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酉島伝法『奏で手のヌフレツン』

 酉島伝法の2作目の長編。
 酉島伝法と言えば、デビュー作の『皆勤の徒』のイメージが鮮烈かつ濃厚だと思われますが、この作品ではそこは控えめ。読みやすさが増している気がする。
 ここではないどこかで、私たちの世界にはない、しかし私たちの世界で聞いたことのある名前に似たものたちに囲まれて生きている主人公たち。おそらく遠い未来に別の惑星に適応した人類か、と思われる。
 一部では、一部の主人公の成長と共に、この世界とは異なるその世界の世界観が緻密に描かれる。この世界観の描き方が自然でとてもよい。まるでファンタジーのような世界なのに、スルリと入ってくる。
 そして二部では、一部の主人公の息子?が主人公となる。大人になった彼と彼の住む土地に、襲い来る災厄。それを食い止めるために、彼は仲間と共に旅に出る。自らのルーツでもある場所へ。
 読みごたえたっぷりで、とても面白かった。とにかく今これを、薦められるなら亡くなった父に読んでほしい。きっと「面白かった」と言ってくれるはずだから。

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