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【法人増税】イギリスの予算案は支出は増加するが、増税は先送り。他国の先行事例となるかが注目点。

イギリスでは本日の春季予算案で財政支出(失業手当の延長など)とともに、法人増税の先送りを発表しました。コロナ後の経済回復局面において、他国が同様のスタンスを追随するかに注目しています。

1. 本日の発表内容

Rishi Sunak財務大臣は本日の春季予算案において、失業手当(給料の80%を補填)の9月末までの延長、ユニバーサルインカムの上乗せ延長(£20/週、6months)など財政支出を発表しました。一方で、注目された増税については、法人税引き上げ(19%→25%)を2023年以降に行うとし、実質的な増税の見送りとなりました。

理由としては、コロナ禍の経済の落ち込みは従前の悪化シナリオを上回るものの、経済の立ち直りには想定以上に時間がかかるという見立てからです。

株式市場においても、一度は最悪期を織り込んだが、その後、各企業が市場予想を上回る決算を発表し、株価が上昇しました。マクロ経済全体も、同様に改めて下振れリスクは減退しています

一方で、大きく打撃を受けているセクター中心に再度成長軌道に戻るには想定以上に時間がかかる上に、次期尚早な増税は景気の腰折れにつながりリスクがあります。今回の遅延措置は一時的に財政健全化を犠牲にしてでも、成長回帰を優先したいとの思惑です。

各国ではすでに財政政策を継続的に実施し続けていますが、経済回復の軌道と、それに基づく増税案については明らかにされていませんでした。今回のイギリスの将来的な増税スタンスは他国にも影響を与える可能性があります。

2. 今後の展開、投資のポイント

目下、株式市場では金利上昇が引き続き、市場のドライバーとなっています。米国の追加財政政策が債券の発行増加や財政赤字の増加につながるためです。

財政支出を、増税とセットで実施する場合は、国債発行額・財政赤字額を抑制できるため、金利市場を落ち着かせる(低下させる)要因になります。

一方で、米国や他国においても、同様の経済回復に対する見立てから、増税を後ろ倒しにする議論や観測が増える場合には、さらに金利市場にとって重石となる可能性があります。とりわけ今の債券市場の地合いは、各種ニュースを金利上昇に結び付けたい思惑が支配しており、引き続き、金利上昇および株価の調整局面を念頭におく必要があると思われます。

日本においては、コロナの打撃は相対的に小さいものの、財政支出の規模は米国、イギリスに比べ小規模であることから、経済回復のスピードも遅れるものと予想されます。増税のハードルは引き続き高いものの、他国の先行事例が今後も参考になると考えています。

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英国紳士



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