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フマジメ早朝会議 ⒏商品開発会議 連載恋愛小説

今回のBK5には、箝口令かんこうれいが敷かれている。
今年、開店30周年を迎える喫茶トモシビのために、記念品を作る計画が立ち上がったのだ。
じーちゃんに悟られては元も子もない、と広大は気合いが入りまくっている。
マスターが厨房にこもっている時間帯に、やることをやってしまおうと。

「では、第1回・商品開発会議をおこなう」
メモ・クリアファイル・ノートにふせん。
さらには、マグカップ・トートバッグ・Tシャツなど、チームワークですらすらと思いつく。
電子メモに入力していた数仁かずひさが、顔を上げた。

「肝心のデザインは?ロゴとかキャラとかあるんですか?」
初歩的ミスにおののき、一同、顔を見合わせる。
ロゴはあるにはあるのだが、なんの変哲もなくフォントにすらこだわりがないありさま。

「屋敷さん、記念ロゴお願いできますか?」
広大はすっかり数仁になつき、頼る気満々だ。
「あーいいけど。それだけだと、弱いような…」
マスターの似顔絵をキャラ化しては?との恭可の思いつきは、すげなく却下される。

***

「もっとかわいいのがいいなあ」
なにげにマスターをディスる苑乃子。
朝香が両手をパンと合わせた。
「いるじゃん!かわいーの。しかも、食いしん坊」
なぜだかいっせいに視線が集まり、だれのことかと恭可は後ろを向く。

かくして、姓はシッポ・名はマリコ。
トモシビの公式シマリスが爆誕したのだった。

「マリコってなに?」と広大が不思議がる。
「マスターの初恋の人。しょっちゅう聞かされてる」と恭可。
「初耳なんだけど。つか、ばーちゃんに知れたら…」
「だいじょぶ。同一人物だから」
自分の祖母の名を知らずにいた広大を、みんなでひとしきりいじる。

***

あらたに編みぐるみシッポちゃんを制作することも、決定。
手芸部が全面協力してくれることに。
わがまちの文化祭のような、お祭り感が出てきた。
さすがに、マスターにバレるのは時間の問題だろう。

「恭ちゃんがいつも以上にニヤニヤニヤニヤしてるし、広大はキョドるし、バレバレだっての」
早くも翌日に言われてしまった。

(つづく)
▷次回、第9話「シッポちゃん動画」の巻。


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