【vol.023編集後記:02】

 渡辺さんの取材はすぐに行わない、新社会人として仕事が落ち着いてからにすると決め、vol.019からは一年程度発行間隔を開けることにしたので、その間はほかの取材をすることに。というわけでしばらくは連絡もせずにいたのですが、半年くらいはあっという間に過ぎてしまって。24年3月に渡辺さんを取材した号を発行する場合の動きを逆算すると、10月中にはある程度どういう取材ができるか目処をたてたい。ならばと連絡を取り始めたのが10月初旬。さっそく返信をもらい、オンラインで打ち合わせをすることに。


 YOUTUBEで発信をしている人ですから、基本取材はウェルカムなはずですし、取材をすること自体についてはそれほどナーバスになる必要はないだろうと思っていました。むしろ「取材してほしいこと」があるならそれと折り合いをつけなきゃな、と思っていたんですが、やはり渡辺さんとしては「YOUTUBEについてメインに取材をしてほしい」との思いがあったようで、職場取材にはそれほど乗り気ではないのかな、と感じられました。

 前回も書きましたが、留学経験などもあって話のネタがありすぎるほどの渡辺さん。あれもこれもと聞きたい興味は尽きないのですが、限られた紙面で全部の話題を網羅できるわけはないので、何かひとつに絞る必要がありました。そういう時、編集部としてまず優先しているのは「周りの人との関わり方がわかる話題」です。

 「gente」で発信したいのは「障害者と関わるにはどうすればいいのか」です。自分と違う人と関わる、接点を持とうとする時、どこがどう違うのか、その違いはどんなものなのかを知る必要があります。違いがわかれば、自ずとどうすればいいかが導き出されるだろうと思うのです。だから実際にどう人と関わっているのか、それがわかる取材をしようとすると、一番わかりやすいのが仕事、職場なんですよね。読者さんも社会人、働いているかもしくは働いていた経験のある人が一番多いはずなので、職場の話はわかりやすいはずですし。
 留学の話もいいなと思っていました。日本と外国とでどんな違いがあるかについても興味があったので。で、YOUTUBEについては当初それほど積極的に取材したい、とは思っていなかったのが正直なところです。その話題で人との関わりが感じられるか、というとそれは期待できないでしょうから。

 視覚障害と聴覚障害は「情報障害」と言われます。視覚、聴覚は情報収集や意思疎通などに欠かせない重要な感覚ですから、この違いは人との関わりにも大きく影響します。ですからこの二つに関連する号では、とくに人との関わり方を重視して取材することにしているんです。

 もうひとつ、以前に聞いた話で気になっていたことがあって、それで職場での話を伺いたいと考えていました。それは2022年に行なった、大学生とミライロハウススタッフの座談会でのこと。座談会の内容は下記リンクより読んでいただけます。

 このときは渡辺さんと生駒さん、二人のロービジョン当事者がいました。そのお二人から同じような経験談がでてきたんです。それは「集団の中にいると、誰が誰だか把握するのが難しい」という話でした。
 矯正できない低視力の生駒さんと、視野の中心部が見えにくい渡辺さん。見え方に違いはあれど、「相手の顔、表情が見えにくい」という点で共通していました。お二人曰く、一対一で話していれば問題なくても、複数人で話す時に顔が見えにくいと誰が話しているのかわかりにくい、声をかけられても相手が誰だかわからないのだそうです。それは見えている人からすると、なかなか想像できない。聞いてみないと、言われてみないとわからないことって本当にいろいろあるんです。きっとそれは今の職場でもあるんじゃないかと思っていたし、それをこのvol.023でちょっとでも感じてもらいたい、という考えがあっての取材だったので、職場取材は行いたかったんですよね。

 ですが渡辺さんとの打ち合わせの中で、YOUTUBEでの発信を始めたことによって色々な出会いがあったこと、渡辺さんの世界が広がったことなどがあって、渡辺さんにとってYOUTUBEが大きな割合を占めるものだ、というのが感じられました。休日もかなりの時間を撮影、編集に割いているようでしたし、動画自体も視聴者の持つ視覚障害のイメージを変えるようなものがいろいろあって、きっと「gente」の読者さんなら興味をもってくれるだろうなとも思えたので、YOUTUBEについてを取り上げることにし、一方で職場取材は編集部として重視しているものであることを説明して、協力してもらえることになったのでした。


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あれ、本当は今回で終わりにするつもりだったんですけど、なんか長くなりそうなので今回はここまで。次回に続きます。
次回は職場取材で感じたことなどについて振り返ります。
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