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便利屋修行1年生 ⒉キケンな任務 連載恋愛小説

キケンな初任務と所長に聞かされていたのだが、要は不用品回収だった。
巨大な倉庫に冗談かと思うほどモノが詰め込んであり、何年もさわられた形跡がない。
天井スレスレまで積み上げられた荷物に素人が下手に手を出せば、大雪崩なだれを引き起こしそうだ。

ひとつずつビニールシートに移動させ、売却できそうなモノと廃棄組を仕分ける。ほこりまみれになりながら、いったい何時間かかるのかと、気が遠くなる。

「そういう資格あるんですか」
愚問だったのか、当然のごとく返事はない。
沢口は玄人くろうとっぽい目つきでなにやらチェックし、あっという間に目星をつけ終えた模様。

依頼人と買取価格の交渉をし、取引成立。
30分後には秋葉さとるも合流して手配していたトラックに積み込み、わずか3時間で作業完了。

***

綾といえば、掃除を言いつけられただけ。なんの役にも立たなかった。
「いやいや、意外と力持ちじゃん、綾ちゃん。がんばってたよー」
秋葉の人なつこい笑顔と、沢口の仏頂面のコントラストときたら。
「……俺の指示忘れた?」
反応できずにいると、断りもなく右腕をまくり上げられた。

「うわ、青アザ。イタそー」と秋葉。
荷物を取り落としそうになり、あわてたはずみでひじを強打したのだ。
なぜバレたんだ。無意識にさすってたのかな。

***

「勝手なことして、すみませんでした…」
さすがに自己嫌悪に沈む。
秋葉がコンビニで大量にお菓子を買い、ビニール袋を綾の膝にポンと載せた。のぞいてみると、肘用の湿布も入っている。

「事務所の救急箱にあるのは、フツーの湿布だけなんすよね?慶さん」
そしらぬ表情の運転手に、綾の目が釘付けになる。
「もしや…ツンデレですか?」
秋葉が涙を流して笑い、場がなごんだ気がする。
沢口の表情はゆるむどころか、眉間のシワがえらいことになっていた。

(つづく)

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