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コロナ禍2020〜2021随想⑤

「コロナ禍を生きていく」
 コロナ禍においては、“with コロナ”という言葉のように、環境の変化に上手く対応することが推奨されている。この言葉を聞いた時に私は「この世に生き残る生物は、激しい変化にいち早く対応できたもの」というダーウィンの言葉を思い出した。しかし、「進化のからくり」の著者の千葉聡氏(東北大学教授)は、これはダーウィンが残した言葉ではないと断言している。千葉氏によると、最新のゲノム科学や理論研究でわかってきたのは、常に変化する環境に適応し易い生物の性質とは、非効率で無駄が多いのだそうだ。そして、それは行き過ぎた効率化のため冗長性が失われた社会が、予期せぬ災害や疫病流行に対応できないことと似ているのだと言う。
 便利になるとそのシステムの一部に支障が発生しただけで、全ての機能が停止し破綻を来たす。利便性だけが優先された単純な社会システムは、災害や疫病流行に弱いのである。
 2018年9月6日に起きた北海道胆振東部地震で北海道全域が停電となった。原因は、震度7という強震でメガ発電所の機器の一部が破壊され停止したことと、その他の発電所とつながる複数の送電線がすべて切れてしまい、送電システムが破綻したためだった。薪で風呂を沸かし、飯を炊いていた日常から、ガスや電気を使ってスイッチ一つで自動的に済んでしまう日常への変遷。私自身それまでの日常が非日常へと移り変わり、非日常と思ったことがいつの間にか日常となっていくことを体験してきた世代でもある。人の日常とはそういうものなのかも知れない。だから、コロナ禍に陥っても走ることに喜びや希望を見出せているランナーは、立ち止まることなく、モチベーションを落とすことなく平然とランニングを続けて日常を楽しんでいられるのだろう。彼らは環境の変化に対応するのではなく、ランニングの多様性を認識しているから楽しめているのである。

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