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小鳥カフェ トリコヤ ⒐なれそめ 連載恋愛小説

淡い黄色のボディを投げ出し、手のひらのベッドで心地よさげに目をつむっている。
なでる指を止めると、くちばしを押しつけ催促する。
「すごい…メカちゃん、心開いた…」

人見知りのオカメインコが、根気強いアプローチに陥落した瞬間だった。
「これは…はなれがたい」と創史そうし
「へそ天だあ」
「へそはないですね」
創史とメカ、ふたりのイチャイチャを、かの子は感慨深く間近で見守る。

「お客さん…延長します?」
「いかがわしい店みたいですが」
「ふふ。優良店なので。スタッフの健康が最優先ですけど」
足しげく通ってくれる彼に誰ひとりなつかないのが、不憫ふびんでならなかった。
ガラス越しにながめるだけで癒やされる面もあるが、このちいさな宝物はふれてこそ、その威力を発揮する。

かの子はメカちゃんに頬を寄せて、お見送りをした。
「また会いにきてくださいねー」
「どっちに会いにきてんだか、って感じだけど」
ボソッと言われたが、そのときは意味がよくわからなかった。

***

小鳥を飼育するための住環境を確認してほしい。
きっかけは、そんな依頼だった。
直射日光やエアコンの風の当たらない場所にケージを設置するなど、口頭で済まそうとしたが、彼はピンときていないようす。

どんな部屋が適しているのか、具体的にアドバイスを求められた。
家庭訪問の前になぜかカラオケタイムが設定され、かの子は狐につままれたような気持ちになったのだった。

(つづく)


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