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『養生訓』に書かれている快眠のコツ「獅子眠」とは

日本人の5人に1人が悩んでいると言われる「不眠症」。どうすれば、朝までぐっすり眠ることができるのか? スッキリ目覚めるには、どうすればよいのか? そんなお悩みを持つ方におすすめしたいのが、精神科医・岡田尊司先生の『人はなぜ眠れないのか』です。今夜から試せる「睡眠コントロール術」が満載の本書より、一部を抜粋してご紹介します。

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自分なりの「入眠儀式」をつくる

印刷業で成功し、政治家や科学者として活躍し、アメリカ独立戦争の際の外交官としてアメリカの独立にも貢献したベンジャミン・フランクリンは、不眠症で悩まされたことで知られている。フランクリンの場合は、寝具の温度にうるさく、ベッドが温まりすぎると、窓を開け放って、寝具を冷やしてから、再び横になったという。

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『トム・ソーヤの冒険』などで知られるアメリカの小説家のマーク・トウェーンも、室温が高すぎると眠りにくくなる体質であった。眠れずにイライラして、枕を放り投げたら、ガラスが割れて、外から涼しい風が入ってきたせいか、ぐっすり眠れたという。

だが、目が覚めてみると、そこは友人の家で、しかも割ったのは窓ガラスではなく、本棚のガラス戸だった。どうやら作家は、睡眠のこととなると、我を忘れてしまうところがあったらしい。

不眠症の人には、そうした傾向は珍しくない。普段は穏やかな人が、睡眠のこととなると人が違ったように必死になり、睡眠薬を手に入れるためなら、何でもしかねないほどの心理状態になることもある。

スムーズに睡眠に移行するためには、入眠へのプロセスが条件反射的に進む必要がある。つまり、寝るときには、決まった手順や決まった刺激が与えられるようにして、ある条件が整うと、自動的に脳が眠りの態勢に向けて用意を始めるようにする

ある場所で、ある一連の行動をすると、眠りが来るという習慣をつくっていく。そのために守ったほうがよいことの一つは、寝室やベッドは、夜眠るとき以外はできるだけ使用しないことである。ベッドで仕事をしたり、テレビを見たりということは、避けたほうがよい。

逆に、他の場所、たとえばリビングのソファーの上やコタツの中で眠ることも避ける。夜眠るときは、必ず、決まった寝室やベッドで寝るようにする。

寝る前に音楽を聞いたり、読書をするという場合も、寝るときにだけ聞く音楽、寝るときにだけ読む本というのが決まっているほうがよい。

眠る姿勢は「横向き」がいい

眠りに入る姿勢も重要だ。自分の一番眠りやすい姿勢は、目が覚めたときの姿勢であることが多い。布団の重みが気になるといった神経質な人やいびきが激しい人では、仰向きの体位よりも、横に体を向けたほうが眠りやすいことが多い

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東洋医学の叡智を結集したことで名高い貝原益軒の『養生訓』にも、

「夜ふすには必ず側にそばたち、わきを下にしてふすべし。仰のきふすべからず。仰のきふせば気ふさがりて、おそはるゝことあり。むねの上に手をおくべからず。寝入て気ふさがりて、おそはれやすし(夜寝るときは、かならず側臥位で寝ないといけない。仰むきはいけない。仰むきに寝ると、気がふさがって、うなされることがある。胸の上に手をおいてはいけない。寝いってから気がふさがってうなされやすい)」(貝原益軒『養生訓』現代語訳は松田道雄訳による)

とあり、仰向きよりも横向きに寝ることを勧めているが、これは、いびきや睡眠時の気道閉塞を防ぐのにも役立ち、腰にも負担が少なく、医学的にもメリットの多い方法だと言える。

『養生訓』には、眠るときの姿勢について、もう一つヒントになることが書かれている。それは「獅子眠」というもので、横向きになって、膝を曲げ、両足を縮めるようにして眠るという方法で、いよいよ眠るという段になって、この姿勢になるとよいと書かれてある。

実際、「獅子眠」の姿勢は、とても眠りやすい。この姿勢が眠りやすいのは、胎内にいたときの姿勢に近いからだろう。


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