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フマジメ早朝会議 ⒓生存本能 連載恋愛小説

SNSでたびたびメッセージをくれるユイさんと、ご対面。
「おもちゃ箱をひっくり返したみたいな栗林さんの作風が大好きで。今日は楽しみにしてました」
オープン直後に来てくれたので、社交辞令ではないらしい。
文面や投稿のイメージとご本人の雰囲気がぴたりとあてはまり、手を取りあって跳ねる。

「ほんとにいいんですか…?」と恭可が心配するくらい、大量購入。
シッポ・マリコのしっぽが取りはずせることに、彼女は衝撃を受けたようだ。マジックテープでくっついている尾は、単独でミニポーチに。

マスターの「シッポがなかったら、ただのマリコじゃねえか」発言がよみがえり、ツボに入ってしまった恭可。
時間はあるらしいので、ブースに彼女を招き入れ、ゆっくりおしゃべりする。

「野生のリスって、敵に襲われたときにしっぽが抜けるようになってるそうなんです。これ、ガチです」
そして、抜けたら最後、もう二度とはえてはこない。
バランスは取れなくなるわ、防寒機能もなくなるわで、死活問題なのだ。

***

「あの…こちらのかたは?」
「執事の屋敷です」
だれが執事だと、高速ツッコミ。
「じゃなくて、マネージャー兼参謀です」
訂正するのも面倒になったらしく、恭可の好きにさせる数仁かずひさ

レターセット・ポストカートにダイカットステッカー:新作もコンプリートしてくれた。
オリジナルスタンプでおめかしした平袋に、紙モノをていねいに封入する。
喫茶トモシビの30周年パーティー招待券も一緒に。

「こんなにお迎えできて、ホクホクです」
そのとろけたような笑顔に既視感が。
文房具店ではじけたときの自分だと気づき、恭可は泣きそうになってしまった。

***

「落ち着きがないって、言われてたな」
「は?ちがいますー。かわいいって言われたんですー」
もはや才能だな…とほめられる。

売り切れたことなどないのでのんびり構えていたが、数仁の手腕により予備のシッポちゃんズまで引っぱってくることに。
わずか数時間で販売記録を塗りかえてしまった。

(つづく)
▷次回、第13話「ハイブリッド恭可」の巻。



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