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推しが引退しました。-オタクの2度の後悔-

推しが芸能界を引退しました。

応援して8年目。突然の出来事でした。

彼女との出会いはテレビでした。当時彼女の所属していたアイドルグループは人気上昇中、今思い返せばあの時が最盛期だったのかもしれません。年に一度の人気投票は世間から注目を浴び、テレビで生中継もされていました。その中で神7に選ばれた彼女を見て私はファンになったのです。

彼女を知った当初の私は田舎の中学生。バイトもしていないしお小遣いもほとんどありませんでした。そのため劇場に通うなんてことはできないし、握手会にも行ったことはありません(これは果たしてオタクと言えるのかはさておき)。CDは積むものというアイドルオタク文化の中で、CDは1枚しか買えないし年に1回ドームライブに行くのが限界でした。しかし彼女の存在はいつも私を支えていてくれて、画面越しに見る笑顔やスピーカー越しに聞く声に元気づけられ私は生きていくことができました。

ある年、彼女は総選挙で1位を取りました。長年念願だった「1位」という順位に画面越しで私は大喜びし、彼女の幸せそうな笑顔を見てうれし涙を流したのでした。そんな歓喜と同時に「彼女は私が応援しなくてももう人気なんだ」という気持ちが心の中で増殖しました。時間が経つにつれ私の彼女へ執着する気持ちは少なくなっていきました。

彼女をほんのりと応援していたら気付くと高校3年生になっていました。受験は無事に終わり、卒業間近のある日友人がとあるミュージカルを教えてくれたのです。そのミュージカルに感動し、出演していた俳優を追いかけるようになっていました。そこで私は初めて3次元の男性の推しができるのです(この話はまた別の機会に)。

大学に入学してから私はほぼ月に1回は東京か大阪へ行き舞台やミュージカルを観劇するほど舞台俳優と舞台にハマっていました。この時は彼女のSNSをフォローするくらいで掲載されている雑誌を買ったりすることはありませんでした。それだけ私の中の彼女の存在は小さくなり、他のことへの関心が強くなっていました。

舞台とミュージカル、男性の推しへ時間とお金をつぎ込み始めてほぼ1年半、大学2年生の出来事でした。彼女がミュージカルの主演をする。というネットニュースが目に飛び込んできました。「これは運命だ!!!」と直感が叫びました。主演をする彼女の相手役は舞台俳優界隈では結構有名な方で、近々その方の演技も見てみたいと思っていました。私の好きなものと好きだった人が交わる。私は絶対に行かなくてはいけないと思い、チケットを取り友人を連れて大阪へ足を運びました。

いままで遠い存在だった彼女が板の上で歌い舞い、演じている。彼女を応援して7年目、初めて手紙を書きました。一冊の小説ができるんじゃないかと思うくらいの思いを無理やり便箋2枚に収めます。ミュージカルのお話もとてもよかったのですが、それ以上に彼女の初主演の舞台を目撃することができたという感動が大きかったです。中学・高校時代に毎日のように聞いていた彼女の美声が当時の記憶を呼び起こさせます。なつかしさと愛しさで胸をいっぱいにして私は彼女と舞台をを好きになった奇跡を噛み締めたのでした。観劇後一度は下火になった彼女への思いがさらに強くなりました。しかし彼女はもうグループを卒業していたので確実に会う機会が殆どありません。私はオタクとしての1度目の後悔をするのでした。

それから2年後。昼に起きた思い体を起こし、スマートフォンを確認しました。そこの一つのニュースが舞い込むのです。そこには芸能界引退の文字。「ふーん。」とスルーしようとしたのは心の防衛本能だったのでしょうか。通知の数分後、彼女を推していることを知っている友人から、私を心配してくれる連絡がありました。そこでやっと私は彼女が引退し、もう二度と画面越しに芸能人としての彼女の姿が見られないのだという現実を受け入れました。ふいに目頭が熱くなり涙がこぼれます。私は私が気付いているよりもショックを受けていたのでした。でも私が引退しないでくれと言っても何も変わりません。私は彼女の決断を受け入れ今後の人生を陰ながら応援することしかできないのです。ここ数年、目に見える形で応援してこなかった私は2回目の後悔をしました。きっと彼女はずっと芸能界にいるはずだという勝手な思い込みが良くなかったのでしょう。気付いたら推しは一般人に戻っていました。

オタクの間で度々言われる言葉があります。それは

「推しは推せるとき推せ。」

という言葉です。私は今次元や国境を越えて複数の推しがいます。その推しがいつ私が推せなくなるか分からない。私はこれ以上後悔をしないように精一杯推し達の幸せを願い、できるだけの応援をしようと心に決めたのでした。


最後に今はもう芸能人ではない私の推しへ。

何年も陰ながら応援させていただけて幸せでした。私のあなたへの思いはきっと増減しながらもずっと好きであり続けるのだと思います。あなたの幸せを遠いところから願っています。大好きです。今までありがとうございました。


最後までお読みいただきありがとうございました。これからも私は誰かの、何かのオタクであることに変わりはありません。心の中にぽっかりと穴が開いた気分ですがきっと時間が解決してくれると思います。それ以上に私は推しの健康と幸せを願うだけです。


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