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2022年の振り返り

 小田玄紀です

 本日が仕事納めとなりました。思い返せば今年も様々な出来事がありました。今年に起きたことが数年前の出来事のように感じるものもありますが、良いことも悪いことも全てこれからの糧になっていくものとして受け止めていきたいと思います。

 今年も様々な学びを得ましたが、その中からいくつかについて今後の考察を含めて整理をしてみます。

1.暗号資産市場

 暗号資産市場は良い意味でも悪い意味でも毎年変化が生じます。2021年は機関投資家やグローバル企業が暗号資産業界への参入を表明したことを受けて価格が上昇しましたが、2022年はLUNAショックやFTX事件など業界にとって極めてネガティブな影響を与えた一年となりました。

 特にFTX事件の余波についてはこれからもまだ波及していく可能性はあり、暗号資産市場のグローバルプレイヤーの立ち位置がこれから大きく変わる可能性もありますし、市場にとってマイナスなニュースが来年以降も出てくる可能性があります。

 しかし、だからといって暗号資産市場そのものが無くなったり、Bitcoinが無価値になる可能性は極めて低いと思います。

 多くの人がBitcoinをはじめとする暗号資産について投資対象または投機対象としての価値に重きをおいていますが、元々Bitcoinが発明されたのは中央集権的に管理される法定通貨に対するアンチテーゼから開発されました。

 私がビットポイントを創業したのは2016年でしたが、この時にはまだCryptoのイベントに参加する人達の多くはエンジニアや開発者が中心であり、金融系の関係者はまだ全体の10~20%程度という状況でした。ブロックチェーン技術を活用することで、『デジタルデータなのにコピーをすることが出来ず、そのために価値移転にも活用される』という点に金融セクターが注目をするようになり、そこから多くの人が投資対象として見ていくようになりました。
 
 2017年には世界で初めて日本政府が暗号資産(当時は仮想通貨)取引を法律で認め、世界中で新規参入者が増えました。この過程でICOブームが起きましたが、これは翌年には大手取引所からのハッキングなどにより規制が強化されたことで熱は冷め、2020年から2021年にかけて再び世界的な大企業が暗号資産決済や投資保有を表明したことで再注目され、ビットコインの価格は700万円を超えるまでになりました。

 それが2022年になり、アルゴリズム型のステーブルコイン(価格が変動しないはずの暗号資産)が暴落したLUNAショックやFTX事件により再度、暗号資産市場に冷や水を浴びせられることになりましたが、これまでも暗号資産市場が低迷する要因は暗号資産やブロックチェーンの問題ではなく、それを管理する取引所の問題のように外部要因が大半です。

 一定期間は市場の信頼回復にまで時間がかかるかもしれませんが、暗号資産やブロックチェーンの存在意義自体が否定された訳ではないため、中長期で見たら市場が健全に成長していくための過程という評価になってくると考えています。

 なお、市場全体としては低迷した1年でしたが、日本においては確実に市場が健全に成長できる環境へと改善されつつあります。

 自民党を中心として政治においてもWEB3.0の価値が再認識され、その中で暗号資産が果たす役割についても再評価されてきました。税制改正についても自社発行する暗号資産に対する法人期末課税が見直される方向になりました。本来は自社発行だけでない暗号資産の法人期末課税や個人の申告分離課税など求めていくべき事項は多々ありますが、まずは1つでも進んだということは評価されるべき事項です。

 また、暗号資産審査についてもこの1年間で大きく改善されました。昨年10月時点では日本初暗号資産は審査開始までに1.5~2年間かかる場合もありましたが、様々な改善により現在は2~3ヶ月程度で審査が開始されて暗号資産取引事業者が適切に審査をしていれば1ヶ月程度で審査が完了されるようにまで改善が進みました。ICO/IEOについてはまだ時間がかかってしまっていますが、これについても来年には改善されていく道筋が見えてきました。

 さらにゲーム領域では多くの日本企業がこれからGameFiに参入する意向を表明しています。従来のゲームから暗号資産やブロックチェーンを活用したゲームとなることで、新しい遊び方が生まれてきますし、また、ゲームを通じて暗号資産市場に参入する人達も多く出てくることが予想されます。

 GameFi領域では「Play to Earn」つまり「ゲームをして稼ぐ」という概念が注目されてきましたが、Play to Earnにはその課題も浮き彫りになってきています。

 基本的には 「Play for Fun(楽しいから遊ぶ)」が原則であり、その上でPlay to Earnの要素も持ったり、あるいは自分のためではなく誰かのために遊ぶといった概念「Play for Charity」が充足されることで、この市場は飛躍的な可能性を帯びてくると考えています。

2.エネルギー市場

 エネルギー市場もこの数年間で大きくその課題が顕在化されました。一昨年の年末から世界中でエネルギー不足が生じ、電力価格は高騰をはじめました。

 ロシア・ウクライナ紛争によりこの問題がさらに長期化することになりましたが、「エネルギーが不足する」という事実を世界中で実感することになりました。

 日本では政府や大手電力会社が燃料調達に動き、また、原発再稼働や来年2月から始まる電気代高騰対策としての補助金により、エネルギー価格の異常高騰は何とかコントロール出来る可能性が出てきました。一昨年の12月から昨年の1~2月においては、あまりに想定外のJEPX(日本卸電力取引所)の価格高騰により、市場は本当に混乱しましたが、そこから学んだことが確実に活かされているということを強く実感しています。

 エネルギー市場においては、核融合技術が現在非常に注目をされています。2025年を目処にITERをはじめとした核融合技術の価値が明らかになってくると思われますが、仮にこの技術が実用化されればエネルギー問題は発電の面においては解決される可能性があり、さらには理論的に核融合発電はCO2など地球温暖化の原因を排出しないため環境問題も大きく改善されることに繋がります。

 産油国との利害関係の調整や送配電システムの連携などの課題はありますが、実用化されることで大きなインパクトを与えていくことになるのは間違いありません。

3.感染症問題

 新型コロナウイルスをはじめとした感染症問題がこの数年間で社会に大きく影響を与えたことは間違いありません。中国もようやくコロナ規制を廃止しましたが、感染症の問題は結果的には科学的解決という側面よりも「国民コンセンサス」という非科学的な側面で解決がされたということが非常に特徴的なことであり、今回の学びがこれから他の事象においても同様にあてはまっていくのではないかと考えさせられました。

 こちらは日本で最初に非常事態宣言が発出された2020年4月に書いたコラムですが、この時に想定していたように解消までには2年以上かかり、結果的には感染者数という客観的なFactではなく、『国民のコンセンサス』により各国が非常事態宣言を漸次解消していくことになりました(もちろん、ワクチンや薬の開発などがされたことも大きいです)。

 特に感染初期は世界中でパニックが起き、様々な課題や悲しい出来事はあったものの新しい日常生活が戻りつつあるということは大きなことだと思います。

 今年ジュネーヴを訪問した際にWHO関係者の方とも話をさせて頂きましたが、高齢者や特定疾病を持っている人以外はワクチンについては3回を超える接種は求めない方針のようなので、国際交流もこれからさらなる正常化が期待されると考えています。

4.メタバース

 メタバースという言葉も今年に入り、多く使われるようになりました。メタバースについては賛否様々な意見がありますが、多くの人がメタバースという言葉を聞いて想定しているものが「新しいSNSのようなもの」であり、VRゴーグルを付けてアバターで交流をするものを想起しているからだと思います。

 以前にこちらのNoteにも書きましたが、メタバースの本当の価値はむしろBtoCではなくBtoBの面で真価が発揮されると個人的には考えています。

 企業の研究開発や教育はメタバースを活用することで、低コストかつ高次元な取組みが可能になり、また、脳波を活用したコミュニケーションをメタバース上で行うことで地域や言語を超えた意思疎通も可能になります。

 2023年1月に開催されるダボス会議でも世界経済フォーラムとしてのメタバースがお披露目されます。さらに、世界経済フォーラムとして取りまとめたメタバースに関するガイドラインも発表されます。ここからまたメタバースに関する大きな流れが形成されてくると思います。

 なお、日本でもメタバースに関する取組みは確実にはじまっています。私も理事を務めている一般社団法人日本デジタル空間経済連盟は加入企業が60社を超えました。

 日本を代表する大手企業がデジ経連には加入をしており、加入企業野路か総額を合算すると70兆円になります。

https://jdsef.or.jp/assets/document/achievement/report-summary_20221116.pdf

 メタバース導入に際して想定される課題やそれに対する提言を「知的財産」「デジタル金融」「プラットフォーム」と3つの分科会で考察を行いまとめています。

 ただのSNSだと一過性のブームで終わってしまいますが、そこではない側面でメタバースはその価値を発揮していくと考えています。

5.これからの日本

 今年に入り、再び海外出張もいくつか出来るようになりました。海外に行くことで日本の価値を再評価するきっかけにもなります。

 多くの日本人はメディアの報道などの影響もあり日本の政治に対する期待を喪失していたり、また、日本という国に対する失望を抱いている人が多くいると思います。

 ただ、実際に他国を見てみると他国の政治も問題だらけです。むしろ政治を信用している国の方が少ないのではないかと感じます。文化や教養という側面を見ていくと、日本はまだ十分可能性があるし、国際社会においても特殊なポジショニングは果たせるということを強く感じます。

 特に観光資源は日本再生の切り札に大きくなっていきます。政府として2030年までに15兆円のインバウンド収入を得ることを目標にして取組みを推進しており、2014年には2兆円だったインバウンド収入が2019年には4.8兆円にまでなりました。2020年からは新型コロナの影響もあり大きくインバウンド収入は減少していますが、来年から再びインバウンド収入は劇的に増えていくことが期待されます。

 政府が目標としている15兆円という規模は、現在の自動車産業の部品を含めた輸出総額に匹敵します。さらに観光の場合はほとんど全てが外国から日本に対して資金が流入することになるので、日本経済に対して与える影響は極めて大きいです。

 諸外国に比べて、日本は物価が非常に安く、また、直近では円安傾向があるために、今後の一定期間は観光産業は非常に大きな成長ポテンシャルがありますし、また、この観光を絡めた地方創生が日本の国力回復に大きく寄与していくと考えています。

 他方で、金利もこれから上がっていくことが想定されるので景気全体としては厳しくなっていく可能性はあります。多くの産業で、従来のやり方を踏襲していくことが困難になっていく可能性はあります。適切な変化に対応できない会社は淘汰されていくことになるかもしれません。また、個人としてもこれまでの仕事のやり方や価値観を見直していくことが求められる社会になっていくと思います。

 変化への対応は常に困難さを伴いますが、その課題を乗り越えることで見えてくるステージはまた違った価値が得られるものになるはずです。

6.これからのグローバルイシュー

 世界経済フォーラムの年次総会であるダボス会議では毎年、特に大きなグローバルイシューについて議論がなされます。今年5月に開催されたダボス会議では大きく以下の6つがイシューとなりました。

1) Food Security
2) Enegy Security
3)Economic Growth(特にインフレ対策)
4)Covid-19
5)Climate Change
6)Geopolitics

 新型コロナウイルスや環境問題については従来からのイシューでしたが、特に今回からは地政学(Geopolitics)が極めて高いイシューとして取り上げられるようになりました。そして、この地政学から端を発して食糧問題とエネルギー問題が顕在化してくることになりました。

 世界経済フォーラムは各国の政治・経済のリーダーが自国の利益を追求するのではなくグローバルイシューを皆で協議して共に解決していていくことを目指す場です。そのため、本来であれば世界経済フォーラムとしてはNo Positionつまりどこの国にも肩入れをせずに中立的なポジションとなり、国際問題の解決に努めるべきなのですが、ロシア・ウクライナ問題においてはロシアを非難する立場を鮮明にしてロシア側の参加を事実上拒否し、また、最近では中国に対しても距離感を取っているのでこの地政学の課題はさらに大きなものになってきています。

 不安定な状態でのギリギリな均衡はかろうじて保たれていますが、いつこの状態が崩れてもおかしくない状況です。その時に、Geopoliticsは極めて大きなテーマになります。

 特に日本は政治的関係はアメリカとの関係は強固ですが、地政学的には中国やロシアの方が近くなります。このことを正しく受け止めた上で政治・経済においてどのような判断や振る舞いをしていくのかということが今まで以上に重要になってきます。

 2023年も引き続きGeopoliticsは重大なキーワードになっていきますが、グローバルトレンドとしては炭素税も大きな位置付けを持っていくことになります。炭素税の導入により従来の生産・製造に関する戦略も大きく見直しが求められてくる可能性があります。炭素税に関する考察はこれまで以上に多くの企業や政府関係者はしていくべき課題です。

 また、少し先の話ですが2025年には太陽との関係も大きなテーマになってくるかもしれません。2025年には太陽が活性化することが想定されており、これにより電波問題だけでなく健康面や生物環境に対して与える甚大な影響が生じてくる可能性があります。影響の大きさによっては対策が意味を成さなくなる可能性もありますが、これまでも様々な問題に向き合い解決をしてきた人類の叡智を出してこの問題は事前に対応をしておくべきことだと考えています。

7.予測が出来ない未来

 未来というのは得てして予測が出来ないものです。これまで多くの「金融のプロ」「暗号資産のプロ」などを自称する人達と会ってきました。ただ、結論として分かったこととしては未来を確実に見通すことが出来るプロはいないということです。

 未来が予測できない中でやるべきことは1つです。それは未来を自分自身で創造していくことです。

 先にも書きましたが、来年以降、景気は悪くなる可能性が高いです。日本においては金利が上昇する蓋然性が高く、また、政府の財政発動にも限界があります。そのような中で景気が良くなるというシナリオにかけることは得策ではなく、厳しくなるかもしれない中で、楽観的なシナリオをつくるよりもどのようにサバイブしていくかを考えていくことが重要です。

 業種や業態によっても対策すべき事項は変わってきますが、どのような業種であっても、どのようなポジションの人にとっても共通して大事なことがあります。それは「困った時であっても、不正はしない」ということです。

 そんなこと当たり前だと感じるかもしれませんが、実際には多くの人が困っている時に、つい嘘をついたり、つい不誠実なことをしたりしてしまいます。最初は小さなことでも、それが積み重なっていって大きな不正に繋がっていったり、時には知らずの内に犯罪になってしまいます。

 20年以上、会社経営を続けてきましたがこれを貫いてきたことが、これまで継続してこれた最大の理由ではないかと考えています。そして、これを前提として、周りの人に対する感謝と謙虚さを持ち続けること。そして常にワーストシナリオをもって動くこと。特にこれからはこの考えが今まで以上に求められてくると考えています。

 リミックスポイントは2022年3月期は創業以来の業績となりました。SBIグループとの資本業務提携も締結し、これまでとは違うステージで挑戦が出来る環境にもなってきました。

 今期(2023年3月期)に入ってからは厳しい市場環境もあり、3歩進んで3歩下がるような状況に見えるかもしれませんが、それでも「6歩歩いた」ことで得られた経験もありました。

 2023年はまた新しい価値を創出していく1年にしていくために。支えて頂いている多くの皆さんに感謝の意を表して本稿の結びとさせて頂きます。

 2022年12月30日 小田玄紀

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