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[RIZIN.40] 注目選手と対海外と展望

大晦日の一大イベント「RIZIN.40」は激闘の夜を多くの人々に届けた。

格闘技は大会の前後でそれぞれの選手の今後が大きく変わる非常にシビア世界だ。

その結果次第でその先の展望がガラリと変わってしまう。

今大会の「RIZIN.40」ではその結果による明暗がどのように影響し、今後の展望・各階級の動きに繋がっていくのか。

対抗戦とは別に、3人の選手にフォーカスして想像しながら今大会を振り返る。


RIZIN.40 個人的プラス評価・注目選手

1.元谷友貴

以前までの大会に比べて海外選手の呼び込みが戻って来ていた今大会は、海外選手の参戦が多かった。

その中でも元谷は元UFCの強豪ホジェリオ・ボントリンを攻略しなければならなくなった。

全面対抗戦で隠れがちだが、このカードも対海外という点ではとても重要な意味を持っている一戦だったと思う。

「RIZIN.40」では名のある海外選手に日本人勢は軒並み敗れていたが、その中で唯一価値ある勝利を元谷はもぎ取った。

しかもしっかりと攻略しフィニッシュした上で勝利している。

階級を変えたことでボントリンの動きに影響がなかったわけではないと思うが、攻守で上手く立ち回った元谷の上手さが結果に出たのも事実だと思う。

ここから勝利を積み重ねて、勝てるはずの試合を落とすというポカを犯さなければ、RIZINの中で海外勢を迎え討つ柱のような存在になれるかもしれない。

2.鈴木千裕

格闘技界で二刀流を実践する若手のファイターは、その実力を結果で示しながら色物感を拭いつつある。

鈴木は良くも悪くも荒々しく、上に行けば行くほどスタイルの変更が必須になってくるだろうとは思うが、気持ちの強さと前に出る勇気と思い切りの良さで難局を打破して来ているのも確かだ。

もちろん安定した強さを形成する為には、具体的な技術や戦術などの引き出しを増やして対応幅を広げていく必要はある。

しかし気質という部分では海外の選手と渡り合うにおいて非常に重要な要素をすでに持ち合わせているのではないかと思う。

海外の団体で日本人選手が勝負する際に飲まれがちになるのは、大胆さや凶暴さ、アグレッシブで強気な豪快さが足りないという気質の影響による部分が少なからずあると思う。

だからこそ世界に焦点を合わせて日本MMAのボーダーを引き上げていく為には、鈴木千裕のようなタイプのファイターが必要となってくる。

そういったタイプで静動合わせ持ち、技術と経験が豊富で世界トップレベルの総合力を持つ完成形のような選手が堀口恭司であり、これから来る若手でいうと木下憂朔になってくるのではないだろうか。

今回の試合は対日本人となったが、ONEで実績を持ち海外での経験もある中原が相手だった。

技術と経験では圧倒的に鈴木が劣っていて、それが試合内容にも出ていた。

しかし、鈴木は持ち前のガッツと気迫でそれを押し退けていき、劣勢からTKOという形で最終的には試合をひっくり返してしまった。

これから順調に技術の進化を積み重ねていくことが出来れば、RIZIN出場の若手の中で世界と戦う代表的なポジションに位置することが出来るようになってくるのではないだろうか。

3.井上直樹

バンタム級GPで思わぬ敗退を喫した井上直樹だが、若くしてUFC入りを果たした経歴を持つ彼の総合力は日本の中でもトップレベルにある。

今回の対戦相手の瀧澤謙太はRIZINの戦績を鑑みても井上からしたら格下と捉えるのが妥当な相手だった。

瀧澤は以前に元谷を下すという大物喰いを達成して、ジャイアントキリングを起こすイメージ像が生まれかけていたが、朝倉海と対戦し順当に負けたことで依然として総合力は至らない選手という評価に落ち着いてしまっていた。

そんな瀧澤を相手に井上は総合力と技術の違いをまざまざと見せつけた。

井上は終始試合をコントロールし続け、瀧澤に自由を与えないまま最後は腕を極めてフィニッシュしてしまった。

前評判で有利を囁かれる選手がそれ通りの結果を見せるというのは、細かい技術の成熟度に大きな差があることが多く、見た目以上の差があることを示している。

今回、井上はただ勝っただけではなく自身の実力・MMAの完成度が依然としてハイレベルにあることをしっかり見せつけた上で完勝を収めた。

打撃の距離設定の上手さとグラウンドで極めまで持っていける技術を併せ持つ井上は海外勢との対戦でより真価を発揮すると思うので、次は井上直樹と海外の強豪との対戦を見てみたい。

世界に対抗するための日本MMA

全面対抗戦では世界トップクラスとRIZINのトップクラスがぶつかることで日本MMAの現在地というものがより明確になったところがある。

RIZIN勢は対抗戦で良いところを見せることが出来ていた部分もあったが、Bellatorの強豪に勝利するまでにはやはりまだ詰めるべき距離がある。

堀口恭司が指摘する日本MMAの技術の遅れはちょっとやそっとで改善できるのもでもない上に、そもそもの受け皿のサイズや出来にも海外と日本では大きな違いがあるので、国内からの改善は難しいのが現状だ。

これはMMAだけに限ったことではなく、他のジャンルのスポーツでも起こっている現象でもあると思う。

なので、やはり日本MMA全体のレベルを上げていくには日本サッカーのように世界のチームへの移籍を一般化し、海外のレベルに慣れた選手を外で量産していく必要があるのではないだろうか。

世界の技術や理論にトレーニング方法など、そういった高レベルの教材を輸入して日本の中にある基準を引き上げていくことが出来れば、世界が持つ当たり前の感覚に日本MMAも近づくことが出来るかもしれない。

そういった動きは徐々に活性化しつつある。

そのきっかけと流れを作り、世界への扉を開く上で日本に大きな刺激を与えたのは間違いなく堀口恭司だろう。

彼は試合を通して海外から得られるものの大きさを日本のファイターたちに示し続けている。

そして今、日本の若手ファイターは早い段階で海外へと渡り有意義な経験を積む者が増えてきた。

大手のスポーツエージェントと契約を交わす者も出て来ており、下部組織や登竜門を超えてUFCに挑戦する選手も出て来ている。

将来に飛躍する余地を持つ若手ファイターの活躍は、表舞台で伸び悩みを見せる日本MMA界に反して活発であり可能性に溢れている。

何年後かにはそういった選手が成熟し、またキャリアの積み方の常識が変化し、日本MMAが世界に対抗するために必要な地盤が育ってくる可能性がある。

ただその間にも世界は成長していくので、そのスピードについていけるように国内でも本当の意味で格闘技の発展に貢献している選手たちにどんどんスポットを当ててもらいたい。


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