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【01】成長と変化

 vol.018の未公開インタビュー前半は、おにっちさんの高校時代と調理師学校での経験についてお届けします。
 小中学校では、いじめを受ける側もする側も経験したおにっちさん。なかなか人間関係をうまく作れない時期を経験したのち、本紙でも触れたように高校では自分と同じような障害の仲間と出会い、学校生活を楽しんでいた様子が伺えました。高校時代には他にも充実した時間を過ごしたそうですが、その後通うことになる調理師学校でも、同じ目標に向かって学ぶ仲間との間で、いろいろな経験をしていたようです。


学校生活でも、その後の職場や調理師学校でも
人との関わりからさまざまなものを吸収し、成長するおにっちさん。
ですがその特性自体は何も変わらず、同じようにそこにあります。
違うのは、周りの人々がおにっちさんをどう捉え、どう接するかです。

【わからずにいた頃】


g:小、中学校ではあまり友達も作れず、人間関係はうまくいかなかったけど、とりあえず頑張って学校には行っていたんですね。

お:そうですね。小学校の目の前のラーメン屋が(小学校時代の)隣のクラスの子のお父さんがやってる店で、 (最近)そこに食べに行ったら「鬼頭じゃないか」と言われて。で、どうしてんのって言われて「実は障害者ってわかったんだよ。だから小学校のメンバーに明かしたかったよ、でも、そん時は判定受けてなかったから」って話して「そうだったんだ」って。「そういうの、なんか理解増やせるといいね」とか話しました。で、その後そのラーメン屋で会った同級生が「俺、障害者だったんだよ」って明かしてくれて。「鬼頭は障害を明かすことに全然ためらいもなくて、 言わないと相手にも伝わらないってわかったよ」って。「俺は精神(障害)だったんだよ」って話してくれて。なんか面白い巡り合わせだなって。

g:おにっちさんと話して、思う所があったんでしょうね。まだ障害がわかっていなかった頃というのは、自分と周りの子との違いのようなものは感じていたんですか?

お:自分は気にしなかったけど、親と妹は気にしていて。妹は(自分と)距離置いてたけど、障害がわかって、「障害ってこういうことがあるんだ」っていうのを知ってくれてから、距離は近いです。

【仲間と出会って】


g:中学卒業後に進学せず、就職する選択肢もあったんですよね?

お:学校の授業で区の作業所見学行く前に、荒川遊園に「実習させてください」って先生と親父が頼んでくれて。一週間ぐらい実習させてもらって、動物の世話と接客と掃除の仕事をさせてもらいました。

g:ご両親は中学を出てすぐに働く、という選択肢も考えていたんですね。
お:(作業所以外に)一般(の就労先)も体験してみなって。でも、なんか他の所だと中学生が体験実習の前例がないからって、頼みに行ってくれたんだと。

g:体験してどうでしたか?


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お:今はこういう未来しかないんだよ、っていう選択を見せられた気がしました。



g:自分ではまだ障害もわかっていなかったし、配慮ある職場を見つけたい思いがあったんでしょうけど、進学しましたね。

お:養護学校では変革じゃないけど、3年生の文化祭で毎年豚汁が恒例なんだよって言われたのを「嫌です」って。野菜切って、作った味噌溶いてやるだけは嫌です、もうちょっと凝りたいですって言って。その時パンとソーセージの授業があって、 これでなんかできないですかね?って感じで。ピザとか。ベーコンも燻製してたから、もうちょっと凝ったもの、せっかくだから。俺たちの時代で変えちゃおうぜって。

g:自分たちで決めたかったんですね。何を作ったんですか?

お:ホットドッグと、ベーコンのピザやりました。3年生の時の調理の先生の授業がめっちゃ楽しくて。うどんとかも作ったりして「うどんのコシを出すにはちゃんと踏むことが大事なんだよ、だから足場はしっかり。これは人生にも繋がるから」って言われて、そういう料理する楽しさと、あとお客さんに喜んでもらう楽しさと、いろんなことを学んだ気がする。

g:養護学校では楽しく過ごせていたんですね。友達もできたんじゃないですか?

お:できましたね。普通科にはもっと重い障害の子、ちょっと一般就労は難しいかな、でも目指したいなっていう子たちがいて、いろんな似てるような人たちと出会って。「職業」っていう授業があって、どういう職場で働きたいですか、とか。1年生の時は自分で求人広告を見て、 そこに申し込んで1日体験させてもらうとか、2年生では前期と後期で2週間ずつ行って、そこで採用されれば、3年生の時にも3週間やらせてくださいって言って。ハローワークとか近くの就労センターも学校側から教えてもらって、そこに先生と一緒に挨拶に行って、 困った時はこういうとこに行くんだよ、というのを教えてもらったり。

g:なるほど、1年生から就労を前提にした取り組みのある学校で、ようやく同じような仲間と出会えたんですね。


【理解と配慮】


g:調理師免許の取得には、会社にいる頃からチャレンジしていたんですよね。
お:会社は定時が5時までで、学校の授業は6時からだから、社員でも行けるかなと思ったら、会社は「ダメです」ってなって。

g:会社に在籍しながらは調理師学校に通わせてもらえなかったんですね。それで10年勤めた会社を辞めたのを機に、学校に行くことにしたと。学校はどうでしたか?

お:下は16歳、上はもう70のおじいちゃんおばあちゃんの間に挟まれて。勉強ついてくのが大変でした、言葉が途中でわかんなくなって、あとがわかんなくなる。漢字、この単語なんだろうってなっちゃって、あとの話が聞こえない。で、授業中携帯いじっちゃいけないって言われて、先生に「単語がわかんない。僕こういう障害があって単語わかんないと内容が入ってこないんで、スマホいじらしてください」ってお願いして。「そうだったんだ。そういう理由ならいいよ」って。で、あと「わかんないことがあったら、授業終わったあと聞きに来て」と言われて、毎回聞きに入ってたら、先生も帰れなくなっちゃって。「鬼頭くんわかった、問題もうちょっとわかりやすいようにするから、優しくするとみんな解けちゃって意味ないから、もうちょっと配慮するね」って感じで、配慮するのはちょっと難しいって学校側からは言われてたけども、なんかそういうことをしてくれて(※1)。

g:いろいろ配慮してくれたんですね。
(※1)問題自体を簡単にしてくれたわけではなく、問題文や問題の出し方についてわかりやすいように配慮をしてくださったようです。

お:クラスメイトが障害理解してくれて「おにっち、こうだよ」って教えてくれたり、逆に健常者は「知らなかったこと知れた、鬼頭ありがとうな」って感じで。

g:それはどういうこと?

お:健常者が僕に教えたやつに、他の健常者が「あ、そうだったんだ」っていう理解が広がるって感じです。

g:なるほど、おにっちさんに教えることでみんなもわかるようになる。おにっちさんに教えるのを見て、周りの人も一緒に勉強する。同級生が力を貸してくれたんですね。

お:そうです。それがありがたかった。(続く)


計算の苦手なおにっちさんに対し、親身になって教えてくれる同級生は少なくなかったようです。

今回はここまで。
次回はこの続きをお送りします。ご期待ください。

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