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Re:逃走癖女神 ⒌甘いアリ地獄 連載恋愛小説 

「来月は栗づくしだそうで」
「行く」
食いぎみに反応してしまったのは、致しかたあるまい。
「あ、でも今度は友達と来ようかな」

よく知らない人と1時間近く向かいあって食べるのは、気づまりかも。
紗英とならキャーキャー言えて、楽しさが倍増しそうだ。
そんな妄想もむなしく、園田朔久さくの名で予約を入れてあると敵は先手を打っていた。

***

締めは、巨峰のシャーベット。
最後のひとくちまでおいしくて都は名残惜しくスプーンをなめ、うっとり。
帰り際、パティシエからのお土産、と称したジュエリーショップみたいな紙袋を渡された。

「こちらも、コースに含まれています。本日は、ご来店ありがとうございました」
リーフパイ、タルトタタン、いちじくクレームブリュレの秋スイーツ祭り。
「絶対通います。パラダイスです。ごちそうさまでした!」
個人経営のお店だから作ったご本人と会話もできて、大満足。
至れり尽くせりの、ぜいたくな時間だった。

***

店を出たところで、都は叫んだ。
「どうしました?」
「写真撮るの、わすれた…」
夢見心地で、そんなことまで気が回らなかったのだ。
「よかったら、送りますよ」
違和感なさすぎの流れで、個人情報を進呈する。
店では撮影していなかったのになぜかと問えば、下見の際に済ませたと涼しい顔。

「え…2回食べたってこと?」
「引きますか?」
「行きたかった…」
心の声がもれ出てしまった。

(つづく)
▷次回、第6話「都、オッサン連中に悩まされる」の巻。


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