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読書感想 夢野久作 眼を開く

青空文庫で読みました。
夢野久作の実体験なのですかね?
創作活動のために人里から離れた別荘にこもっている語り手が、自身の犯した「法律にかからない一つの殺人罪」についての物語です。

語り手の家に新聞や郵便物を届けに、往復八里(約32km!ホント?)をかけて毎日やってくる郵便配達員を、直接的ではないものの死に追いやったのではないか、という話です。

語り手は創作に熱中するあまり、毎日やってくる配達員に対し、ねぎらいの言葉をかけるどころか挨拶もろくにしないのですね。
そして郵便配達員を、愚鈍で単純な、一種の職業偏執狂の白痴なのではないかとすら思うのです。

ある大雪の日、語り手は村人の知らせにより、郵便配達員が語り手の家に郵便物を届けに行ったまま行方不明になっている事実を知ります。

村人は、語り手あてに届いた原稿料?二百円を持ち逃げしたのではないかと皆が疑っていると言います。

それに対し語り手は、
「馬鹿!貴様たちは忠平(郵便配達員)の性格を知らないんだ。ドンナ人間でも金さえ見れば性根が変るものと思うと大間違いだぞッ」
と怒り、雪の中配達員を探しに行くのですね。

結局、配達員は死体となって見つかります。
その凍った死体は、朝日を浴びたとき、
苦悶の表情から、「死人のみが知る極楽世界の静かな静かな満足をひそやかに微笑んでいるかのような、気高い、ありがたい表情」
へと変化します。

語り手と村人たちは、涙を流しながら、「南無南無南無南無……」とお経を唱えるのです。

 どのように受け止めたら良いのか難しい物語だなあという印象です。


ただ私は、一言でもいいから郵便配達員に感謝の言葉を言ってあげれば良かったのにな、と思ってしまいます。
そして、雪の中大変だから毎日配達に来なくていいよ、2、3日に一回でいいよ、とか、一言でも言っておけば、こうなってしまったとしても、あとに残る感情は違ったものになると思うのですけどね……

後悔先に立たずですね。

私は基本明日死んでも後悔しないような生き方を目指しているので、今日会えた人になるべく感謝の意を伝えるようにしています。

きっとわかってくれているだろう、伝わっているだろう、というのは幻想です。
良いと思ったことは、その日その時その場で相手に伝えようと思います。
あとで後悔が残らないように。



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