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フマジメ早朝会議 ㉒疑惑 連載恋愛小説

その顔を見るなり、恭可は事務的に質問をかぶせた。
「スロットしますか?競馬、競輪、競艇きょうていは?」
突拍子のない言動に慣れてきたのか、彼は片眉をすこし上げるだけ。
「…しないけど。なに?心理テスト?」

とりあえず、第一関門突破。
恭可がひそかに胸をなでおろしていると、数仁かずひさは続けて言った。
「投資はしてるけど。なんか関係ある?」
目の前が真っ暗になる。
投資なんて、ちょっとお上品なギャンブルじゃないか。
表情をなくした恭可に数仁が声をかけようとすると、広大が話に入ってきた。

***

「やっぱ、時代は資産運用っすよねー。年金制度とか、確実に瓦解がかいするだろうし。新NISAも始まったことだし」
初心者は、手数料の低い金融商品から始めるといいだの、リスクヘッジがどうの外国株がどうのと、ふたりで盛り上がっている。

「FXとか暗号資産とかと、ごっちゃになってないか?」と数仁。
投資≠ギャンブルだといくら説明されても、まったく頭が受けつけない。
なんでここまでショックが大きいのか。
今すぐ布団をかぶり、恭可は夢の中へ逃げこみたくなった。

***

実家での生活は神経がもたず、1年で解消。
働きづめだった母は、パート先の社員さんといい感じになり、同棲。
母の笑顔が増えたから、彼氏さんには感謝している。
恭可ははじき出されるようにして、今のアパートへ。

根無し草のような人生において恭可が正気を保つことができたのは、手帳のおかげだ。
マイナスのことにばかり気を向けないようにと、泣き言はけっして書かなかった。

毎晩、寝る前に"3 good things”のリストを作る。
その日を思い返し、よかったことを挙げていく「いいこと日記」だ。
ちいさな幸せは思いがけずたくさんころがっていて、生きているのも悪くないんじゃないかと思えてくる。
ちょっと行動を変えれば、世界は輝きだす。
ウジウジ悩まず、ぐっすり眠れるルーティンとなっていた。

(つづく)
▷次回、第23話「落とし穴」の巻。



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