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小鳥カフェ トリコヤ ⒖見解の相違 連載恋愛小説 

「それに、声目的じゃないし。そもそも」
到底信じられず、かの子は白い目で圧をかける。
「じゃあ、声以外で好きなとこ言ってよ」
「飯とスイーツがうまい。鳥がはえてる」
「薄いです」

ため息をついてかの子を抱え直した創史そうしは、観念したような初めて見せる顔をした。
「インコに似てる」
この期に及んでふざけているんだろうか、この人は。

興奮すると天然のチークが浮かぶ。
最中も例外ではなく、「それでリミッターが外れる」
大真面目に言いきられて、かの子の頬が上気する。
「あと、やったあとの、ふにゃふにゃになったかの子さんが、そそる」
容赦のない反撃を撃ち込まれ、頭痛がしてきた。

「初デートで手を出すわ、ドン引きされるわ、ヘコみっぱなしですよ」
全然そんなふうには見えなかった。
好きな女の前では男は虚勢を張るもんなの、と投げやりに言う。

やった、とささやくと、怪訝けげんそうにのぞき込まれる。
「初めて弱み握れた。いつも振り回されてるから」
それはこっちのほうだ、と解釈の不一致。
ついでに言うと、あれはお宅訪問であって、けっしておうちデートではないとかの子は思う。

***

本音っぽいことが聞けたとたんに気分が高揚するから、恋は現金だ。
これまで意識してこなかった頬を親指でなでるしぐさが、急にはっきりとした意味を持つようになった。
「あの、ここお店…」
「うん、そーだね」
微妙な体勢になったので、回避の口実にかの子は頭をめぐらせる。

「スタッフ起こしちゃうので」
「そんな激しいんだ」
完全に面白がっている。
「やめてくれないと、口きかない」
どうだと言わんばかりに強気の表情を作ってみたが、創史はうつむいて笑うだけ。

「そうきたか」
余計に燃えるから、やめておいたほうがいい、とのアドバイスを頂いた。
「あ…全部やめる、っての撤回して。絶望するから」
かの子は泣き笑いになって、うなずいた。
帰ろっか、とナチュラルにお持ち帰りされたのは、言うまでもない。

(つづく)














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