【epi-01:想像は難しいので】
【次までに】
「gente」で義足について取材したのはこれで2度目、前回はvol.004でしたので実に4年ぶり。vol.004の一年後、vol.008で義手について取材した際に幻肢と幻肢痛についてはじめて記事にしましたが、こちらも3年ぶり。いずれもしばらくぶりなので、当時の号を読まれていない読者さんもけっこういらっしゃるのではないでしょうか。とくにvol.008はコロナ禍がはじまったばかりの2020年6月発行で、初めて緊急事態宣言が出された直後でしたので、外を出歩く人も少なく気軽にフリーペーパーを持ち帰れるような時期ではありませんでした。そんな状況の中で取材や発行自体を続けて良いものか、当時はかなり悩んだのを覚えています。
一年延期の上で開催された東京パラリンピックが終わり、そこではじめて義肢を使用するアスリートを観た人も少なくなかったと思います。そういう記憶がまだあるうちに、義肢についての取材をまた行いたいな、という気持ちはあったのですが、なかなかきっかけが無いまま時間が過ぎてしまい。それが無理なら次のパラリンピックを迎えるまでに、今度こそベストのタイミングで義足についての取材したいとも考えていたんですけど、どうも機会に恵まれないまま。他にやるべき取材などが入ってきてどんどん先送りになる…そんな状況が続いていました。
その状況に変化があったのは、2023年の年明け。猪俣さんからの、幻肢痛についてのイベントへのお誘いでした。幻肢痛当事者の方が何人か登壇され、体験談を伺えるとのことで会場に伺いました。
7〜8人の当事者の方が自分の体験を語っていくのですが、義手を使用する人もいれば、中には腕を失ったわけではないけど麻痺などで動かせず、腕はあるのに幻肢痛を感じるという人もいて。本当に人それぞれだなぁと思いながら話を聞いていたのですが、その中に一人だけいた、義足を履いて足の幻肢痛を感じている方が櫻井さんでした。
ウラ話をすると、実は猪俣さんは別の方を取材対象として紹介したかったはずなんです。もともとは「筋電義手を使用する人がいるから、ぜひ話を聞いてみてください」というお誘いだったので。
「筋電義手」というのは神経伝達に流れる電気信号を読み取って動かす義手のことで、ドラマなどの題材になったこともあるので、ご存知の方もいるかもしれません。筋電義手というと何かとても未来的な、人と科学技術が融合した夢のようなテクノロジーかのように感じますが、実は思い通りに動かすのはとても難しいとされています。装着すれば誰でもすぐに動かせる、という類のものではなく、それなりの期間の練習が必要なのだそうですが、その方は動かせるまでにそれほど時間がかからなかったそうで。僕も筋電義手を実際に見たことはなかったし、いろいろと興味深いなと思っていました。それに猪俣さんが開発する幻肢痛VRリハにしても、現在稼働しているのは上肢の幻肢痛に対してのもの。なので上肢切断と筋電義手、VRリハという形での取材になるだろうなと想定して会場に行ったのですが、にもかかわらず僕はその場で櫻井さんの取材へと、一気に舵を切ってしまったのでした。
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足に幻肢痛を感じている人は少ないと言われています。実際、vol.004の取材時にもいろいろな人からそう聞いていました。あの取材は義肢使用者の陸上競技クラブ「スタートラインTOKYO」の皆さんにご協力いただいたもので、一度に多くの当事者にお話を伺える機会でした。十数人に話を聞きましたが、それでもその中に足の幻肢痛を感じている人は、ひとりもいなかったのです。
その当時も「たぶん普段から義足を履いているから、幻肢を感じないんじゃないか」という話で、なるほどそういうものかと思っていましたし、その後の義手の取材で「義手は義足ほど思い通りに動かせるものではないから、幻肢を感じるのじゃないか」というふうに理解していたんです。それがまさか思いもよらぬ形で足の幻肢と幻肢痛を感じている人との接点ができるとは、これは是非この機会を生かさねばと、思ってしまったんですよね。
ま、他にも細かい話をすれば理由はいろいろとあるのですが、そんなわけでイベントを終えて後日、猪俣さんにお礼とともに櫻井さんを取材したいので取次をお願いするメールを送りました、ちょっと申し訳なさも感じつつ。おそらく当初の思惑からははずれたこちらのリアクションに「え、そっちなの?」と思われるんだろうな…という。
実際どう感じられたかはわかりませんが、結果快く繋いでいただきまして。こうして4年ぶり2度目の義足使用者取材にこぎつけたのでした。
今回はここまで。
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