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読書感想 梶井基次郎 ある心の風景

以前青空文庫で読んで、いいなと思った作品です。
鋭い感覚で「心の風景」を叙情的に描いていています。その中には話の筋などないように思います。町の様子や、そこで出会った人の様子を自己投影している感じなんですかね……。
「視ること、それはもうなにかなのだ。自分の魂の一部分或ひは全部がそれに乗り移ることなのだ」とあります。すごいセリフですね。

主人公、喬(たかし)は悪い病気を女性から得てしまい、陰鬱な気持ちで療養しています。
夜は眠れず、窓から町の風景を眺めます。
あちこち散歩しては、その風景を眺めて自分の不安定な心の風景に投影させているような感じがします。
「街では自分は苦しい」
彼はそう感じます。

同じ風景を眺めていても、その時の自分のこころ模様で全然違う感覚を覚えますもんね。
きっと死期が近づくと、感覚はどんどん研ぎ澄まされて、目に映るもの全て元気な時とは異なる色彩を帯びるのでしょうね。

 私は梶井基次郎の作品は青空文庫にあるものしか読んだことがないのですが、
自分の心の投影といいますか、そういった不鮮明で不明瞭なものを叙情的に描くその筆力は本当に見事だなあと思います。


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