カラオケ行こ!に救われた年明けの話

昨年末、祖母が亡くなった。
祖母は早くに旦那を亡くし、女手一つで会社経営をしながら子育てをこなした、
俗っぽい言い方だが、”強い女”だった。
うちの親族をわかりやすく想像してもらうためには、細田守監督作品、
『サマーウォーズ』を思い浮かべてほしい。
強い祖母。
それを中心とした大家族。
盆や正月には九州から東北までの親戚が祖母の自宅に集まり、
祖母を中心に円になってご馳走を囲んだ。

そんな祖母が亡くなった。

大きな柱を失った一同は見事に四散。
映画のように「世界の危機を家族で救うぞ!」みたいなことももちろんなく、
あれほど仲良くやってきたはずの親族は本当にあっけなく崩壊した。

祖母の七日法要が終わってからも、
あちらの親族からあちらの親族への恨み言、
それを聞いた他の親族の阿鼻叫喚、
またそれを聞いて憔悴する別の親族からの電話、
みたいなのを日々親族間の中間管理職兼外務官として裁いた。
皆落ち着いてくれ、と気丈にことを収める振る舞いをしながら、
夜になると祖母のことを思って泣いた。

これ、ばあちゃんが見たら泣くで。
代わりに私が泣いてんねんけど、それも含めてばあちゃん泣いて怒るで。

もうそろそろちょっと休んだ方がいいかもな。
そう思って仕事は有休を取り、フォロワーさんに勧められた映画を観に隣県まで出かけた。

その作品こそ、オタクの皆さんならここ数か月必ず耳にしたであろう作品
『カラオケ行こ!』


衝撃。


先にフォロワーさんに勧められ原作を履修し、
続編である『ファミレス行こ。』までどっぷりハマり
Xを徘徊しきったうえで臨んだ、鑑賞。

衝撃。(二回目)


マジで衝撃だった。
原作で履修済みのストーリーを大筋に据えた実写用の改変が所々にありつつ、低体温のギャグや麗しいキャストのビジュアルはもちろんよくて、
でも、そういう説明できる部分ではなく、
ではないと言うかむしろ、
そういうの全部をひっくるめたあの世界全部に殴られた。

お砂糖、スパイス、素敵なものをいっぱい
なんかそんな感じだった
この世の柔らかくて優しくてまっすぐでほの暗くて危なくてダメでだからこそ愛おしいもの全部が詰まった太陽みたいな作品だった

人生、やばー。
劇場を出たときの最初の感想はそれだった。
リトグリカバーの紅のピアノが流れて、「綾野剛」の文字が行くエンドロールを見るとどうしようもなくなぜか泣けてしまった。

泣いて劇場を出て、ポップコーンのゴミを捨てながら
人生、やばー。
と思った。

前日の夜まで、
戦争を生き抜いてじいちゃんと結婚してすぐにじいちゃんと死別してそれでも踏ん張って長生きしたばあちゃんの死後がこれって人の人生なんなんだ
と思っていたけど、劇場を出ると世界は変わってた。

人生ってやばい。
楽しい。
最高かもしれん。

こういう面白くて暖かくて照らしてくれる作品に出合えるように
ちゃんと働いてお金稼いで健康に生きていかないと。
こういう作品を作るために頑張ってる人がこの世にいるんだから、
自分も自分にできる社会活動をコツコツ真面目にやっていこう。

ばあちゃんは「映画は長い。好かん。すぐ終わるから漫才がええ」
などと言うタイプだったけど、
でもばあちゃんの人生にもきっと太陽との出会いはたくさんあった。

誰かの仕事や、そんなつもりじゃない「おもしろ」が、
どうしても人を照らして救う時があるんだなぁ。

いつもエンタメに救われる側の人間だけど、
やっぱり救われて、改めて思った。

あと

絶対『ファミレス行こ。』の実写化も観たい。

以上。

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