[試合分析レポート①] 2023.7.24 VNL2023 final USA vs POLAND
今回は3大世界大会であるネーションズリーグ(VNL)の決勝戦のスタッツを載せたいと思います。
例のように長くなってしまいましたがぜひ読んでいってもらいたいです。
強豪ポーランドの注目選手は、9番レオンです。レオンは時速138km/hもの強烈なサーブを繰り出す「最強のスパイカー」と呼ばれる選手です。
また、6番のクレクも世界的に有名ですが、今回はほとんど出場していません。その代わりに5番カチュマレクが出場していますが、彼も2022年(たしか)のクラブユーロ選手権で優勝したメンバーで要注目です。
また、同じく強豪USAの注目選手は、1番アンダーソンです。USAのオポジットとして何年もナショナルチームを率いてきたベテランです。
また、11番クリステンソンも長年代表として活躍してきたセッターです。
8番のデファルコも攻守ともに優れた選手として人気があります。
決勝戦としては納得のチームの対戦となりました。
結果とともに分析をしていきたいと思います。
主要メンバー・結果
主要メンバー
POL:
セッター(S):19番ヤヌシュ
オポジット(OP):5番カチュマレク
アウトサイドヒッター(OH):9番レオン
11番シリフカ
21番フォルナル
ミドルブロッカー(MB):15番コハノフスキ
20番ビエニエク
99番フベル
リベロ(L):17番ザトルスキ
USA:
セッター(S):11番クリステンソン
オポジット(OP):1番アンダーソン
アウトサイドヒッター(OH):2番ラッセル
8番デファルコ
17番ジェスキー
ミドルブロッカー(MB):12番ホルト
20番スミス
リベロ(L):22番ショージ
得点
POL 3-1 USA
1st 25-23
2nd 24-26
3rd 25-18
4th 25-18
Total 99-85
セット別スタッツ
1セット目
1セット目は拮抗していて、レオンのサーブが走ったものの、USAはそこまで点を取られずに済んだ。(図1)
気になるのは、ポーランドの強大な戦力であるレオンに対してどのようにプレッシャーをかけたのかだが、サーブで特に狙ったりしてはいなかった模様。
ただ、Bパスが多くレオンが後衛であるときが多かったので、効果的にレオンのバックアタックをけん制出来ていたのかなと思う。(図2)
あと気になるのが、ポーランドOPのカチュマレクの決定率が高い。(図3)
下図は下から見て右側からスパイクを打った時のコース図。(図4)
相手のコートの中央から左側が比較的多い。
これは相手ブロックがカチュマレクの攻撃に追いついていないことが考えられる。
2セット目以降は、USAがレオンをけん制しつつ、カチュマレクのスパイクをどうやって対処するかがカギだと思う。
2セット目
2セット目はセット前半と後半で大きく流れが変わった。(図5)
まず前半ではポーランドがブレイクを繰り返していた。(下図のSはローテ番号を表し、bはブレイクの種類を表す)(図6)
ポーランドがブレイクしたプレーを見ていくとUSAのレセプションはAパスが多く、その4本中の2本がセンターのスパイクミスだった。(図7)
ポーランドのセンターに対するブロックの圧が高かったのかもしれない。
逆にUSAのブレイクに関しては分かりやすい。(図6)
レオンを狙ってサービスエースをとるか乱してポーランドが万全の状態で攻撃できないようにしている。(図8)
2セット目はUSAがどれもサーブを起点にしてブレイクしていることが分かる。
スパイクに関して、ポーランドはレセプションが崩れたからかレフトスパイク(主に9番レオンと11番シリフカ)の決定率が低い(図5のアタック欄)。
特にレオンはコンビスパイクはほとんどなく、オープントスによるものが多い。
それもほとんどブロックにタッチされていてチャンスにつながっている。(図9)
2セット目はUSAがポーランドをサーブで崩し、レフトの攻撃をしのいでトランジションを取れていたことがよくわかる。
3セット目もレオンを狙って得点を重ねられるか。
3セット目
3セット目はポーランドは思わずレオンを引っ込めた。
サーブでも狙われるし、スパイクも決まっていなかったからだろう。代わりに21番フォルナルが入っている。(図10)
ブレイク状況から、USAはS5ローテとS4ローテでがくっと崩れたのが分かる。(図11)
スタッツからも、1,2セット目と比べてUSAのレセプションの数値が下がっている。(図10)
この時、ポーランドはアタックと相手のエラーでブレイクを獲得していることが分かる。
今回は11番シリフカと99番フベルのサーブがブレイクにつながったようだ。(図12)
ポーランドのサーブを見てみると、シリフカのサーブはゾーン5(自コートから見て相手コート右奥)にサーブが集中していることが分かる。(図13)
完全に成功したレセプションというのはゾーン32に返った時だが、11番サーブの時USAのレセプションはゾーン32に返っておらず、うまく攻撃枚数を減らせていることが考えられる。(図12)
ポーランドがレオンを下げたことで、USAはサーブのねらい目を失い、ポーランドはサーブが良く走ったことで差がついた。
4セット目でUSAは修正できるか。
4セット目
4セット目もUSAはブレイクの手口が見つけられなかった。
サーブレシーブは改善したものの、攻撃につなげられなかった。
というよりは、ポーランドの5番カチュマレクと21番フォルナルのオープンアタックの決定率が高かった。(図15)
相変わらずカチュマレクを止める術がなく、4セット目だけでも高いアタック率を維持されている。(図14)
フルスタッツ
ポーランドはサーブ、ブロック、アタック、ディグでUSAより勝っていた。(図16)
個人についている赤文字は、チームの中でも影響力が大きかった数値についている。
スパイクは圧倒的にカチュマレクが強かった。(図16)
コースを見てみると、本当に幅広いスパイクを打っていることがよくわかる。コート中央付近にも多く、緩急も鋭そうだ。(図17)
逆にUSAの20番スミスはMBで唯一赤文字となった。(図16)
スパイクコースはゾーン7(コート右手前らへん)からゾーン9(コート右手前らへん)まで広い範囲に打てる優秀なMBということが分かる。(図18)
ローテごと種類別ブレイク数の表が下にある。(図19)
上がUSAだが、S2ローテとS6ローテで比較的多くブレイクしている。
S2ローテはスミスのサーブ、S6ローテは8番デファルコのサーブだった。
逆にS6ローテの被ブレイク数はとても少なく、攻守ともに安定したローテであるといえる。
POLのブレイクで特徴的なのは、サーブと相手のエラーによるブレイク数が多いこと。
サーブとブロックによる圧力で相手のエラーも多かったと考えられる。
全体を通して
今回の試合はUSA側はレオンの攻略、そしてカチュマレクを止めることがカギとなっていたと思う。
逆にポーランド側はサーブで崩してトランジションに繋げることが重要であった。
USAは思ったよりレセプションが返ったおかげでクイック攻撃は高確率で決まっていたが、その代わりライトやレフトのサイド攻撃があまり機能しなかった。
ポーランドは試合序盤、レオンの弱点であるレシーブから得点を取られていたが、フォルナルと代えてディフェンスを補いつつカチュマレクが素晴らしいスパイク決定率を維持し続けたので、試合を制することができた。
最後に
はじめての試合スタッツを投稿しますが、結構長々としたものになってしまいました。
次回以降、要点を分かりやすくまとめつつ、より有益なデータを皆さんに提供できればなと思います。
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では!