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読書感想 漫画版風の谷のナウシカ➀

漫画版風の谷のナウシカ全7巻を購入しました。以前も投稿したのですが、この難解で奥深い超名作の感想を(感想と呼べるかどうかは甚だ疑問なのですが)書いていきたいと思います。

この漫画は、映画「風の谷のナウシカ」の原作にあたります。宮崎駿監督ご自身が執筆されたものです。
映画は、漫画の2巻くらいまでの内容なんですね。
そこからさらに、深い深い物語へと発展していくのです。

まず、風の谷のナウシカの舞台は、全くの架空の異世界ではなく、
「巨大産業文明が崩壊して1000年後の世界」であるという事を念頭に置いておく必要があると思うのです。今後自分たちが辿る可能性のある一つの未来として。


コミックス裏表紙

映画では
人類VS王蟲ないし腐海
というイメージでしたが、

漫画版は完全に
トルメキアおよび辺境各国VS土鬼諸侯国(ドルクと読みます。映画には出てこない大国)という構図の戦争漫画です。
残り少ない資源を巡ってひたすら殺し合ってます。

風の谷は人口わずか500人にも満たない辺境の小国です。それでもトルメキアの属国になることなく自治権を守って来られたのは
「ガンシップ」という強力な戦闘機を有しているからです。
有事の際は、族長がガンシップに乗りトルメキアの戦争に協力しなければならないという古い盟約があるのです。
(なんつーか……日米安全保障条約みたいな…)
ナウシカの世界では、あらたにエンジンを作る技術は失われていて、今あるものを大切に使うしかないのです。よって、ガンシップという強力な戦闘機は貴重な軍事資源なのですね。
このように、ナウシカは緻密な設定のうえで物語が成り立っています。実際はもっっとたくさんあります。難しくて書ききれないけども…
 

風の谷の族長ジルは腐海の毒に侵され体が不自由な状態のため、ナウシカがガンシップに乗り戦争に赴くことになります。ジルは11人子供をもうけますが育ったのは末娘のナウシカひとりだったのです。厳しい世界ですね。

「女が族長になったためしはない」
「女のガンシップ乗りとは前代未聞だ」
というような描写があります。
そりゃそうですよね……。

しかしナウシカは、戦闘機を操縦したり、甲冑を着た敵を一騎打ちで倒したり、四面楚歌の場面でも冷静に指示を出したり、父親の代わりに族長としての責務をこなしていきます。こんな女性は古今東西なかなかいないのではないでしょうか……


 ナウシカは、極端に猛々しい男性性と、女神のような母性を備えた女性性という、全く相反する二つの性質を有している少女です。
それらは水と油のように、全く混ざり合うことのないままそれぞれ独立した状態で彼女に宿っている印象です。中間が存在しないのです。

その二つの性質は、最終巻までブレることなく存在している感じです。


映画と漫画で違う点は、クシャナです。
漫画版ではクシャナはかなり重要な存在です。ナウシカとダブル主人公じゃないかってくらい。

クシャナはトルメキアのヴ王の第四皇女です。
しかし、無能な兄達とは違い、
女性ながら戦術、戦略に長け、鋭い頭脳と迅速かつ的確な状況判断で部隊の窮地を何度も救います。
彼女もなかなか悲惨な境遇にあるのですが、全巻通して一度も涙を流すことはありません。
まさしく男の中の男(女だけど…)、冷徹なだけではなく部下思いの一面もあり、超優秀な指揮官として描かれています。

一方、ナウシカはしょっちゅう泣くのです。
ナウシカは、映画同様救世主と崇められるようなカリスマ性を備えている反面、子供のような人間くささがすごく残ってるのです。
でもその人間らしさこそ、一番必要なものとして、とても魅力的に書かれています。

1、2巻はだいたい映画と同じです。
問題は3巻以降です。殺し合いに拍車がかかります。
ゆっくり感想を書いていこうと思います。


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