映画「PERFECT DAYS」感想
私には東京の美しさはわからない。日本人の中にも酷い人間はいるし、汚い風景も隠れてる。けれど、寡黙な男平山の日常に差す緑葉の木漏れ日や人々の喧噪、窓の色、ページをめくる摩擦音、そこに紛れるラジカセの音楽、全てが彼にとって愛おしい日常なんだということが伝わってきました。
私は小説が好きなので、古書店のおばちゃんの一語一句が毎回面白くて好きだった。パトリシア・ハイスミスは私も読んだことがあったので、「不安と恐怖は違う」というニュアンスの言葉に、確かに……とたったそれだけで共感めいた喜びが湧き上がってきた。いつもの人と店がいつまであるかわからないけれど、きっとその記憶は美しい思い出として残っていく。
また、同僚清掃員のタカシが見せた二面性にもドキッとした。平山から自分の見栄のためにお金を借りて(しかもその後も返していない)、女に会いに行くのがダラしない人間性を見たのに、知的障害者の幼なじみの男の子に対して仲良く自分の耳をいじらせるだけ触らせている姿に優しさも感じた。人の一片だけを見て判斷していた自分の浅はかさを突きつけられたようで、少し情けなくなった。
あと、清掃員の助っ人女性(安藤玉恵さん)がプロフェッショナル感がでててすごくかっこよかった。頼もしい、たくましい人、それだけで安心する。まるで大木のように。
役所広司さんだからこそ表情で魅せる演技、睡眠時のモノクロの継ぎ接ぎ、トイレでの顔の知らないゲーム相手、それぞれのシーンに想像力が刺激された。
幸田文さんの「木」も読んでみたいなぁ。
第96回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートおめでとうございます。発表は日本時間3月11日(月)の朝。楽しみです。
あらすじと概要
2024.2/6投稿、幻ノ月音
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