万円の開発費をかけたデジタルマップを紹介していただいた。しかし、アクセス数、利用率ともに、ほとんど使われていないのが実情とのこと。100万円クラスの投資では、ユーザーが満足できる地図にはしにくいようだ。しかしこれ以上費用を掛けようなど考えられないのでは無いだろうか。。。

初期投資なしで、最高の地図を提供できないか!?

この初期投資をなくすことができれば、もっと地元の魅力の発信、感動の供給が活発になるのではないか。むしろ、初期投資は、地図に掲載する魅力情報を発掘する時間に対して投資するべきだ。そう考え、私は地図プラットフォーム開発の実証実験を始めた。

<第3回はここまで>

地図開発の実証実験を終え、現在の取り組みを下記URLにクラウドファンディングのプロジェクトとして掲載しています。是非チェックしていただけると幸いです。長文購読どうもありがとうございました!

前回のnote
第1回「きっかけ」
第2回「広告スパイラルから脱却せよ」

次回:第4回は7月上旬公開予定で執筆中。週に1回のペースを目指し進めてまいります!


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