聖春第一中学校

あらすじ
中学校へと進学した少女が織りなす青春ラブストーリー
幼少期の思い出がある野球少年と恋に落ちる中、御曹司の少年が転校してくる
三角関係となるが主人公の一途な想いは変わらないまま野球の試合を迎える
クリスマスに野球少年を亡くした主人公を励まし続ける英語教師
二年生へ進学した主人公と同じ班になった暗い過去を持つ少年が主人公の性格に心を開いていき海外留学を決意する
二年生の夏休み、留学した少年がホームステイ先に招待する
ホームステイ先の息子である外国人男性と総合格闘技の試合を目指す主人公
リアルに描かれたスポーツ試合と大人たちの子どもに対する情熱が垣間見れる素敵な作品となっております

―――――
はじまり
―――――

空と制服屋の屋根の絵

「おかーさーん、これちょっとおっきくなーい?」

鏡の前でダボっとしたサイズの制服を困った表情で試着している女の子

お母さん「これから体も大きくなってくるからそれでいいの」

レジの前のお母さん「はい、では明日の17時に取りに来ます」

鏡の前で両手を広げたり後ろを向いて顔だけ鏡に向ける主人公

――――

夕飯を囲む両親と向かい側に主人公と6歳の妹

主人公「明日 私一人で取りに行ってくるよ」

お母さん「カバンと靴もあるのに大丈夫?」

主人公「うん、大丈夫」

妹が美味しそうにご飯を食べている

―――――

主人公の部屋

⦅どんな人たちなんだろうなー 仲良かった皆と同じクラスになれるといいんだけど⦆

電気を消してベッドに入る

―――――

翌日

制服屋で荷物を受け取る主人公

出口の自動ドアへ向かうと 同年代らしきスポーツ刈りで体格の良い男の子が来店する

数秒間目が合ったまま立ち止まる

アッ!と口を少し開けて何かを思い出したような男の子

自動ドアが閉まろうとするがセンサーが反応してまたドアが開く

ハッ!とドアの音に気付いてお店を出る主人公

―――――

中学校の校庭で桜の木が咲いている

続々と生徒たちが校門の中へと入っていく

体育館で入学式

主人公は真ん中あたりの列 背の順で8番目くらいの位置に立って校長先生の演説を聞いている

校長先生「我が校のスローガンは、 清く 正しく 美しく 清らかな心は正しい行いへと導き、それは皆さんを美しい人間へと育ててくれることでしょう 辛いとき 迷ったとき 立ち止まったとき このスローガンを思い起こしてください」

―――――

クラスで自分の席を見つけて着席する主人公

席は中央辺りの列で後ろから4番目

主人公⦅あっ、●●ちゃんがいる ●●ちゃんもいる ●●ちゃんは…いないのかぁ⦆

担任の先生「まずは皆さんに教室の場所や消火器具の設置してある場所、避難経路などを覚えてもらうため明日オリエンテーションを実施します 詳細の書かれた用紙と学校内の図面をお配りするので目を通しておいて下さい」

最前列の生徒から主人公のほうへと用紙が回されてくる

手に取って用紙を見る主人公

【聖春第一中学校の七不思議 全部見つけられるかな??】

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┃聖春第一中学校の七不思議     ┃
┃ 全部見つけられるかな??  ┃
┃ ┃
┃①謎の飛行物体現る!!(押印)   ┃
┃                 ┃
┃②伝説の神獣 青龍(押印)     ┃
┃                 ┃
┃③伝説の神獣 朱雀(押印)     ┃
┃                 ┃
┃④伝説の神獣 白虎(押印)     ┃
┃                 ┃
┃⑤伝説の神獣 玄武(押印)     ┃
┃                 ┃
┃⑥15メートルの滑り台(押印)   ┃
┃                 ┃
┃⑦お風呂上りといえばアレ(押印)  ┃
┃                 ┃
━━━━━━━━━━━━━━━━━━

主人公⦅七不思議?⦆

男子生徒「何これ!しろとら!?」

女子生徒「びゃっこでしょ?」

ワイワイガヤガヤするクラスメイトたち

学校のチャイム「キーンコーンカーンコーン」

―――――

下駄箱で靴に履き替えて校門へと向かう主人公

主人公「あっ!」

制服屋ですれ違った男の子「あっ!」

数秒間見つめあう

男の子「前に会ったことある?」

主人公「制服屋さんで会ったかな?」

男の子「いや もっとずっと前に」

【数年前の回想】

河川敷でランドセルを背負って帽子をかぶった女の子の泣き声「エーン エーン」

ランドセルを背負った四人組の男子たち「やーいやーい 泣き虫ー」

後ろから現れた野球ユニフォームの少年「そういうのやめろよ!」

女の子と四人組の間に立つ

四人組の男子たち「誰だぁお前? なんだこいつー 彼氏?」

ガクガクと足が震えてる男の子
野球帽から冷や汗が滴る

遠くから野球チームの男の子たちの声「どうしたー!?」

四人組の男子たち「おい 行こうぜ」
野球少年たちがこちらへ向かってくるので慌てて逃げる

野球少年がホっとした表情で後ろを振り返る「大丈夫か?」

涙を拭いている女の子「うん」

【風景は中学校の校門へ戻る】

主人公「もしかして あの時の」

男の子「やっぱりそうか どうりで見覚えがあると思ったんだ 俺●●っていうんだ 友達からはダイちゃんって呼ばれてるよ」

嬉しそうな主人公「私の名前は●● ダイちゃんもこの学校だったんだね 部活は野球部に入るの?」

男の子「うん 秋に他校と試合するみたいなんだけど よかったら観戦にきてよ」

主人公「うん 応援してる!」

―――――

翌日

体育館に一年生が集まる

先生「それではこれよりオリエンテーションを開始します 図面を参考に校内の設備や教室の場所を覚えて下さい」

ワイワイ ガヤガヤ

女子生徒「●●ちゃん一緒にやろうよー」

男子生徒「漢字が読めねえぇ!!」

図面を眺める主人公

ダイちゃん「主人公!」

振り向く主人公「あ ダイちゃん!」

ダイちゃん「オリエンテーション 一緒にやらない?」

主人公「うん!私一人でできるか心配だったの 一緒にやろう♪」

①謎の飛行物体現る!!(押印) 

用紙を眺めるダイちゃん「謎の飛行物体って何だろう」

主人公「UFOとか?」

ダイちゃん「UFOってことは空だから屋上に何かあるのかな」

主人公「行ってみようか」

階段を上って屋上の扉を開ける二人

ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン

小さなUFOが屋上を飛んでいる

主人公「ほんとにUFOがいる!」

UFOからスピーカーで声が聞こえる「おお地球人 実は帰れなくなって困ってたところなんだ 助けてくれぇぇ!」と空中でユラユラしている

ダイちゃん「喋ってる!」

屋上の地面に誰かの影を見つけた主人公

物陰でラジコンのコントローラーを持ってイヤホンマイクに喋ってる白衣の先生「お土産に地球の種を積み過ぎたらこれ以上高く飛べなくなってしまったんだぁぁ」

主人公「先生?何してるんですか…」

ハッ!と主人公たちのほうを見る先生「オ オホン 私はこの学校で図工を担当している●●だ 今度授業でハンダコテを使ったラジオや懐中電灯などを作製するので火傷しないよう気を付けてくれたまえ」

①謎の飛行物体現る!!(押印) 先生にスタンプを押印してもらう二人

先生「図面に図工室の場所が書いてあるから覚えておくように 七不思議の二番目が近くにあるから周りをよく見渡してごらん」

図工室へと向かう二人

主人公「伝説の神獣 青龍  どこかに龍の置物でもあるのかな」

ダイちゃん「龍は水神様と関係してるみたいだから水場の近くに何かあるのかも この四つは方角を司る霊獣としても言い伝えがあって朱雀は南 白虎は西 玄武は北を指してるのかも」

主人公「よくそんなこと知ってるねぇ」

ダイちゃん「こないだファイファンやったからそれで」

主人公「何それ?」

ダイちゃん「冒険ファンタジーのゲームだよ」

主人公「ああ こないだ妹にレベル上げ手伝わされたあれか」

【ある日のリビングでの思い出】

妹「そのボタン押してるだけでいいからレベル99になったら教えて  あ、ちゃんと回復はしてね」

テレビ画面の前に座って嫌そうな顔でコントローラーを持ってる主人公「何で私がこんなことを…」

妹「お姉ちゃんが私のプリン食べたからでしょ」

【数日前の冷蔵庫】

プリンを発見して喜ぶ主人公

嬉しそうに完食する

完食すると透明の底の裏に赤マジックで何か書いてある

プリンの箱を逆さまにしてみると裏にマジックで妹の名前が書いてあるのを見つけて「ゲッ!」と驚き、髪の毛に汗マークを流す

【ある日のリビングでの思い出に戻る】

テレビ画面の前でコントローラを握りながらガッカリ下を向く主人公「あれはずるいよぉぉ(涙)」

【中学校の図工室前】

ダイちゃん「ここが図工室か 教室から離れてるから休憩時間のチャイムが鳴る前に向かわないとな」

図工室をキョロキョロする主人公「あ 水槽があるよ」

水槽の中に薄ピンクのウーパーウーパ―が入ってる

引きつった表情の主人公「りゅ…龍神様?」

水槽の隣にスタンプが置いてある

引きつった表情のダイちゃん「どうやらそうみたい」

用紙に押印する

③伝説の神獣 朱雀(押印)

図面を見るダイちゃん「もしこれが方角を指してるなら南は  こっちかな」

廊下を歩く二人

遠くに消火器が設置されてるのを見つける

消火器の横に置いてある台にスタンプとニワトリの玩具が「火の用心! 火の用心!」と喋っている

頭に汗マークのついた主人公の後ろ姿「これもあの先生が作ったのかな」

次は ④伝説の神獣 白虎(押印)

ダイちゃん「やっぱりこれは方角を指してる ということは」

二人が歩いていき、到着した扉には[校長室]と書いてある

主人公「この学校で一番開けにくそうな扉」

ダイちゃん「でもここしかないんだよなぁ」

姿勢を正してダイちゃんがノックする

コンコン コンコン

ガチャ

扉を開けて中へと手を差し伸べる校長先生「ようこそ どうぞ中へ」

台の上に白い招き猫が置かれてるのに気づいた主人公⦅あれか…⦆と心の中で呟く

二人分のお茶を淹れてお茶菓子を用意する御機嫌な校長先生「そちらのソファにお掛け下さい」

高そうなソファに座る二人

ソファの弾力にボフっとお尻が沈み驚きと緊張した表情の二人

向かい側に座る校長先生「好きなのを食べていいですよ」と言いながら用紙にスタンプを押印している

お茶に手を伸ばすダイちゃん「ァチチ(汗)」熱くて指を振っている

クッキーの袋を開ける主人公

校長先生「そんなに緊張なさらないで下さい 私も同じように中学生でした それから数十年が経っただけです 今でも当時の思い出が蘇ることがあります あの時は忙しさ 不安 色んな感情で こうしてお茶を飲むことなんてなかった」 

立ち上がって窓のほうへ行く校長先生「毎日ここで校庭にいる生徒たちを見ています そうするとまるで 自分が中学生に戻った気持ちになるんです 今なら 今の私ならあのとき勇気を出せたのに」

【数十年前 中学校時代の校長先生の回想】

体育の時間の校庭

リレーの練習をしている生徒たち

中学生の校長先生が体操服でランナーたちを眺める

先生「今度の運動会でリレーに出てみるか?」

当時の校長「みんなより遅いから 足手まといになるだけです」

先生「運動会で勝った負けたを気にするのは一瞬だけだ 先生なんて昔運動会で自分のクラスが勝ったかどうかも覚えてないよ ハハハ みんな勝つことばかり考えすぎなのさ」と少し寂しそうな表情を浮かべて校庭を見渡す

何も言わずリレー選手たちを見ている当時の校長の後ろ姿

そのままカメラは後方へと引き 校長室から当時の自分を見つめる今の校長先生の後ろ姿

主人公とダイちゃんは黙って校長先生を見ている

コンコンコンコン

別の生徒たちが校長室をノックする

先ほどと同じように校長先生が生徒を中に招き入れる

ソファから立ち上がる二人

主人公「ありがとうございました」とお辞儀をする

ダイちゃん「ありがとうございました」とお辞儀をする

廊下に出た二人

肩を上げて深く息を吸う主人公「フゥ… クッキー美味しかったね」

ダイちゃん「緊張して味なんてわからなかったよ」と苦笑い

⑤伝説の神獣 玄武(押印) 

ダイちゃん「玄武  玄武も確か水神だったと思うんだけどな」

主人公「また水槽とかがあるのかもね」

ダイちゃんが進んでいく斜め後ろで主人公が付いて歩く

クンクンと鼻で息をするダイちゃん「薬の匂いだ」

保健室と書かれた扉を見る主人公「この中かな」

コンコンコンコン

反応がない

ダイちゃん「あれ?誰もいないのかな」

もう一度 コンコンコンコン

中から擦れた声で「ばぃ…どうぞ」

保健室へ入って見渡すも誰もいない

ベッドで丸まっている掛布団からバッと手足が出る

主人公「ウォッ」と驚く

掛布団から顔をヒョコっと出す保健室の先生「がぜ引いてるから うづらないように ざぶいよぉ」ブルブルブルと寒そうに震えて再び顔と手足を掛布団の中にしまう

頭に汗マークの主人公「まさか…」

引き気味の顔をしたダイちゃんが壁を指さし「いや たぶんこっちだと思う」

壁には習字で【不老長寿 病は気から】という二枚の半紙が張られていて半紙の右下には亀の絵が書いてある

ベッドの掛布団からビュっと片手が飛び出す

主人公の肩が少しビクっとする

先生が机の上に置いてあるスタンプを指差す

二人は先生の机の上で用紙に押印

イソイソと出口の扉を開けるダイちゃん「お邪魔しましたー」

主人公「お大事にー」

先生の片手がバイバイと手を振っている

―――――

⑥15メートルの滑り台(押印)

廊下で用紙を見る主人公「15メートル そんな大きい滑り台あったっけ?」

図面を見るダイちゃん「 そんなのはないはず」

図面を見る主人公「あるとしたら校庭か裏庭だよね 行ってみようか」

下駄箱で靴に履き替えていると外から疲れた顔をした女子生徒 その女子生徒の腰に手を当てて疲れた顔のもう一人の女子生徒が寄り添いながら入ってくる

それを横目に見つつ校庭へ出る主人公とダイちゃん

主人公「滑り台なんてないよね 裏庭に行ってみようか」と下駄箱のほうに振り返る

振り返ったダイちゃん「ウワッ!」

四階の教室の窓から避難用のトンネル型をした袋が一階の地面に向かって伸びている

一階の地面でトンネルの出口の横に体格の良い男性職員がニコニコ立って クイックイッ と上を指差す

ダイちゃん「あの教室へ行けってことかな」

頭にドヨーンとした暗いマークが付いた主人公「嫌な予感しかしない」

四階の教室へ到着する二人

窓際で女性の先生がニコニコ立って手招きしている

主人公「近寄りたくない…」

ダイちゃん「でもあの先生の右手 スタンプ持ってるよ」

ニコニコ顔の先生が手招きしながらもう片手でスタンプをフリフリ見せつけてくる

渋々ダイちゃんの後ろを付いていく主人公

スタンプを押す先生「キミたちも避難訓練していくかい?」

ダイちゃんが窓から下を覗く

主人公「いえ 遠慮しておきます」と苦笑いで後ずさりして教室を出る

―――――

⑦お風呂上りといえばアレ(押印)

用紙を見る主人公「お風呂上りといえばアレ」

ダイちゃん「俺はやっぱり炭酸系かな」

主人公「この学校にお風呂なんてないから 何のことだろう」

ダイちゃん「プールにシャワーはあるはずだけどお風呂とは言わないよな」

主人公「一応行ってみようか」

階段を下りていく二人

二階まで下りたところで廊下から「ヤッター!」という声と嬉しそうな顔をした三人組の男子が階段を下りていく

下りていく男子たちが手に持ってる用紙を上から覗く主人公「あの人たち全部スタンプ押してある」

ダイちゃん「こっちから来たから二階にある教室かもね」

二階の廊下を歩きながら各教室を見ていく

[美術室]

ドーン! と裸のダビデ像が中に置いてある

顔が赤くなる主人公

ダイちゃん「お風呂上りだったのかな」

視線を下に向けながら恥ずかしそうにダビデ像に近寄る主人公と周りをキョロキョロするダイちゃん

裸のダビデ像を見ないように下を向きながら主人公「ねえ アレは? 早くー」

ダビデ像のむき出しの股間を見ながらダイちゃん「アレ…」

目を瞑ってダイちゃんの腰をバシっと叩く主人公「もうっ!」

叩かれて肩がビクっとするダイちゃん「ないんだよなあ」とダビデ像の顔を見る

ダビデ像がどこかを見つめている視線に気づくダイちゃん

振り返って視線の先へと進む

棚に覆いかぶさってる布をめくるダイちゃん「あ あった!」

ワァっと嬉しそうに口を開ける主人公「やったー!」

押印して教室を出る二人

チャイム「キーンコーンカーンコーン」

ルン♪ルン♪と軽い足取りで用紙を両手に持ちながら主人公「時間までに全部終わってよかったね☆」

ニコニコしたダイちゃん「うん 俺の教室はこっちだから じゃあね 今日はありがとう」

お互いに手を振ってそれぞれの教室へと戻る

―――――

ホームルームで担任の先生「皆さんは何個押せたかなー? 学校の図面や避難経路 消火器具の使い方などは生徒手帳にも書かれているので見直しておいて下さいねー」

フンッフンッと鼻を大きく広げて自慢げに目を閉じている主人公

周りの席の子たち「すげー あいつ全部押してある」

―――――

主人公のお母さんが台所で皿洗いをしている「学校はうまくやっていけそう?」

デザートの3段パンケーキの上に乗ってるバニラアイス、ホイップクリーム、アーモンドチップをフォークで刺してナイフでパンケーキを切って食べる主人公「うん 今日すごく楽しかった♪」

隣で目を瞑ってパンケーキに乗ってるミントの葉の香りを愉しんでいる妹

―――――

電気の消えた主人公の部屋

ベッドで横向きに寝ながらニコっとしてる

何かを思い出し笑いして「フフッ」と笑うと体をギュっと丸める

―――――

放課後の校庭

カキーン!

ワー!

ボールの音と歓声で下校途中の主人公が野球部の練習を見る

学校の外壁を覆っている網にボールがバスッ!っと当たる

ホームランを打ったダイちゃんがホームベースへ戻ってきて野球部の皆とハイタッチ

首にかけたタオルで汗を拭くコーチ「そろそろ暑くなってきたからしっかり水分補給しておくように」

部活が終わって水道で美味しそうに水を飲む生徒たち

ダイちゃんともう一人の生徒がバットやグローブの入った籠を二人で倉庫まで運ぶ

倉庫のカギを閉めるコーチ「二人は夏休みの合宿来れそうなのか?」

ダイちゃん「はい 秋の試合に向けて体を鍛えないと」

もう一人の男子生徒「俺も行きます ダイちゃんくらい体格を良くしたいです」

笑顔のコーチ「無理して倒れないように 体を休ませることも特訓の一つだ」

ダイちゃんと男子生徒「ハイ!」

校門を出るダイちゃんの後ろから主人公「おつかれさま☆」

振り向くダイちゃん「主人公 まだ帰ってなかったんだ」

主人公「いつもこんな遅くまで練習してるの?」

一緒に道路を歩いていく

ダイちゃん「うん 練習は楽しいし 早く家に帰ったら親に宿題しろって言われるからこっちのほうがいいよ(笑) 主人公はパソコン部だったよね そっちはどう?」

主人公「先生がいないときはパソコンのカードゲームしてるけど ワードとかエクセルも教えてもらったし上手くいってるよ     今度写真加工とか動画編集のやり方も教えてくれるって☆」

ダイちゃん「いつか主人公に俺の写真をかっこよく編集してもらおうかな」

主人公「そんなことしなくてもダイちゃんはかっこいいよ」

驚いた表情で目を見るダイちゃん「えっ」

立ち止まって数秒間目が合う

急に恥ずかしくなった主人公「えっ いやいや あっ(汗)」と両手を違う違うと振って慌てる

カーっと頭から湯気を出して下を向く主人公「あ 私の家こっちだから ダイちゃんはそっちだよね」

呆然と見つめていたダイちゃんがハっと我に返って「っそ そう 俺こっちだから じゃあね」

お互い手を振ってそれぞれの家へと帰宅

―――――

お風呂上りにホカホカした体で部屋に戻ってくる主人公

部屋の真ん中に置いた小さなテーブルの上に置き鏡

クリームを手に取って顔にヌリヌリ

鏡に映った顔をじっと見る

主人公⦅お化粧はまだ早いよなー 今度100円ショップで揃えて練習だけしてみようかな⦆と眉毛を撫でる

上を向いて妄想する

[カキーン  ダイちゃんがホームランを打ってホームへ戻ってきたあと主人公がそばでニコニコしながらスポーツドリンクのペットボトルを渡す  嬉しそうにダイちゃんが受け取る]

[夜の東京湾を豪華客船がヴォ―っと音を鳴らしている 客船の先頭の手すりにもたれて海を見渡す主人公 ヒューっと冷たい風が吹いて体が震えたところに後ろからダイちゃんが現れて肩に手を回して見つめあう ]

部屋で目を閉じて上を向きながら鼻の穴を大きく広げニマニマする主人公「ムフっ ウフフ フゴッ」

後ろで冷ややかな目をした妹が「お姉ちゃんキモイ」と座りながらグミを食べている

ギクゥッ!として振り向く主人公「何でいるのよ!」と慌てる

グミを噛みながら右手に袋から取ったグミを持ち 左手で袋を差し出す「お母さんがグミあるから二人で食べなさいって」

ほっぺを赤くしながらグミの袋の中を見る主人公「って あと二個しか入ってないじゃない!」

ビュっと部屋から逃げる妹

主人公がグミを一つ口に入れて噛みながら袋を閉めてテーブルに置く

主人公の家を上空から映した絵

夜空が映る 新月

―――――

チャイム「キーンコーンカーンコーン」

担任の先生「明日から夏休みです 暗い時間まで外を出歩かないように くれぐれも羽目を外して怪我をしないようにしましょう 宿題も忘れないでくださいね」

放課後の教室

主人公の席の前に座ってこちらを向く女友達「良かったー 夏休みの宿題に自由研究がない あれ何すればいいか悩むんだよねー」

宿題をペラペラめくって確認する主人公「わかるー 私ジャガイモの芽を観察してたらお母さんに怒られた」

【小学校低学年の主人公の部屋で回想】

お皿に水を浸してジャガイモを置く

机の上のジャガイモ見て経過観察を記録する

芽が生えた  右からも生えた  たくさん生えた  芽が14センチに伸びた

部屋に入ってきたお母さんが驚く「まあ!ジャガイモの芽は毒があるから捨てなさい!」

【回想が終わって教室に戻る】 

主人公「夏休みが終わる前夜に言うもんだから急いで違う自由研究をしてさ 結局夏休み中に伸びた髪の毛をノートに張って出したよ」

【小学校低学年の主人公の2学期の回想】

教室外の壁に生徒たちの自由研究レポートが貼ってある

主人公のレポートにセロテープで髪の毛が一本貼ってある[夏休みにこのくらい伸びました 52センチメートル]

ドン引きする生徒たち「何これ  毛?」

【回想が終わって教室に戻る】

やれやれ と両手を広げて首を横に振りながらため息をつく主人公

頭に汗マークを付けた友達「そうなんだ(苦笑)」

カキーン  ワ―

校庭のほうからホームランの音と歓声が聞こえる

主人公と窓の外を見る友達「ダイちゃんって凄いよねー」

黙ってダイちゃんを見る主人公

友達「そういえば主人公ってオリエンテーションのときダイちゃんと二人でやったんでしょ? 学校中で噂になってるよー」

慌てて友達を見る主人公「えっ!そうなの!?」

友達「付き合っちゃえば?お似合いだと思うよー」

困った顔でダイちゃんを見る主人公

校庭にいるダイちゃんがこちらを向いて目が合う

ニコっと微笑むダイちゃん

頬を赤くした主人公が手を振る

ダイちゃんも手を振り返す

周りにいた野球部員たちとコーチが主人公のほうを見上げる

サッとしゃがみ込んで隠れる主人公

その様子を隣で見ている友達「ジーー」

目を閉じて叫ぶ主人公「な なによぉ!」と

友達「クスクスッ」と笑う

4時58分

教室で夏休みの宿題を今のうちから少し進めてる二人

時計を見る友達「もうすぐ5時だよ 主人公まだ帰らないの?」

宿題を進めてる主人公「うん 今集中してるからもう少しだけやっていくよ」

ダイちゃんの部活が終わるのを待ってると察した友達「ふーん 私先に帰るね」

主人公「うん」

バイバーイと手を振って教室を出ていく友達

教室で一人になった主人公

窓際へ歩いていき校庭を覗く

解散の挨拶で部員たちとコーチが向かい合ってお互いにお辞儀している

コーチは振り向いて校舎のほうへ 部員たちは振り向いて校門のほうへ

主人公⦅あっ帰っちゃう!⦆慌てて席に戻る

視線を感じてドアの外を見る

帰ったはずの友達が顔を半分覗かせて口が猫の形の口になってる「フッフッフ」

主人公 両手を上に上げて「コラー」っというポーズをすると友達がサッと消える

校門を出て道を歩いてるダイちゃんに息を切らせて追いかけてきた主人公が呼びかける

振り向くダイちゃん「主人公 もしかして待っててくれたの?」

胸に手を当てて息を整える主人公「うん 明日から合宿行っちゃうんだよね 二学期入るまで会えなくなるから」

少し寂しそうにニコっとするダイちゃん「そうだ!9月24日にヴィクトリーズが来日コンサートするんだけど 俺の兄がチケット抽選で当ててさ 主人公も好きって言ってたでしょ? 何とか頼んでみるから チケット譲ってもらえたら二人で見に行こうよ」

主人公「えっ!? うん 楽しみにしてる!」

上空から道路を映すと楽しそうに話しながら下校する二人の姿

手を振ってそれぞれの家へ向かう

―――――

夏休み

家族で海水浴に来ている主人公は妹と砂のお城を作っているシーン

家で扇風機を回しながら妹とそうめんを食べているシーン

両親の結婚記念日に妹と手作りケーキを作ってパーティを開いてるシーン

友達と図書館で宿題をするシーン

妹が同級生のボーイフレンドと映画館に来ているシーン 見守り役として付き添ってる主人公がムスっとした表情で後ろを付いていく  主人公が興味ない6歳向けのアニメを後ろの席でつまらなそうに見ている

[合宿中のダイちゃん]

バスが山道を走る車内 野球部員たちはトランプをしたり笑い合い 車内に設置されてるカラオケで熱唱するコーチ

滞在先の館の前で館長にお辞儀をする部員たち

球場で練習をする風景

登山をする部員たち 頂上で皆ヤッホーっと叫んでいる

館の裏に設置されてるプールへ飛び込む部員たち

合宿先の大部屋に集まって全員で宿題をするシーン

電気の消えた部屋で深夜アイドル番組を見て照れた表情の部員 笑ってる部員 頬を赤くして口を開けてボーっとテレビを眺める部員 寝ているダイちゃん 先生が見回りにこないかドアの内側で廊下を見張る役の部員  遠くから先生が歩いてきて部屋を覗きにくる テレビを消して寝た振りをする部員たち

合宿先の近くの神社でお祭りに参加して神輿を担ぐ手伝いをする部員  リンゴ飴をかじる部員 舞を披露する巫女にウットリする部員 お祭りの催しで相撲をして大人を倒すダイちゃん コーチと部員たち全員で花火を見上げる

夏休み終盤 館長へお世話になりましたとお辞儀をする一同

バスが高速道路を走る車内 野球部員たちが寝ている中 ダイちゃんは窓の外を見ている

―――――

主人公の家のリビングで壁にかかっている日めくりカレンダー

[8月31日]

妹らしき手が日めくりカレンダーを破く

[9月1日]

体育館で始業式をする風景

生徒たちが体育館を出ていく中 離れた距離で主人公とダイちゃんの目が合う

嬉しそうに駆け寄る主人公

ダイちゃんは腰の高さに両手を出して手のひらを上に向ける

主人公はそのまま抱き着こうとするも周りの視線を感じて慌てながらダイちゃんの手首を掴んでブンブンと上下に振る

ダイちゃん「9月24日のコンサートチケット 兄が譲ってくれたよ!」と言ってポケットから二枚のチケットを取り出し一枚を主人公に渡す

主人公「わぁ!お兄さんには何かお礼しないとね」

ダイちゃん「グッズを自腹で全部買ってきたらいいよって言ってた(苦笑) お年玉使ってなかったからなんとかなりそうだけど(汗) 15時半に入口で待ち合わせしよう」

主人公「そうだったんだね(汗) うん 楽しみにしてる!」

―――――

教室の生徒たちがガヤガヤと窓に集まって外を見ている

学校の駐車スペースに真っ白な高級車が止まっていてボディーガードが立っている

[校長室]

校長と教頭の前に母とセミロングの男子生徒 全員お辞儀し合う

廊下で両手を組んで手を胸に当ててる女子生徒たち 教室から廊下へ体半分を乗り出して廊下を見ている生徒たち 驚いた表情で口を開けている男子生徒たち

その様子を見て主人公が廊下に顔を出す

別の教室の担任の先生が転校生を連れて廊下の真ん中を歩いてくる

先生の後ろにはニコニコとした美形男子が廊下にいる女子と手を振り合ってる

女子生徒の声「キャー イケメン! こっちも見て!」

転校生「ありがとう☆ 宜しくね」と愛想よく生徒たちの声に応える

教室から顔を出してる主人公 大騒ぎの廊下を見て肩をビクっと驚かせ頭に汗マークを付けている

転校生は先生に案内されて別の教室へ入っていく

[転校生の教室]

担任の先生「転校生を紹介します 時音光一(ときねこういち)くんです それでは時音くん 自己紹介をお願いします」

時音光一「初めまして 時音光一です こういちと呼んでくれると嬉しいです 宜しくお願いします☆」

目をハートマークにしてる女子生徒たち「時音様! 光一様! 王子!」

自分の席へ着席する時音光一

周りの女子生徒たちは時音光一に目を輝かせている

担任の先生「オホン それでは授業を始めます」

―――――

[体育館のバスケットゴール]

バスッ とボールが入る

スリーポイントを入れる時音光一に男子生徒たちは唖然としている

体育館の入口では校庭で陸上競技をしていた女子生徒たちが目をハートマークにして覗いてる

[校庭での棒高跳び]

華麗な背面飛びで校内歴代最高の高さを記録

記録ボードを持ってる体育の先生の驚いた表情

[プール]

クロールで一番にゴール

引き気味の男子生徒たち

[砲丸投げ]

順位はクラスで4番目の飛距離

一番遠くまで投げた太った男子生徒 ⦅勝った⦆ と胸の高さでガッツポーズ

坊主頭の体格の良い生徒 腕を組んで目を瞑りながら口角を上げ ウンウンと頷く

一番身長の高い生徒 ホッと安堵した表情

[放課後]

駐車スペースの高級車へと向かう時音光一の後ろを大勢の女子生徒が追いかける

時音光一が振り返ってニコっと微笑みながら後ろの女子生徒たちに手を振る

キャー と倒れそうになる女の子をそばにいた女子生徒が支える

校舎の窓からも大勢の女子たちが顔を出してる

それを見上げた時音光一は愛想よく微笑む

時音光一の30メートル先に一人だけ違う方向に目を輝かせた主人公が目に留まる

主人公の視線の先を向くと 校庭の奥 汗だくで腕立て伏せをするダイちゃんと野球部員たち コーチも一緒に腕立て伏せしてるがコーチの腕立て伏せは汗ひとつかかず生徒の三倍のスピードで速い

ニコニコしてる主人公の前を時音光一が通り過ぎる そのとき画面の速さがゆっくりになり主人公の髪の毛の毛先が風でフワっとする

時音光一は緊張した眼差しで2メートル先の地面を見つめながら通りすぎる

高級車の前でボディーガードが後方のドアを開ける

車内に入る前 時音光一は振り向き主人公を再び見つめる

帰路へと向かう車内 時音光一は右腕の力こぶを出すポーズをして左手で自分の力こぶをムニムニする

[豪邸のディナー]

食事中 髭を生やした父が長方形の長いテーブルの先で時音光一に語りかける

テーブルに置かれたキャンドルで父の姿はユラユラと霞んで見える

ゆっくりとした口調の父「名誉というのは冨を運んでくれる しかし一度でも傷がつけば一生癒えることはない それが幼い頃の出来事だったとしてもだ 癒えたと思っていた過去も突然映像として蘇ることがある その度に光一はそれと戦うことになるだろう 何度倒しても再び現れる 厄介な敵だ だがな 目の前が真っ暗になったとしても 何度でも蘇る一つの光がある それは光一が昔から知っているものだ その光に向かって突き進め そうすれば辺りは明るくなり そこにはお前が待ち望んでいた景色が広がっているはずだ」

キャンドルで霞んだ父を見つめながら「はい 父上」

長いテーブルを横から映す そこに父の姿はなく キャンドルの先を見つめる時音光一の姿

―――――

[時音光一の部屋]

ホテルのスイートルームのように 寝室 リビング キッチン バスルーム バルコニーのある広い自室

あらゆる最新器具が揃っていて自室だけで生活が成り立つほどの設備

部屋にロボットの音声が流れる「30分後に消灯のお時間となります」自動的に電気の明るさが少し暗くなる

リビングのテーブルに大きなキャンドルを置き火を灯す

リビングに設置されているピアノの椅子に座る

音の高さを探すように

高い音の鍵盤を10秒間押し続け ゆっくりと指を離す

中間の鍵盤を10秒間押し続け ゆっくりと指を離す

低い音の鍵盤を10秒間押し続け ゆっくりと指を離す

もう一度高い音の鍵盤を10秒間押し続け ゆっくりと指を離す

~~~♪

~~~~♪

~~♪

部屋の電気が自動的にゆっくりと消灯する

~~♪

キャンドル越しに霞んだ姿の時音光一

~~~♪

映像はバルコニーの外へ向かい夜空を向く [新月]

~~~~♪

―――――

校庭に数匹のスズメ「チュン チュン チュンチュン」

音楽室の前の廊下からピアノの音色《カノン/パッヘルベル》

音楽室の中で時音光一が演奏を終える

座って聞いていた生徒たち全員「オー」パチパチパチパチパチ

拍手の中 立ち上がり生徒たちの方を向いて微笑みながらお辞儀をする時音光一

[休み時間]

時音光一が男子トイレへと入る

続いて3人の怒った形相の生徒たちがトイレの中へと入る

中から別の生徒が飛び出し トイレの中に顔を向けながら駆け足で逃げる

廊下を歩いていた主人公がそれを目撃して立ち止まる

トイレの中

奥から手を洗いに戻ろうとする時音光一に三人の生徒が立ちふさがる

時音光一は微笑みながら地面を向いて通り過ぎようとする

体格の良いボスが時音光一の行く先を塞ぐ

顔を見上げてボスを見る時音光一

ボス生徒「お前何で転校してきたんだよ」

時音光一「あ それは家庭の都合で」と微笑みながら話す

ボス生徒「え?!前の学校で悪さして学校にいられなくなったって!?」

時音光一「いや 家庭の都合で」と引きつった笑顔で答える

ボス生徒「おいおい聞いたかよ 皆に教えてやらないとなぁ!」と時音光一の返事を無視して右に立ってる仲間のほうを向く

左に立ってる生徒「悪く思うなよ 好きな子にフラれたんだ」と片目をウィンクして舌を出しながら右手の小指側を時音光一に向けゴメンゴメンと合図する

左の生徒を睨みつけるボス

ビクっと縮こまる左の生徒

時音光一「…」俯いて顔が影で隠れる

【時音光一の転校前の中学校での回想】

校舎の裏庭から俯いて出てくる時音光一

裏庭の片隅で寝転んで授業をサボっていた二人の男子 去っていく時音光一を見て裏庭を散策する

桜の木の下で泣いている女子生徒を見つける

あっ!と頬を赤くして驚く男子生徒

時音光一が去って行った方向を睨みつける

ある日の朝

時音光一が廊下を歩いていると友達4人がこっちを見ている

笑顔で右手を上げる時音光一

サッと教室の中へと入ってしまう友達

驚きと困った表情で右手を少し下げる

時音光一が席へ座って周りをキョロキョロ見回す

横目で嫌そうな目つきをする女子生徒

横目で睨みつける男子生徒

先生が教室へと入ってくる

時音光一と先生の目が合ったあと先生はすぐに目をそらす

体育館でバスケットボールのシュートをしようとする男子生徒

ディフェンスが両手を上げて立ち塞がる

ボールを持ってジャンプしている生徒の斜め右に両手を広げてパスを待つ時音光一

ジャンプしている生徒は時音光一を見たあと後ろにいる仲間へバウンズパスを送る

パスを構えていた時音光一はそのまま体が固まっている

廊下を歩く時音光一

後ろからヒソヒソヒソと口に手を当ててこちらを見ている女子生徒たち

教室から出てきた先生がこちらを見たあと眉をひそめて反対側へと歩き去る

時音光一は廊下に立ちすくみ顔に影がかかる

裏庭で泣いていた女子生徒が階段の角で俯いている

横には裏庭でサボっていた男子生徒が立っていてニヤニヤ笑っている

【回想が終わり聖春第一高校のトイレへと戻る】

時音光一は俯いて顔に影がかかったまま動かない

ボス生徒「明日には学校にいられなくしてやるから楽しみにしてろよ!ハハハハハ」

ボス生徒の後ろから主人公の声「それ本気で言ってるの?」

後ろを振り返る三人の生徒

主人公の姿に気づく時音光一

ボス生徒「は?ここ男子便所だぞ?何で女が入ってきてんだよ」

主人公が下を向きながら「喧嘩するの?」両手をグーに握って肩を震わせる

ボス「だったら何だってんだよ」

主人公「仲直りなんてできないからね… 何度も 何度もあんたたちのこと嫌いになるから!」

ボス「はぁ?何言ってんだお前」

主人公「呪いだって何だってしてやる 絶対許さないからね!」

引きつった顔のボス「呪いってお前」

右にいる男子生徒「こいつやばくね?気持ちわる」

左にいる男子生徒「俺は…そういうのあると思う やめとこうよ」心配そうにボスを横目で見る

主人公を睨むボス生徒

トイレの中に入ってくる先生「どうかしたのか?」

ボス生徒が時音光一の方へ振り向いて「けっ!」と睨みつける

足早にトイレから出ていく三人の生徒

主人公は手を強く握ったまま肩を震わせ 悔しそうな表情で目に涙を浮かべている

時音光一が呆然と主人公を見つめる

先生はその場の雰囲気で状況を理解して主人公の背中にそっと手を添える

時音光一が帰路へと向かう車内 黙って運転してるボディーガードの背中をボーっと見つめ「●●さんは学校楽しかったですか?」

ボディガードはしばらく返事をしないまま「楽しかったときの出来事を思い出せば 楽しかったですね」

時音光一はそれを聞いて窓の外へと顔を向ける

小学生の男女が笑顔で一緒に下校してる姿が目に入る

―――――

チャイム「キーンコーンカーンコーン」

休み時間に入って教科書を机にしまっている主人公

ザワザワするクラスメイトたち

時音光一が主人公の席の前に立つ

主人公「えっ?」と顔を上げる

時音光一が後ろに回していた手を前に差し出す 小さな四角い箱に赤いリボンが結んである

主人公は状況が理解できていない

時音光一がニコニコしながら「こないだのお礼 お姫様にはこれが似合うと思うよ☆」

クラスメイトたちが二人を驚きの表情で見ている

ドアから覗いてる時音光一ファンの女子生徒「ななななな なにぃぃぃぃ?!」と驚愕

[主人公の家のリビング]

テーブルにリボンの付いた四角い箱を置いて主人公がそれを眺める

妹「開けないの?」

主人公「何が入ってるんだろう」

妹が箱を覗く 顔を横にして耳を箱に近づける

チックッタック チックッタック チックッタック 時計の針が進むような音

探偵帽をかぶった妹が虫眼鏡越しに箱を見ながら「爆発するかもしれない」

主人公の頭に汗マークが付いて「さすがにないと思う(苦笑)」

恐る恐るリボンを解いて箱を開ける

シルバーの細い腕時計が19時20分をさしている

妹がお母さんのスマートフォンをポチポチ押す「200万円だって」と時計の詳細が書かれた画面を主人公に向ける

主人公「にひゃくまんーーー!?」両手に白い手袋をはめて時計を持つ

主人公「どうしよう」

妹が耳に赤鉛筆を載せて丸めた競馬新聞片手に「私に預けてくれれば400万にしてきてあげる」

主人公「あなたにはまだ早いです」

―――――

翌朝の下駄箱

主人公⦅あれ?⦆

自分の上履きがなくて周りを探すも見当たらない

靴下を汚しながら裸足で廊下を歩く主人公

時音光一「姫ちゃん☆彡」ニコっと目の前に現れる

時音光一が足元を見る

バッとお姫様抱っこする時音光一

主人公は頬を赤くして驚く

遠くで上履きを隠したであろう女子生徒が驚いてる

主人公「ちょ ちょっと!早く降ろしてよ(汗)」と恥ずかしそうに慌てる

遠くで見ている上履きを隠した女子生徒がお姫様座りでドヨーンと暗い顔をしてる

その後主人公の足元を映すと[来賓用]と書かれたスリッパを先生から借りて履いている

帰りの下駄箱には上履きが戻ってきていた

放課後

下校中の主人公の後ろからプップーと車のクラクションが聞こえて振り返る

時音光一が車の窓から上半身を出して笑顔で手を振っている

車が主人公の横で停止し時音光一が降りてくる「さあ乗って乗って」と左手でドアを開けて右手を車内へ向ける

慌てて両手を振って断る仕草の主人公「いやいや(汗) 乗らないけど そうだ」と言って自分のカバンに手をかける

空からザーっと雨が降り始める

傘を持っていない主人公の体が濡れていく

時音光一は小さな声で「ラッキー」と嬉しそうにして「制服がビショビショになったら明日の朝までに乾かないよ さあ乗って乗って」

主人公はカバンが濡れてしまって返そうと持ってきていた時計が壊れないか心配になり車内へと入る

主人公「昨日くれた時計返そうと思って」とカバンのチャックを開ける

プップー プップーとクラクションが鳴ってるので後ろを覗くと 一方通行で道を塞いているため車が渋滞になっていた

ボディガード「発進しますのでシートベルトを装着して下さい ご自宅はこの辺りですか?」

急いでシートベルトを装着する主人公「あ はい 突き当りを右へ曲がって二つ目の十字路を左へ曲がったところです」

時音光一はニコニコしながら主人公を見つめる

主人公「これ 返そうと思って」とカバンの中から時計の箱を取り出す

時音光一「気に入らなかった?」と残念そうな表情

主人公「そうじゃなくて これすっごく高いんでしょ? 貰えないよ」

時音光一「どうしても?」

主人公「どうしても」

時音光一「うーん」渋々時計を返してもらう

車が主人公の家の前に止まる

ボディーガードが折り畳み傘をカシャっと広げてトランクを開ける

ボディガード「お好きな傘をどうぞ」5本の傘を差しだす

主人公⦅傘あったのね…⦆

主人公「玄関まですぐそこなので大丈夫です」

ボディーガード「かしこまりました」と困った表情で軽く頭を下げる

バサッと大きな傘を広げて車を降りる時音光一「入ってお姫様」

時音光一の好意を断るのも申し訳なく主人公は玄関まで傘に入れてもらう

鍵をガチャガチャと開けて扉を開けると母が玄関先に現れた

母「まあ わざわざ有難う御座います」

時音光一「初めまして 時音光一です 真剣に交際を望んでるので宜しくお願いします」とニコニコした表情で頭を下げる

主人公「ハァアアアア!?」唖然とする

二階から妹が顔を出す

時音光一が帰宅したあと家族で夕飯を食べる

嬉しそうな母「それで?どうするの?」

主人公「どうするって?」

母「結婚するの?」

水を飲む主人公はゴフっとむせる

嬉しそうな父「娘に相手が見つかってよかった」

妹がメジャーで主人公の薬指のサイズを測る「8号」

主人公は無言でご飯を食べる

夕食後のリビングで妹とテレビゲームをしている

テレビ画面の人生ゲーム「主人公は恋人ができた 活力プラス10 魅力プラス10 学力マイナス2」

主人公「どうして学力が下がるのよ!」

テレビ画面の人生ゲーム「妹に7人目の子どもが産まれた 会社と友人からお祝いを貰う 総資産21億4700万円」

妹「大家族で弁護士を勤めるのもラクじゃないわね」

主人公「6歳児のくせに…」

テレビ画面の人生ゲーム「セーブが完了しました」

テレビを消す主人公

日曜日の朝

プップー 窓の外から車のクラクション

机で宿題をしてる主人公「まさか」

聞こえないふりをする主人公

時音光一が家の外から呼ぶ「お姫様ー!」

玄関を開ける母「あらぁ時音くんいらっしゃい」

母の声が聞こえて慌てて階段を駆け下りてくる主人公

玄関先の時音光一「こんにちはお姫様 今度の学芸会で着る衣装 一緒に探しにいこ☆」

母「これで足りるかしら」と言って母に財布を渡される

妹「ふつつかものの姉ですが宜しくお願いします」

外で高級車のトランクからボディガードが取り出したゴルフドライバーに目を輝かせて素振りさせてもらう父

頭に汗マークを垂らす主人公⦅私の意思が尊重されていない⦆

ご近所のお婆さん「ほわー すごい車ねー」お婆さんの家の家族も外へ出て見にくる

犬の散歩をしてるご近所のおじさん「近々一緒にゴルフコース周りますか」

主人公の玄関の中を覗く近所の少年たち

慌てる主人公「わかった(汗) 行くから早く(汗)」

発車する車の後ろで家族がニコニコした表情で見送る

ショッピングモール内を見て回る二人

刺繍コーナーでピンク色のうさぎを手に取る主人公「可愛いー!  こういうの作れる人ってすごいよねー 尊敬するよ」

時音光一「それ買ってあげる☆」

主人公「こういうのは自分で作るからいいんだよ♪」

試着室

着物の主人公が顔だけ振り向く

くノ一の忍者姿で手にクナイを持つ主人公

アラビアン衣装の主人公が笛を吹いてツボから蛇が踊ってる絵

宇宙服で動きにくそうにしてる主人公

お姫様のドレス

買い物袋を大量に抱えた時音光一

主人公「どうして全部買ってくるの!?」

時音光一「タイムスリップの学芸会なんだから使うでしょ☆」

主人公「でも他の生徒たちは手作りだったりするんだからおかしいよ!」

時音光一「姫ちゃんが一番輝いてていいじゃん☆」

主人公「私そういうのヤダ」

主人公「大事な服が傷ついたり汚れたとき時音はどうするの?」

時音光一「同じものを新しく買ってあげるかな」

主人公「やっぱり 時音くんとは価値観が合わないよ」

時音光一「え」と少し驚いた表情

主人公「私学芸会でそれ着たくない 返品しておいてほしい」

ボディガードが現れて「坊ちゃん お時間です」

主人公「私一人で帰れるから 今日はありがとう」

時音光一は何も言わず去って行く主人公を寂しそうに眺める

主人公の家のお風呂場

壁にヒヨコの水鉄砲がピュー ピュー ピュー っと壁に向かってお湯を出す

ヒヨコのお湯がなくなり空気だけが抜ける音 プシュー

ヒヨコが空気だけを吸ってもとの大きさに戻る  ジュジュジュジュジュ

主人公の顔へとカメラが向く

頭にタオルを乗せて口を湯舟に沈ませながら⦅言いすぎちゃったな⦆と悲しい表情

主人公が湯舟に口から息を出してブクブクブクと泡を立てる

翌日学校のチャイム「キーンコーンカーンコーン」

主人公がチラっと教室のドアを見る

下校時に駐車スペースを見るが高級車は止まってない

翌日

主人公がチラっと教室のドアを見る

下校中に道を歩く主人公⦅怒ってるんだろうな…⦆

翌日

翌日学校のチャイム「キーンコーンカーンコーン」

主人公がチラっと教室のドアを見る

時音光一が顔を覗かせてニコニコ手を振る

主人公の席の前へ来る時音光一「はい プレゼント☆」

時音光一の手には絆創膏がたくさん貼られていた

主人公の家

学習机に置いた箱を開封する

ピンク色のうさぎに見える下手くそな人形を手に取る

主人公⦅これ⦆

【ショッピングの日の回想】

主人公「こういうのは自分で作るからいいんだよ☆」

時音光一は無表情で主人公が人形を持ってる後ろ姿を見つめる

翌日

主人公が窓の外を覗く

時音光一が体育を終えて校庭を歩く

主人公⦅お礼したいけど 何が喜ぶんだろう⦆

下校中の主人公が高級車で走り出す車内の窓から時音光一の横顔を見る

自宅リビングでお父さんが雑誌を読んでいる

雑誌を置いて部屋から出ていくお父さん

エプロンを着て皿洗いを手伝っていた主人公が顔をリビングの雑誌に向ける

リビングのソファに座って雑誌をパラパラとめくる

《雑誌の週間占いコーナー》

おとめ座の運勢「ラッキースポットは近所の公園☆彡」

―――――

翌日の放課後

時音光一がボディーガードに車のドアを開けてもらう

主人公「時音くん」

振り向く時音光一「姫ちゃん☆」

主人公「このあと少し時間ある?」

公園を見渡す時音光一はワクワクした表情

時音光一「わー!公園って初めて来た!」

主人公「そうなの!?」

時音光一「うん 安全バーがないからって行かせてもらえなかったんだ」

主人公⦅安全バー?⦆

ブランコに座る時音光一「だだだだ大丈夫これ!?」と怯える

主人公「大丈夫 大丈夫☆」と背中を押す

時音光一「ヒェェー!」

次はコーヒーカップをグルグル回して笑顔の主人公

時音光一は目をグルグル巻きにしてる

その後ベンチに座る二人

主人公が時音光一の手の甲に貼ってある絆創膏が一枚剝がれそうになってることに気づく

主人公が自分のカバンをガサゴソする

主人公「手出して」

時音光一が手を差し出す

主人公が絆創膏を剥がすと切り傷が目に留まる

主人公は猫の絵が書いてある絆創膏の両端をスッ スッと撫でて貼る

そのまま両手で持ちながら手を見てる主人公はギュっと手を握る

そのあと時音光一が主人公の手をギュっと握ってくる

二人の目が合う

しばらく目を合わせていると時音光一が唇を寄せてくる

道路にいた野球小学生たち「じゃあねー ばいばーい」

主人公はハッと我を取り戻し「タタタタイムーー」と両手で時音光一の唇を×マークで押し戻す

主人公は胸を撫でおろして⦅危なかったー⦆と息を整える

時音光一「俺じゃだめかな」

主人公「えっ?」

時音光一「好きなんだ」

主人公は驚いた表情

真剣な目つきの時音光一

キッと高級車が後ろに現れてボディーガードが「坊ちゃん お時間です」

時音光一はまだ主人公を見つめている

主人公「あっ! 私もそろそろ帰らないと プレゼントありがとう」と言ってそそくさと公園を出ていく

走り去る主人公の後ろ姿を寂しい表情で見つめる時音光一

―――――

主人公の自室

勉強机の前に座って宿題をしている

数学の答えを間違えて消しゴムで消す

壁に貼ってあるカレンダーを見る[9月]

引き出しからダイちゃんに貰ったコンサートチケットを取り出す主人公

―――――

放課後

下校中の主人公

カキーンと野球の音がするので校庭を見る

監督がダイちゃんにノックをしてる

監督「あと897本!」

すでにバテてる生徒もいる

―――――

日曜日

自宅のリビングの親機から電話をかけてる主人公

電話先のお母さんらしき声「今日も練習でいないのよー ごめんなさいね」

主人公「そうですか わかりました」

妹は無表情でそれを聞きながらテレビゲームしてる

―――――

放課後

校門へと向かう主人公

校庭で監督の前に整列してる野球部

ダイちゃんと目が合う

整列中のダイちゃんが右手を上げて笑顔でジェスチャーする

主人公 嬉しそうに頷く

監督「こら」

ダイちゃんはビシっと整列し直す

―――――

夜の自室

主人公が鏡の前で三つ編みの練習をしてる

三つ編みが完成してフフっと微笑む

窓にはてるてる坊主がぶら下がっていて夜空が映る

雲の多い夜空で月が隠れている

―――――

日曜日のコンサート会場

舞台で外国人グループがリハーサルをしてる

外に観客が集まってくる

現地に到着する主人公⦅わあ!⦆と行列に驚く

主人公⦅ダイちゃんどこにいるんだろう⦆行列をキョロキョロする

ダイちゃんは行列には並ばず入口の扉の横に立つ キョロキョロと見回す

入口の扉が開く

ゾロゾロと中へと入っていく観客たち

行列に押し流されて中へと入っていく主人公

入口の横で立っているダイちゃん

会場内を見回す主人公

アナウンス「まもなく照明が暗くなります」

入口のダイちゃん⦅中に入ってるのかな でも入口で待ってるって言ったし⦆

ポケットから生徒手帳を取り出しメモ欄のページを見る 主人公の自宅の電話番号

ダイちゃん⦅来る途中で怪我でもしたのかな 風邪引いて家で寝込んでるのかな⦆

公衆電話を探してキョロキョロする

ダイちゃん⦅でも電話してる最中に主人公が来てここに俺がいなかったら…⦆

不安そうに佇む

会場ではコンサートが始まってる

外国人グループが英語で歌っていて観客は両手を上げジャンプする

呆然とする主人公⦅ダイちゃんもどこかで見てくれてるかな⦆

会場はフィナーレを迎えて観客は大熱狂

行列の波に流されて会場を出る主人公

入口の横で立ち続けるダイちゃんには気づかない

観客の親子が娘を肩車して娘はグッズを嬉しそうに握ってる

大人のカップルが楽しそうに去って行く

入口の清掃員「清掃車通りますので離れてください」

俯き寂しそうにするダイちゃん

最後の1ページは大きな一枚の絵

中央線が書かれ二人が背中合わせに俯いて歩く 背景はそれぞれの家路に向かう景色

翌日の放課後

校庭でランニングする野球部

主人公がこちらを見てることに気づくダイちゃんは立ち止まり 頭の後ろに左手を添え 右手でごめんねとジェスチャーする

主人公は寂しそうにニコっと微笑み頷く

最後尾を走ってる監督がダイちゃんの肩をパシッと叩く

ダイちゃんは再びランニングを始める後ろ姿

―――――

ある日の教室

担任の先生「明日から冬服に変わるので夏服を着てこないようにして下さいね」

男子生徒「俺間違えて夏服のまま来そー!」

担任の先生「それと再来週の日曜日に野球部が親善試合を行います 応援に行ける方は参加してあげて下さいね」

心配そうな女子生徒「有名な強豪校が相手だって」

隣の女子生徒「えー」

放課後に校門を出ようとする主人公

ダイちゃん「主人公!」

振り返る主人公「あ ダイちゃん!」

ダイちゃん「試合 隣駅の野球場なんだけど良かったら応援に来てほしいな」

主人公「もちろん!頑張ってね」と胸の高さでガッツポーズする

遠くにいる監督「おーい」

走って戻るダイちゃんは片手を上げて主人公に笑顔を送る

―――――

試合当日の野球場

有名な強豪校にはチアリーダーがダンスを踊り太鼓を叩く応援団 大きな旗を振っている

観客席では主人公が一人の女友達と心配そうに座ってる

球場で両チームが整列してお辞儀する

ベンチでのダイちゃんは緊張のあまり冷や汗をかいて肩に力を入れてる

三年生の女子マネージャーが冷たいペットボトルをダイちゃんの頬にピタっと当てて驚かす

ダイちゃんは驚いたあと女子マネージャーに笑顔で会釈してペットボトルを受け取る

観客席で主人公がその光景を見ていて怒りの形相で頭の上にゴゴゴゴゴゴと書いてある

隣の女友達「えっ 何かゴゴゴゴゴって聞こえるよ」と引き笑い

1回裏 2対0 走者1塁2塁 1アウト

4番バッターのダイちゃんがバットを持って登場する

観客席の主人公は笑顔で両手を胸の前にガッツポーズさせてる

カキーン

ボールが空中を飛ぶ

ホームラン!

ワーっと会場が盛り上がる

主人公は両手を上げて「やったー!」

その後は強豪校がホームランを打ち逆転

三振するこちらのバッター

監督がベンチの生徒たちに作戦を指示するジェスチャー

心配そうな主人公

強豪校の応援団が扇子を持って三々七拍子を舞う

[得点表]

7対6 9回の裏 1アウト 走者1塁

監督⦅1点でもいい 1点取って延長に持ち込もう⦆

ベンチの生徒たちは強豪校相手にヘトヘトに疲れきってる

女子マネージャーは生徒たちを見ながら⦅延長になれば負けるわね⦆

ダイちゃんがバッター席へと向かう

ベンチの生徒が固唾を飲んで見守る

監督は柵に置いた両手をグッと握りしめる⦅これで決まる⦆

ダイちゃんが構えを取りバットをギュっと握る

主人公が固唾を飲んで見守る

強豪校の監督がジェスチャーでピッチャーにサインを送る⦅あ い つ は 打 つ 敬 遠 し ろ⦆

ピッチャー頷く

ボール

ボール

ボール

観客席の男性「ずるいぞー!」

審判「ボール フォアボール」

一塁へと歩くダイちゃん

ベンチの監督が悔しそうに目を瞑る

ベンチの生徒「そんな」

9回裏 7対6 1アウト 走者1塁2塁

バッター席に5番が立つ

空振りストライク

ボール

5番バッターが1塁にいるダイちゃんと目が合う

1塁から少し離れた場所でスタンバイしてるダイちゃん

5番バッターはピッチャーを見る

ピッチャー投げる

5番バッター バント

ボールは1塁に向かって転がる

ピッチャーが玉を拾い1塁へ投げる

審判「1塁 アウト!」

1塁が2塁へボールを投げる

審判「セーフ!」

9回裏 7対6 2アウト 走者2塁3塁

続いて6番バッターが構えるが緊張して震えている

審判「ストライク」空振り

カキーン

審判「ファール」

監督⦅ボールの玉まで打つな 落ち着いてよく見ろ⦆冷や汗で見つめる

6番バッターの様子を真後ろで見ていたキャッチャーがピッチャーへサインを送る

キャッチャー⦅こ い つ は 振 る ボ ー ル を 投 げ ろ⦆

ピッチャー頷く

ピッチャー 下方向に向かって投げる

カキーン

ゴロ

2塁3塁の間を抜けてボールが転がる

外野がボールを拾いに走る

3塁走者 ホームイン

続いて3塁を通り過ぎてホームへ走るダイちゃん

外野がホームへ向かって投げる

監督⦅行けるか 間に合うか⦆固唾を飲んで見守る

ダイちゃん ホームへ向かってヘッドスライディング

キャッチャーミットにボールが届く

ズサァー!

バシーン!!

球場の音が消える

主人公が口を開けて心配そうに見る絵

監督の顔が映る

生徒がベンチから腰を浮かせる

球場の空をカメラが映す 審判の声「セーフ!」

ゥォオオオオオオオオオオオ!!!!!

生徒たちの大きな声

ホッとした表情の監督

ダイちゃんのもとへ生徒たちが駆け寄って頭をペシペシしたり背中を叩いたりジャンプして喜ぶ

主人公のいる観客席へ振り向いてグッと親指を立てるダイちゃん

主人公は目に涙を浮かべながらも嬉しい表情でグッと親指を立てる

[得点表]

7対8

[翌朝の朝礼]

体育館の壇上に並ぶ野球部

全校生徒から拍手が贈られる

恥ずかしそうにする野球部

体育館を出るとき主人公がダイちゃんに声をかける

主人公「おめでとう☆」

ダイちゃん「ありがとう」

ダイちゃんは恥ずかしそうに下を向いて微笑む

主人公がニコニコしてダイちゃんを見つめる

ダイちゃん「そうだ 試合が終わって落ち着いたから今度の日曜日どこか行かない?」

主人公「本当!?遊園地行きたい☆」と両足をピョンっとジャンプする

ジェットコースターの最前列で両手を上げるダイちゃん

バーを握って恐そうにする主人公

お化け屋敷で幽霊に驚かされてダイちゃんに飛びつく主人公

メリーゴーランドに乗る二人

ソフトクリームを持ちながら戦隊ヒーローの劇を見る二人

観覧車で下を見てワーっと口を開ける主人公

―――――

放課後の職員室

監督がお茶を飲みながらゆっくりしている

主人公とダイちゃんが並んで下校するシーン

高級車の窓から二人を見つける時音光一 寂しそうに見つめたあとフッと微笑む

ある日の日曜日

川で釣りをして魚を釣るダイちゃん

ザリガニに恐る恐る餌をあげる主人公

ある日の日曜日

公園でバーベキューをする二人

別の席では野球部と観戦に一緒に来てた女友達が肉を食べてる

女子マネージャーは彼氏らしき同級生と寄り添ってジュースを持ってる

夜の自室

机で主人公とダイちゃんが交わしてる交換日記のページに思い出の写真を貼る主人公

―――――

教室の担任の先生「もうすぐ冬休みですが 年越しだからといって羽目を外さないように 夜出歩くときは保護者の方と離れないようにして下さいね」

下校中の二人

ダイちゃん「クリスマス予定なかったら 冬祭りへ一緒にいかない? 氷で作った作品だったり 特別にスケートリンクが設置されてるみたい」

主人公「うん!楽しみにしてる☆」

―――――

主人公のリビングに貼られてる日めくりカレンダー

12月24日

妹らしき手がペリッと破く

12月25日

氷で作ったお城などが立ち並ぶ

赤いマフラーと白いコートの主人公「うわー すごい☆」

お揃いの赤いマフラーと白いコートの主人公「あっちにスケートリンクがあるよ」

スケートリンク

両手を繋いで足をガクガクしてる主人公

微笑みながら手を握るダイちゃん

転ぶダイちゃん

驚いたあとニコニコする主人公

夜の帰り道

イルミネーションが立ち並ぶ道路を二人が歩く

主人公「今日は楽しかった☆」

少し先を歩く主人公の後ろからダイちゃんが「なあ」

振り向く主人公「ん?」

恥ずかしそうなダイちゃん「まだ言えてなかったんだけど その」

主人公を見つめるダイちゃん「好きだ ずっと好きだった」

驚く主人公

驚いた表情のまま主人公「私も 好き 大好き」

見つめ合う二人

雪が降り始める

ダイちゃん「雪」

空を見上げる二人

ダイちゃん「傘持ってきてなかった 風邪引かないようにね」

主人公「うん ダイちゃんもね」

手を振って別れる二人

帰宅玄関を開けるとサンタクロースの恰好をしたお父さんが大きな白い袋を持ってお風呂場の扉から出てくる

お父さんがニコっとして主人公を見る

交差点の赤信号

キキーキキキキキ

ドーン

ビルの窓から外の様子を覗く会社員

降り注ぐ雪の空

自室で12月25日の交換日記を書く主人公

窓の外を見ると雪が降り注いでいる

―――――

翌日の夜

ダイちゃんの自宅前で喪服姿の人たちが中へと入っていく

写真立てが電気に反射していて誰のものかわからない

カメラが写真立ての側から前を向く

呆然と立ちすくむ制服姿の主人公

後ろにいる大人たちの小声「即死だって 信号無視の車に  まあ お気の毒に」

野球部員たちが制服を着てドタドタと入ってくる

大人「しっ お静かに」

野球部員たちが大広間を覗く

床に崩れ落ちてる主人公の後ろ姿

それを見た野球部員たちは驚きの表情から涙へと変わる

[主人公の家]

夕飯を食べる家族 席に主人公の姿がなく心配そうに空席を見る母

お盆に夕飯を置いて主人公の部屋をノックする

返事はない

扉の外の床にお盆を置く

妹が主人公の扉を少し開けて無表情のまま中を見てる 電気は真っ暗

翌朝

お盆に朝食を持った母が主人公の扉の前に来る

昨夜の夕飯は一口も食べていない様子

昼間にカーテンを閉め切ったままの部屋

主人公がベッドにうずくまる

交換日記 12月29日

どうしたらいい

交換日記  1月2日

ご飯の味がしない

交換日記  1月5日

震えた字で  会いたいよ

―――――

3学期を迎えた校庭には雪が積もってる

授業中 黒板の文字をノートに写す生徒たち

主人公は両手を膝に置いたまま俯いている

休み時間

心配になって駆け付けた女友達が後ろから手を差し伸べて肩を触ろうとする

女友達は手を止める

触れないまま手を戻す

職員室

男性教師の声「はい そうですか わかりました」

―――――

ある日の教室

英語教師「●●先生が産休の間 クラスを受け持つことになりました 宜しくお願いします」

女子生徒が後ろの子にヒソヒソと「先生かっこよくない?」

後ろの生徒「でも結婚して子どもいるらしいよ」

体育の時間

校庭でランニングをする生徒たち

後ろで体育座りをして俯く主人公

自宅の夕食

夕飯を二口くらい食べただけの主人公

両親が心配そうに見つめる

妹は無表情で夕飯を食べてる

―――――

黒板に書かれた主語 述語などの文字

英語教師「ここはテストで必ず出るから覚えておくように」

黒板の字をノートに書き写す生徒たち

主人公は俯いたままノートに何も書いてない

それに気づく英語教師

英語教師「次回これの復習でミニテストしまーす」と皆に伝える

男子生徒「テストかよー」

女子生徒「えー」

英語教師「受験でも扱うからしっかり覚えてもらわないとねー」

次の英語の時間

英語教師「はい 今日は前回のミニテストをします ちゃんと覚えてくれたかなー?」

男子生徒「俺自信ないよー」

女子生徒「今のうちに見直しておこ」と言ってノートを見る

ミニテストの用紙が配られる

英語教師「先生も皆と一緒にやろうかな」と言って用紙を記入し始める

テストが始まって生徒たちが記入している

主人公は答えがわからず記入できない

英語教師「はい それではペンを置いて下さい 答え合わせしていきますね」

教室内を歩いて回る先生

英語教師「お しっかりできてるね 偉いぞー」と男子生徒を褒める

男子生徒「やったー!」

英語教師「ここはスペルを間違えやすいから気を付けて下さいねー」

主人公の席の横へ来る英語教師

ほとんど空白と間違った英語を書いてる主人公

英語教師自身も回答を書いていたテスト用紙をそっと主人公の机に置く

主人公がその用紙を見ると右下に《英語は楽しいぞー♪》という文字と英語教師の似顔絵がニコニコしてる

その日の夜

自室の勉強机で交換日記を書く主人公

交換日記1月18日

勉強に追いつけてない
頑張らないと

ある日の英語の時間

英語教師「この時間は体育館が開いてるから体育館で授業しまーす 大声で英語を叫ぶと覚えやすいんですよー」

女子生徒「えー恥ずかしい!」

英語教師「そう言うと思って一人ずつ体育館に来てもらいまーす 残った生徒たちはここで自習してて下さい」

男子生徒「自習ー!」

体育館で英語教師と二人きりになる主人公

主人公「ぁ あいむ ふぁいん せんきゅー」

英語教師「遠慮なく叫んでいいんだぞー」とニコニコしている

俯く主人公

英語教師「恥ずかしかったら先生と一緒に叫ぼうか 先生の声は大きいから主人公の声は聞こえないよ」

英語教師「いくよ せーのっ」

大声の英語教師「I’m fine thank you!!」

主人公「ぁ ァイム ファィン センキュー!!」

久しぶりに大声を出した主人公がハァハァと胸に手を当てて息を整える

英語教師がホッとした表情で見る

英語教師「先生はね 中学校のとき手のつけられない悪ガキだったんだ 先生たちのことなんて大嫌いだった きっと 先生たちも俺のことが嫌いだったんだと思う そうするとね 授業の内容が全然頭に入ってこないんだ まるで俺に向かって教えてくれていないような でもね 一人だけ何度も応援してくれる先生がいたんだ 俺はその人のことがだんだん好きになっていってね そしたら不思議なことに授業の内容がどんどん頭に入ってくるようになったんだ それが英語の先生だった」

主人公は俯いたまま

英語教師「先生は主人公に英語を教えるためにここにいる 信じていいんだぞ」

このとき初めて主人公と英語教師の目が合う

その日の夜

自室の机で交換日記を書いている主人公

2月2日
今日は体育館で大きな声を出した
すっきりした

I’m fine thank you.

      And you?

―――――

ある日の校庭

主人公がポニーテールで生徒たちと準備体操

主人公がハードルを飛び越える

体育の先生がストップウォッチを押してタイムを見る まあまあかなと頷く先生

図工の授業

主人公は部品パネルにハンダコテを使って集中している姿

音楽の授業

生徒たちと歌う主人公

自室の机で交換日記を書いている主人公

―――――

ある日の放課後

校門から出ようとする主人公は忘れ物したことを思い出す

誰もいない教室へ戻ってくる

机の引き出しから交換日記を取り出す

席へ座って日記のページを開く

教室の後ろのドアから廊下を透き通った姿のダイちゃんが走り去る

ダイちゃんの笑い声がして教室の前のドアを通り過ぎる

主人公は日記を見つめている

ダイちゃんの声「今日は休み時間に鬼ごっこした 野球は足が命だからな 特訓特訓♪」

カキーン

ワー

校庭から野球部員たちの声が聞こえる

ダイちゃんの声「監督の1000本ノックきつすぎ! 今夜はかつ丼3杯食べるぞー!」

教室の時計は16時52分

校内の見回りをしに来た英語教師が廊下の先から歩いてくる

教室で日記を読んでる主人公に気づく英語教師

何も言わず教室に入ってくる

主人公は日記に視線を向けたまま

カメラは校庭の空中から教室を映す

窓の奥の教室内で英語教師が両手を広げて何か話している

英語教師が右手を握ってグッと胸に当てている

カメラは教室内に戻り 真剣な眼差しの英語教師が主人公を見つめる

主人公は交換日記に大粒の涙を流す

涙が落ちるページには右と左のページの中央に相合傘の絵が描かれている

右と左にはそれぞれが相手の姿絵が描いていて 伸ばした手がページの真ん中で繋がるようになっている

英語教師は力の入った真剣な眼差しから筋肉を緩めて軽い微笑みを浮かべる

夜の自室

主人公は [宝物箱] と書かれた箱に交換日記をしまう

箱を押し入れに入れる

カメラは押し入れの中から主人公が扉を閉める姿を映す

扉が閉まって画面が真っ暗になる

―――――

ある日の休み時間

廊下で3人の女子生徒たちが談笑している中に主人公も混ざっていて微笑みを浮かべている

体育館でバドミントンをしながら汗を流す主人公

集中した表情で授業中にノートへとペンを進める

夜の自宅

夕飯を完食する主人公の姿を見てホッとした表情の両親

妹は無表情のまま食べ終わった食器をキッチンへ持っていく

ある日の放課後

剣道部の女友達が竹刀を持って廊下を通る

主人公は微笑みながら友達に手を振る

下駄箱で靴を履いて校門へと向かう

カキーン

校庭を向くと野球部が練習している

主人公は立ち止まって野球の練習を見る

一瞬顔に影がかかり暗い表情になる

顔を横にブンブン振る主人公

空を見上げる主人公

前を向いて校門まで走る後ろ姿

―――――

教室で担任の先生「明日から春休みです 新しく入る一年生にとって良い先輩になれるよう心掛けて下さいね」

放課後に教室を出る生徒たち「また同じクラスになれるといいねー」と談笑している

主人公はカバンに教科書と筆箱をしまう

男子生徒たち「お前の弟入ってくるんだろー よかったな」

男子生徒たち「えー 恥ずかしいだけだよ」

台所で食器を洗う母「春休みの宿題はないのー?」

リビングで妹とゲームする主人公「うん ないってー」

妹「宿題とは自分で作るものなのよ」

主人公「あっ 変なこと言うから落ちたじゃない」

妹「アクセル緩めてドリフトしないからでしょ」

春休み

家族で出かける車内

父の実家へ到着

玄関前でお爺ちゃんとお祖母ちゃんが迎えてくれる

古民家を走り回る妹

庭の井戸の中を恐る恐る覗く姉妹

井戸の屋根からカエルがジャンプしてきて驚く主人公

畑仕事を手伝う父と姉妹 母がおにぎりを差し入れに来る

深夜に妹から起こされる妹

一人でトイレに行けない妹に眠そうな顔で付いていく

少し開いたトイレの扉の前で主人公が眠そうに目を閉じてる

お寺の中でお坊さんがお経を読んでいる 足が痺れてプルプルしてる姉妹

先祖の墓の前で家族が手を合わせる

祖父母の玄関の外から中に声をかける近所の家族

大きな魚を持って玄関に来るおじさん

大広間で近所の人たちを含めた夕飯が始まる

縁側に座って庭を見る姉妹 後ろではお父さんとおじさんが酔いつぶれて寝てる

縁側から星空を見上げていると流れ星が流れて嬉しそうにする姉妹

朝 玄関で祖父母に見送られて車に乗る家族

―――――

新学期

校庭に咲く満開の桜

体育館で新入生たちが入学式をしている

教室では新しい座席表を見る生徒たち

がっかりする男子生徒もいれば手を握り合って喜ぶ女子生徒もいる

手を振って教室を出る生徒たち

廊下で2年1組と書かれた教室を見て中に入る主人公

自分の席へと座る

真新しい教室にワクワクした表情

続々と教室に生徒たちが入ってくる

主人公が右隣の生徒へ顔を向ける

主人公⦅ウワッ!⦆と驚く

隣には伸びた前髪で顔の見えない男子生徒がドヨーンとした姿で座っている

新しい担任の先生が教室へ入ってくる

担任の先生「今日からこのクラスを受け持つ●●です」

離れた席同士で嬉しそうに目を合わせてる女子生徒たち

緊張してる男子生徒

自宅の夕飯後 ホットプレートでクレープを焼く姉妹

掃き掃除をしてるお父さん

キッチンで食器洗いをするお母さん「新学期はどう?」

クレープを持つ主人公「私が班長することになったんだー」

お母さん「まあ 凄いじゃなーい」

クレープを食べる妹「大したことないけどね」

ムッとした視線で妹を見る主人公

―――――

ある日の図工の時間

四人組の班で木工作業する主人公

同じ班で席が隣の暗い男子 高羽 薫(タカバカオル)

木工を両端で支える二人の生徒 上の部分に杭を置いて両手で構える主人公は舌を横に出して集中してる

主人公「高羽くんはトンカチお願い」

高羽はスッと主人公にトンカチを差し出す

頭に汗マークの主人公「あ ありがとう」と自分でトンカチをカンカンする

テレビ台としても使えそうな長方形の箱が完成して喜ぶ生徒たち

図工の先生「持って帰るときは誰かに手伝ってもらって帰り道に気を付けて下さいねー」

ジャンケンして勝った生徒が喜ぶ

主人公「どうしようかー 高羽くんいる?」

高羽「いらない」

男子生徒「俺欲しい!」

女子生徒「えー 私も欲しい」

―――――

この日の女子生徒は体育館で跳び箱の授業

窓から校庭を覗く主人公

校庭では面白いポーズをしてる男子生徒と周りで笑う男子たち

輪に入らず離れた場所に立つ高羽

[班での掃除時間]

廊下を箒で履く主人公

高羽が黙々と窓を拭く

主人公「高羽くんはさ みんなと話したりしないの?」

高羽「…」黙って窓を拭く

主人公「仲良くしたら楽しいと思うんだけどなー」

高羽「そんなことしても意味ない」

主人公「部活は何してるの?」

高羽「帰宅部」

主人公「休みの日は?家族と出かけたりしてるの?」

高羽「捨てられたから」

主人公「えっ?」

高羽「ほっといてくれ!」と声を荒げる

高羽は廊下を歩き去る

トイレから箒を持って出てくる先生「あの子はね 産まれたときから施設で生活してるから 家族の話には敏感なのかも 気にしないであげて」

主人公は高羽が去って行く後ろ姿をじっと見つめる

施設に帰宅する高羽

茶髪の男子「おっ ネクラが帰ってきたぞー」

高羽は無視して通り過ぎていく

おさげ髪の女子「また無視されてるー」

茶髪の男子「うるせーなー!」と横目で女子を見て嫌そうな顔をする

茶髪の男子は真剣な顔で高羽の後ろ姿を見つめる

―――――

授業中

高羽が消しゴムを落とす

主人公がそれに気づいて拾ってあげようとする

高羽はスッ消しゴムを拾って授業に戻る

主人公は高羽を心配そうに見つめる

休み時間の廊下

男子生徒1「今度クラスの皆でカラオケ行こうぜ」

男子生徒2「いいねー」

男子生徒3「あいつも誘うの?」

教室で座ってる高羽を男子生徒たちが見る

男子生徒1「あいつは誘わなくていいよ」

男子生徒3「暗くなっちゃうもんなー(笑)」

主人公が男子生徒たちの会話を横目で見ながら教室に入る

[班での掃除時間]

裏庭の掃除をする主人公と高羽たち

紙屑を拾う主人公

紙屑にミミズがくっついて主人公の目玉が飛び出る

主人公「イヤァァァァ!」と紙屑を手放す

高羽が「フフッ」と笑った瞬間 風で前髪が揺れて目が見える

主人公「あっ 笑った」

高羽が紙屑を拾ってゴミ袋に入れる

主人公「高羽くん 今 笑ったよね」

再び前髪で目が見えない高羽が主人公を見る

主人公「高羽くんの笑った顔 すごく綺麗な目してた」

高羽はよくわからない様子で黙ったまま主人公を見てる

[施設へ帰宅する高羽]

荷物を運んでる館長「おかえりー」

高羽は小さな声で「ただいま」

茶髪の男子「ネクラは声が小せーなー!」

おさげの女子「あなたが大きすぎるのよ」

茶髪の男子がムッと横目で女子を見る

自室へと戻ってきた高羽

自室はベッドと等身大鏡と勉強机しかなく簡素で物がない

鏡の前であぐらをかき 自分の顔をじっと見てる

両手で目じりをクイッと下げるが髪の毛で目は見えない

口角をクイッと上げる

手を下して自分の顔を見つめる

髪の毛をグシャグシャっと掻く

―――――

[班での掃除時間]

主人公が水いっぱいのバケツを持ってアタフタしていると

高羽「持つよ」

主人公「あ ありがとう」

バケツを持って廊下を歩いていく高羽

主人公は人差し指を口の横に置いて高羽の後ろ姿をジーっと見てる

[図工の授業]

班で懐中電灯が完成して主人公がピカピカとスイッチをオンとオフに繰り返す

主人公「高羽くんは いらない?」

高羽「欲しい」

班の他の二人が珍しそうな表情で高羽を見る

主人公が他の二人を見ると二人は首を横に振る

主人公は懐中電灯を高羽に渡す

受け取った高羽は嬉しそうに口角を少し上げる

[班での掃除時間]

廊下で箒を履く主人公の後ろから

高羽「ねえ」

主人公が振り返る「ん?」

高羽「愛って知ってる?」

主人公「愛? 愛って あの愛?」

高羽「たぶんそう」

主人公「知ってるけど」

高羽「どんな感じ?」

主人公「どんな感じって聞かれても なんて言ったらいいんだろう」と考える様子

主人公「心が温かくなる感じかな」と微笑む

高羽「そうなんだ」

[施設の自室で宿題をする高羽]

ノートに文字を書く高羽の手が止まる

【掃除での思い出を回想】

箒を持って体育倉庫を開ける主人公

倉庫を開けると中から班の女子生徒が「ワァ」っと驚かす

主人公が両手を上げて驚く

別の日

主人公が箒を前に構えて恐る恐る体育倉庫を開ける

後ろから女子生徒が「ワァ」っと主人公の背中を叩いて驚かせる

主人公が「もう!」と女子生徒に拗ねた表情で怒っている

回想が終わり 高羽は自室の勉強机で宿題のノートを見てる

高羽「フフッ」と思い出し笑いをする

何かに気づいたように無表情になる高羽

高羽は左手を胸に当てて上を向く

―――――

月曜日の朝

教室に座ってる主人公が高羽の方を向く

主人公《誰!?》と驚く

そこには髪の毛をサッパリした男前の高羽が座ってる

主人公「高羽くん!?」

高羽が主人公の方を向く

主人公「髪切ったんだね! すごく似合ってるよ!」

高羽「そうかな」と恥ずかしそうに頬を人差し指でポリポリ掻く

休み時間の廊下

男女の生徒たち

男子1「日曜みんなでボーリングいかない?」

男子2「いいねー!」

女子1「高羽くんも誘ってよー!」とワクワクして言う

男子1「えー!」

後ろの扉から教室内を覗く男女の生徒 高羽が席に座ってる後ろ姿

女子1「誘わないなら私いかなーい」

女子2「私もいかなーい」

男子1「わかったよ誘うよー」

男子三人が高羽の後ろへ来る

女子2名は廊下からその様子をワクワクしながら見てる

男子1「高羽」

高羽が振り返る

男子1「今度の日曜みんなでボーリング行くけど高羽も行く?」

高羽「うん 行けるよ」

廊下で見てた女子2名が⦅やったー!⦆と嬉しそうにしてる

男子1「お前らも行ける?」と主人公の班に向かって聞く

班の女子「うん」

班の男子「オッケー」

主人公「じゃあ私も」

日曜日のボーリング場

ガコーン

ストライクを出す高羽

ガコーン

ストライクを出す高羽

ガコーン

ストライクを出す高羽

男子1「あいつ凄くね?」

女子生徒「高羽くんかっこいー!」

高羽は恥ずかしそうに微笑みながら右手を頭の後ろに当てて撫でてる

主人公が重たそうにボールを持って転がす

横に落ちてガーター

主人公「うう」と残念そうにする

高羽「主人公!」と呼ぶ

振り向く主人公

高羽が手招きしているので近寄る

高羽「こっちのほうがいいと思う」と軽いボールを渡す

受け取る主人公

ゆっくりと転がっていくボール

ガシャーンガシャーン

主人公がストライクを出してピョンピョン飛び跳ねる

女子「イエーイ」と両手でハイタッチ

高羽が片手を上げて主人公を見てる

主人公が頬を赤くしながら高羽をタッチ

ボーリング場から出てくる生徒たち

男子2「楽しかったな」

女子2「また行こー」

男子3「俺こっちだから」

女子1「ばいばーい!」

―――――

校庭でサッカーの授業をする男子生徒

男子生徒が高羽へパスを送る

高羽がゴールへシュートを決める

男子1「ナイスシュート!」と握りこぶしを高羽へ差し出す

高羽が微笑みながら握りこぶしを出してこぶし同士をくっつける

―――――

体育館の舞台で合唱練習する主人公のクラス

高羽が指揮者をする

女子生徒がピアノを演奏してる

演奏が終わって高羽が後ろを向く

生徒たちがお辞儀する

音楽の先生が体育館の中央から見ていて微笑みながらウンウンと頷く

―――――

班での掃除時間

廊下掃除をする主人公

高羽が箒を持って前から現れる

高羽「聞いてほしい」

主人公「どうしたの?」

高羽「俺 海外留学することにしたんだ」

主人公「どうしたの急に」と驚く

高羽「主人公のおかげでたくさんの人に会ってみたくなった ありがとう」と微笑む

[高羽の施設]

施設の館長が高羽に通帳を渡す

館長「あなたの両親から嘘をついてほしいと頼まれていたんだけど 実はね 両親はあなたを捨てたわけではないの」

高羽は館長を黙って見つめる

館長「あなたを妊娠中に両親は新しいウィルスの感染症を患ってね まだ研究が進んでなかったから治療方法もなかったの 幸いあなたに症状はなかったけれど もし遺伝していて将来発症でもしたら そんな不安の中で生きていくのは辛いだろうから 私たちはあなたを捨てた悪い親だったと嘘をついてください そう頼まれていたの」

高羽「そうだったんですか」

通帳を両手で握りしめお腹に当てる高羽

高羽「大丈夫です 今までお世話になりました」と深々とお辞儀する

ある日の教室

黒板の前に立つ高羽と担任の先生

生徒たちにお辞儀する高羽

拍手する生徒たち

主人公は寂しそうな目をしながらも口角を上げて拍手する

―――――

[高羽の施設]

トランクをガラガラと押しながら玄関へ向かう高羽

茶髪の男子「ネクラー もう帰ってくるなよ!」

高羽「うるせー 元気でな」と後ろ向きのまま片手を振る

施設を出て行った高羽

おさげの女子「あんな言い方しなくても良かったんじゃないのー?」

茶髪の男子が出口の方を見ながら「あいつは夢を見つけたんだ 途中で諦めて こんなところに戻ってきてほしくないだろ」

おさげの女子「へ~ あんたってほんと照れ屋さんだよね~」

茶髪の男子「う うるせー!」と恥ずかしそうにする

おさげの女子「フフッ」と笑う

―――――

パソコン室で部活をしている主人公

先生からエクセルを教えてもらっている

試行錯誤した表情の主人公

先生がクラスから出ていくと主人公たちはカードゲームの画面に切り替える

先生がすぐに戻ってくると無表情で画面をエクセルに戻して作業する主人公たち

主人公の家のリビングの壁

【私の可愛さ年表】と書いてある右肩上がりのグラフ表が張られている

お母さん「わー凄いわねー」と手をパチパチ叩いてる

お父さん「事務に就職できるなー」と感心して頷いてる

主人公は腰に手を当て 鼻の穴を大きく広げてフンッフンッと自慢げに目を閉じてる

―――――

校庭のセミの声「ミーン ミンミン ミー」

プールで水泳をする主人公と女子生徒たち

男子生徒たちは体育館で暑さにバテて手で顔を仰ぐ

夏服の制服で授業をする主人公

男子生徒は下敷きをうちわ代わりにして顔を仰ぐ

図書室のクーラー

図書室は満員

教室で担任の先生「もうすぐ夏休みに入ります 皆さん水分補給を欠かさず夏バテに気を付けて過ごして下さいね」

主人公が自宅へ帰ってくるとポストに郵便が入っていることに気づく

主人公⦅外国の手紙だ⦆

手紙の裏を見る

主人公⦅高羽くんからだ!⦆

自室の机の椅子に座って手紙を読む

[高羽からの手紙]

おかげさまで元気にやってます

ホームステイ先の両親がとても気さくな人で 夏休みに友達を招待したらどうかと聞いてくれました

もしよければ航空券を送るのでお電話下さい

同封されていた写真には綺麗な景色と笑顔でピースする高羽とホームステイ先の両親が笑顔で映っている

主人公⦅元気そうでよかった⦆と写真を見ながら微笑む

主人公⦅でも外国かー 大丈夫かな⦆と上を見上げて心配そうな表情を浮かべる

家族で夕飯を食べる主人公

お母さん「せっかくの機会だし行ってきたら?」

お父さん「それならパスポート作らないとな」

主人公「お父さんとお母さんが賛成してくれるなら行ってこようかな」

妹「私もパスポート作るー」

主人公「あなたはいらないでしょ」

妹「身分を証明する公的書類が欲しいの」

頭に汗マークの主人公「そうですか」

ある日のパスポート発行会場

カメラマン「それでは撮りまーす」

緊張しながら写真を撮ってもらう主人公

[自宅]

一階から呼ぶお母さん「主人公ー お手紙きたわよ」

一階へ降りていく主人公

お母さんから外国の手紙を受け取る

中を開けると航空券が入っている

主人公「わあ☆」と嬉しそうにする

ある日のパスポート発行会場

受付でパスポートを受け取る主人公

パスポートの写真は緊張でしかめっ面をした主人公

主人公「うーん」と納得いかない表情

妹の持ってるパスポートを覗く

いつも以上に綺麗な顔でニコっとしてる妹の写真

主人公「うーん」と納得いかない表情

自宅の自室

海外旅行の参考書で持ち物リストを読む主人公

トランクに服や備品を詰める

トランクいっぱいに荷物を詰め込んだあと「フゥ」と一息つく主人公

妹がトランクの中身の服をごっそりと取り出す

服を入れていたはずの場所に紙を一枚置く

【お土産 クッキー グミ ポテトチップス 現地の特産物 シャンプー トリートメント 石鹸 香水 外国芸能人のブロマイド写真 部屋に飾る置物】

と紙に書いてある

後ろ姿の主人公「せめて二つまでにしなさい」

―――――

空港で飛行機が滑走路を走る

別の飛行機が飛び立っている

主人公、妹、お母さんが空港内へ到着する

主人公「天井高いねー」と天井を見上げる

お母さんのスマートフォンを主人公に渡す

お母さん「何かあったら家かお父さんに電話するのよ」

主人公「うん☆」

手を振って別れる主人公

妹が手を振りながら「クッキーと香水ねー!」

トランクを預けて空港内を進んでいく主人公

[免税店]

主人公⦅妹が言ってたのってここかー⦆

高級ブランドのバッグや香水が並ぶお店を見て回る

香水5900円

主人公⦅安い のか…?⦆

ペットボトルの水を買ってポーチにしまう主人公

ベンチに座ってスマートフォンの説明書を読む

搭乗口へと進んでいく

航空券を見ながら窓際の席へと座りドキドキした表情

飛行機が飛び立つ瞬間 体がフワっとした感覚になり驚く

乗務員が機内食を案内する

主人公「フィッシュプリーズ!」

美味しそうに機内食を食べる主人公

イヤホンを耳に付けて前席の後部に設置してあるモニターで映画を見る

アイマスクを付けてタオルケットを肩までかけて寝入る主人公

窓の外を見て空港に着陸する飛行機

空港へ到着してグーっと背伸びする

ベルトコンベアから流れてくるトランクを手に取り出口へと向かう

高羽「おーい!」

主人公が高羽に気づいて手を振る

主人公「久しぶり!」

高羽「久しぶりだね 元気そうでよかった」

高羽「タクシーで一時間くらいの田舎町なんだけど お腹は空いてない?」

主人公「機内食食べたから大丈夫☆」

タクシーで移動する二人

車内の主人公「わー!」と周りの景色を見て興奮する

タクシーを降りると高羽に先導してもらいホームステイ先の玄関に到着する

主人公「牛の声が聞こえたけど牛がいるの?」

高羽「裏に5頭いるよ」

主人公「へえー!」

玄関へと迎えに来るホームステイ先の両親

母が主人公にハグをする

英語で自己紹介をする主人公

二階から降りてくる同年代の外国人が主人公を一目見て目を輝かせる

外国人「ウツクシイ スキ ケッコン マジヤベエッテ!」と片言の日本語を話す

日本語を教えたのは高羽らしく時折おかしな言葉使いをする

英語で聞き取れないところもある中 名前がマイケルということだけはわかった主人公

主人公が宿泊する二階の部屋へと母に案内される

廊下を歩くときにマイケルの部屋の扉が開いていて中を見ると筋トレマシーンがたくさん並んでいる

宿泊する部屋に入って荷物を整理する

ドアをノックする高羽

主人公が扉を開ける

高羽「このイヤホンマイク使うといいよ」と手渡される

高羽「マイクに向かって話すとスマホが翻訳して読み上げてくれるんだ」

主人公「へー!すごい!」

高羽「翻訳アプリダウンロードするからスマホ借りていい?」

翻訳アプリを設定してもらう

高羽「これであとは話すだけ そろそろ夕飯だしリビング行こうか」

全員イヤホンマイクを片耳に付けて楽しそうに食事する光景

その後 パジャマ姿で肩にタオルをかけた主人公が自室へと戻ってくる

隣の部屋から筋トレ中のマイケルが「ワン ツー スリー フォー ファイブ」と叫んでる声が聞こえる

部屋の電気を消す主人公

隣の部屋のマイケルの声「セブンハンドレッドワン セブンハンドレッドツー セブンハンドレッドスリー」

頭に汗マークの主人公《長くない?》

―――――

翌朝

家の裏には広い牧場と牛5頭 馬2頭 隣にはトウモロコシ畑が広がる 格闘技のリングも設置されている

母に案内してもらって家畜飼育を手伝う主人公

父が茹でたトウモロコシを差し入れに来る

ベンチで美味しそうにトウモロコシを食べる主人公と両親

スポーツバイクでフルフェイスのマイケルが帰宅する

マイケルがイヤホンマイクを耳に付けて話しかける

主人公も耳にイヤホンマイクを付けてスマホを触る

マイケル「馬に跨ってみない?」

主人公「うん☆」

ぎこちなく馬に跨る主人公

マイケル「足全体を馬にしっかり付けて力を内側へ向けるんだ」

ギューっと両足の力を内側へと向ける主人公

馬がブルブルと体を振る

驚いた主人公の手が手綱を離す

マイケル「足を締めていれば両手を離していても大丈夫だよ」と微笑む

マイケルが主人公の後ろに座って手綱を取る

駆け足で牧場を走る馬 主人公は笑顔で手綱を握っている

馬を降りる二人

主人公「どうしてあそこにリングがあるの?」

マイケル「総合格闘技が好きなんだ 今度試合があるけど主人公も出場する?」

主人公「やったことないからできないよ」と両手をクロスさせて断る

マイケル「女子アマチュアは初めての人が多いしヘッドギアと大きなグローブを付けるから大丈夫だよ 負けても良い経験になると思う」

主人公「うーん 考えておくね」とリングを見つめる

―――――

父の運転する車で一家全員 高羽 主人公が観光名所を巡る

特産物を食べたり異国情緒を堪能する

翌朝

黒ぶち眼鏡をかけたマイケルとリュックを背負った高羽が玄関から出ていく

バイクに二人乗りして学校へと向かう

主人公が二階の窓から手を振って見送る

父とトウモロコシ畑の収穫を手伝う主人公

馬が近寄ってきて顔を撫でる主人公

馬に顔を舐められてくすぐったがる

夕暮れ時

二人乗りのバイクが帰ってくる

玄関に入ってきた二人に駆け寄る主人公「おかえりなさい☆」

高羽「ただいま☆」

マイケル「タダイマ☆」

高羽「今夜スクールの生徒たちが集まってパーティするんだけど一緒にどう?」

主人公「私も行っていいの?」

高羽「家族を呼ぶ人たちもいるし大丈夫だよ」

大きな家の庭に設置されたプールへ集まる人たち

父の車から降りる三人

マイケルが主人公を友人たちに紹介する

主人公は緊張しながらお辞儀する

お辞儀の仕草を物珍しく見てる男の子が驚いた表情のあと主人公にお辞儀する

この日はプールでディナーを過ごす

スタイルの良い女性がマイケルの肩に手を当てて親しげに話しかける

主人公はその女性を足元から頭までじっと見る

主人公⦅わぁお⦆

夜の自室

パジャマ姿で部屋へと戻ってくる主人公

鏡の前の自分を見る

モデルポーズをしてみる

主人公⦅うーん⦆とイマイチな表情

電気を消してベッドに入る

マイケルの部屋からベンチプレスを持ち上げてる音

「ウーン!」ガチャーン!

「ウーン!」ガチャーン!

壁を向く主人公⦅相変わらず凄いわね⦆

掛布団をめくって腹筋を何度か繰り返す主人公

主人公「ハァ」

パタンと寝転がって疲れた表情

翌朝

主人公⦅あれだけで筋肉痛とは⦆ 痛そうな顔でお腹を撫でる

キッチンにいるマイケルがプロテインドリンクを飲んでいる

マイケル「おはよう 主人公も飲むかい?」とコップを向ける

主人公「おはよう 一杯貰おうかな」

大きなプロテインの袋から粉を入れて蓋したカップをシェイクするマイケル

主人公が受け取って飲む⦅すごい味だ⦆

主人公「昨日の女性みたいにカッコいいプロポーションになりたいんだけどどうしたらいいかな?」

マイケル「それなら俺に任せてよ」

庭のリングへ案内される

パイプ椅子に座った主人公の頭にヘッドギアを被せるマイケル

ヘッドギアの頭頂後部に紐を結ぶ

マイケル紐を上に引っ張る

上に引っ張られたので立ち上がる主人公

更に上に引っ張るマイケル

主人公の足は背伸びする

マイケル「上に頭を引っ張られる感覚 これを常に意識して立つんだ」

主人公が上に視線を向けて「ふむふむ」と感覚を覚える

主人公「筋肉を太くしたくはないんだけどどうしたらいい?」

マイケル「体幹を鍛えるようにすればいいよ」

主人公「体幹?」

靴を脱いでリングに上がる二人

マイケル「逆立ちはできる?」

主人公「壁に足をかけるのならできるよ」

マイケル「足を支えるからやってみて」

主人公が逆立ちをしてマイケルが両足を持つ

マイケル「深呼吸しながら首を色んな方向に向かせてみて」

逆立ちした状態で首を動かす主人公⦅うう きつい⦆

マイケル「腕を曲げて頭頂部を床に付けてみて」

腕を曲げて頭頂部を床に付ける主人公

マイケルが横に移動してそっと両足を床に戻す

マイケル「しばらくオデコを床に付けたまま休んで」

土下座のポーズで休む主人公

マイケル「朝起きたときと寝る前に60秒壁に向かって逆立ちするといいよ」

主人公「そのくらいなら続けられそう」

マイケル「それと家を歩くときは常に爪先立ちで歩くんだ」

主人公「それは続かなそう」

パジャマ姿と爪先立ちで自室に戻ってくる主人公

主人公「ふぅ」と息を吐いて踵を床に下す

鏡で自分の姿を見る

主人公⦅あれ?ちょっと姿勢良くなったかも⦆と横を向き鏡を眺める

翌朝

キッチンへと向かう主人公

主人公⦅筋肉痛が止まらない⦆ 痛そうに首の後ろを撫でている

キッチンにはプロテインの袋に【Free】と書かれた紙が貼ってある

主人公がカップに粉を入れてシェイクしたプロテインを飲み干す

主人公「ふぅ」

マイケルがキッチンへと現れる「おはよう☆」

主人公「おはよう☆」と爪先立ちをする

マイケル「筋肉痛は大丈夫?」

主人公「全身が痛いよ」と痛そうにお腹を撫でる

マイケル「ハハハ 体幹が鍛えられてる証拠だよ」

マイケルがプロテインをシェイクして飲んでいる 主人公の方を向いていないときは踵を床に付けてる主人公

振り返るマイケル 爪先立ちをする主人公

マイケル「今日はスクールが休みだから一緒にトレーニングしない?」

主人公「うん ほどほどにね」

主人公が壁に頭と背中と踵をピッタリくっつける姿

マイケル「お腹の力も全部壁のほうへ向けるんだ」

主人公⦅地味だけどかなりきつい⦆と辛そうな表情

家を出てリングの上に招かれる

マイケル「これから総合格闘技エクササイズを始めるよ」

主人公「はい先生」とリングの上で正座している

マイケルとリングの上で仰向けになる

仰向けになった状態で腰を浮かせて両足を頭の上に移動させる そのまま色んな方向に足を動かす二人

でんぐり返しをする二人

次に後ろ向きにでんぐり返し

うつ伏せから上半身だけを起こし ラッコのようなポーズで前に移動する二人

でんでん太鼓のように両腕を前と後ろに振る 腕の高さを変えて両腕を振る

リングをスキップしてぐるぐる回る二人

体を何度も回転させたあと目を回して座り込む主人公

ミットを構えるマイケル

グローブをはめる主人公

ミットにパンチする主人公

マイケル「パンチしたあとの手をミットに当てたままグッと押し続けて」

ぐぐっとミットに手を押し続ける主人公 マイケルはミットを前に押し返す動作

主人公の前足が前方を向いて前膝が下がる

マイケル「このときの重心のかかり方を覚えてね 頭は前に出さずに首を真っすぐ 頭も上に引っ張られてるイメージ」

マイケルのお腹にミドルキックした足をマイケルが抱える

マイケル「後ろ足を爪先立ちして蹴ってる足を俺のお腹に押し当てるんだ このまま片足で何度かスキップしてみて」

地面に付いてる片足をスキップさせる主人公

マイケルが抱えていた主人公の足を離す

ミットを構えるマイケル

左足だけでスキップして両足が地面に付いた瞬間 後ろ足が地面を踏ん張りキックを繰り出す主人公 キックを出すとき左手をでんでん太鼓の要領で後ろに振る

マイケル「インパークト!」と大声を出してミットでキックを受ける

[リビングでのディナー]

高羽「格闘技の練習を始めたんだって?」

主人公「うん エクササイズだけどね」と体が痛そうな表情

高羽「月末のトーナメントで優勝するって張り切ってるからね」

二人がマイケルのほうを向くと骨付き肉を美味しそうに食べている

マイケル「賞金1万ドル」とニコニコしてる

主人公が指で数字を数える「10万 100万 100万円!?」と驚く

マイケル「主人公もアマチュア試合に参加しようよ」

主人公「えー」

高羽「主人公は気が強いから勝てるかもね」

賑やかにディナーを過ごす

自室

机に片肘ついて顔に手を当てるパジャマ姿の主人公

視線を上に向けて妄想する

【部活で柔道をする男子生徒】

【部活で空手をする女子生徒】

主人公⦅かっこいいなー⦆

後方の壁の向こうからマイケルの声「ウーン!」ガシャーン とベンチプレスを持ち上げてる音

主人公⦅護身術くらい使えてもいいかもね⦆

マイケルの声「ウーン!」ガシャーン

―――――

近所の個人商店でクッキーを手に取る主人公

レジへ進むと店主がメジャーリーグを観戦してる

店主「ウォー!」と喜んでる

テレビ画面を見る主人公

紙袋を両手で抱きながら歩いて帰る

母が食卓テーブルを布きんで拭いている

キッチンで溶き卵とパン粉を付けたエビをフライパンの油へ入れる

テーブルに天ぷら 味噌汁 サラダ ご飯

天ぷらのお皿には大根おろしで雪だるまを作って海苔で目と口を作っている

皆が食卓に座って「ワオ!」と嬉しそう

美味しそうに食べる皆

高羽「主人公は良い奥さんになるね」

マイケル「ケッコン!」

主人公「フフッ」

―――――

飼育小屋から牛の手綱を掴んで出てくる主人公

マイケルがリングの上でシャドーボクシングしている姿を見つける

リングの前に牛と一緒に立つ主人公「頑張ってるね☆」

マイケルがリングの隅に置いてるカバンからスマホとマイクイヤホンを取り出して耳にイヤホンをかける

マイケル「賞金貰ったら親孝行してあげたくて」と微笑む

主人公「その気持ちを伝えるだけで親孝行になるよ」と微笑む

マイケルが何かを考えた表情のあと照れくさそうにする

主人公「私も女子アマチュア試合出ていいかな」

マイケル「もちろん!俺がセコンドするから任せてよ」

夜の自室

椅子に座って腕を組む主人公⦅とは言ったものの⦆と考え込む

スマホで女子格闘技の動画を見る

ヘッドギア越しにパンチされる女子

主人公⦅うわ⦆

スマホの検索画面

[格闘技 どのくらい痛い]と入力する

[試合中はアドレナリンが出てるので痛みはあまり感じません]というブログ記事

主人公⦅ほんとかなぁ⦆と心配そう

―――――

主人公とマイケルがバイクを二人乗りしてお店の前に到着する

格闘技グッズを扱う店内

ドキドキしながら店内を見回す主人公

ピンク色のグローブを手にはめてみる

マイケルが派手な模様をしたムエタイパンツを見せにくる

後ろ姿の主人公が首を横に振る

マイケルが地味な模様をしたムエタイパンツを見せにくる

後ろ姿の主人公が首を横にかしげる

マイケルが普通の模様をしたムエタイパンツを見せにくる

後ろ姿の主人公が数秒眺めたあと頷く

レジの机に品物を並べる

グローブ ムエタイパンツ ヘッドギア マウスピース ファールカップ 脛当てレガース バンテージ

主人公⦅思ったよりたくさんあるのね⦆と品物を見る

リュックから脛当てレガースがはみ出しつつバイクに二人乗りで帰宅する

家でのディナー

巨大な骨付き肉を食べる主人公

高羽⦅本気だ⦆

爪先立ちで歩きながら部屋に戻ってくる主人公

壁に向かって逆立ちをする

夜空が映る

牛の鳴き声「ンモー!」

―――――

リングのコーナーにある背もたれを抱き締めて肘をギュっと内側に締め付ける主人公 左右に振る 手前に引く 押す

抱きしめたままその場でスキップを繰り返す

スキップして着地した瞬間 膝をコーナーに当ててグッグッと押し込む

縄跳びをする二人

息を切らせて休憩する主人公のもとに母が飲み物を差し入れしに来る

マイケルがサンドバックを構えて主人公がキックする「エイッ!」

マイケル「もっと声を出して」

主人公「エイッ!!」

マイケルが主人公の顔めがけてミットでフックする

膝を下げて頭を前に下す

マイケル「膝蹴りが来るよー」

マイケルがもう一度ミットでフックする

主人公が顔を後ろに引いて避ける

ミドルキックする主人公

マイケル「パンチ来るよー」

再度ミドルキックを当てるとき右手をマイケルの顔の前に突き出す

主人公の腰裏に両手を回してタックルしてくるマイケル

マイケルの体に両手を回して爪先立ちで両足をピョンピョン後ろに下がって転ばないように後ろへ下がる

マイケルの片足を持ち上げて押し倒す

転んだマイケルが立っている主人公の腰に両足を絡める 主人公の片手を掴んで両足を首に絡めた三角絞めを繰り出す

苦しそうな主人公がマイケルの腕を叩いてタップする

二人がリングに仰向けになり腰を浮かせてブリッジのポーズをする

マイケルが観客席にいる観客をイメージして両手を振りながらリングを回る

マイクパフォーマンスの練習をしたあと四方に投げキッスする

頭に汗マークを垂らした主人公が肩にタオルをかけてリングの外から拍手してる後ろ姿

―――――

リビングのパソコンデスク

格闘技サイトに名前を記入してエントリーする二人

プリンターから出てきた用紙にサインして封筒にしまう

二人乗りのバイクがポストの横に止まって封筒をポストインするマイケル

大聖堂の椅子に座って祈りを捧げる二人

―――――

自宅ディナー

高羽「いよいよ明日だね」

主人公「緊張してきた」

高羽「応援に行きたいけど明日は予定があってさ」

主人公「全力は尽くすつもり」と不安そうにコーンスープにパンを浸してる

マイケルはプロテインを飲み干す

電気の消えた主人公の部屋

窓を開けて星空を見上げながら両手を組む

主人公「どうか無事でありますように」

夜空にお母さんの幻影が映り 胸の高さまで上げた右手をガッツポーズさせてる

次にお父さんの幻影が映り 両手を胸の高さまで上げてガッツポーズさせてる

次に妹の幻影が映り 胸の高さまで上げた右手に香水を持ち 左手にクッキーを持ってる

頭に汗マークを垂らす主人公⦅わかってるわよ⦆

―――――

試合当日

会館の前にお父さんの車が止まる

マイケルと主人公は体重測定をしたあと会場内の控えスペースでセコンド役のお父さんと待機

お母さんは観客席でパンフレットを読んでいる

主人公⦅強そうな人ばっかり⦆

英語アナウンス「間もなく男子トーナメントが開始します」

ウォーミングアップするマイケル

お父さんに案内されて主人公とお母さんは赤コーナーセコンドに立つ

マイケルと相手選手が入場しリング中央でレフリーから説明を受ける

レフリー「ファイト」

相手選手のパンチ連打がマイケルに向かう

マイケルは顔を後ろへ反らして下がる

相手選手の右ストレートをパシっと内側に向けてパッシングする

相手選手の右腕が内側に飛ばされたため右顔面に大きな隙ができる

マイケルが左ハイキックで顔面を狙うが相手がしゃがんだため当たらない

ハイキックをはずしてバランスを崩しているところに相手のタックルが襲う

馬乗りにされて顔面を連打される

お父さん「マイケル!」

お母さん「ハアア」と口に両手を抑えて心配そう

主人公「あれ!あれ!」と技名がわからないのであれと叫ぶ

仰向けのマイケルが相手の右手を掴んで両足を首のほうへ絡める

三角絞めが決まり相手選手がマイケルの足をタップしてレフリーストップ

アナウンス「勝者 赤」

観客から拍手が送られ セコンドの三人もホッとした表情

二回戦

レフリー「ファイト」

ジャブと前蹴りでけん制しつつ両者とも相手前足の外側へと周りこもうとグルグル回る

相手の前足がマイケルの爪先を踏む 動きが止まって重心がズレるマイケル

相手はすかさずタックルしに来る

タックルしに来た相手に首に腕を回してフロントチョークするマイケル

しかし相手が両肩を上げて顎を引いてるので上手くきまらない

フロントチョークした状態で仰向けに倒される

主人公「あれ!あれ!」と三角締めを促す

しかしマイケルの左足は相手の腰に回すことができず踏まれている 右足だけを相手の腰へと回しバランスを崩しにかかる

マウントを取りながら相手はフロントチョークの腕を外そうともがく

マイケルは右足を相手のお腹に当てて踏み飛ばすように突き飛ばす

突き飛ばされた相手とマイケルが再び立つ

相手が来い来いと手を招いて挑発する

マイケル「ハハッ」と笑いかっこいいポーズを決める

両者の挑発で会場からフー!と熱狂の声がする

マイケルがタックルの構えで腰を落としながら駆ける

相手はタックルが来ると思い腰を沈めて片足を後ろに下げてる

駆けたマイケルは相手へと向かわず斜めに走った

相手はマイケルが横を通り過ぎて行ったので腰を沈めたまま顔を横に向ける

マイケルはコーナー角のロープに向かってジャンプ

下から二番目のロープを前足で踏み 体を相手に向けてロープの反動で更に空中へとジャンプする

マイケルは折りたたんだ膝を下へ突き落すように相手の顔面目掛けて振り落とす

相手選手は倒れてノックアウト

会場から「ワーオ!」と驚きの声 セコンド三人も驚いた顔

アナウンス「勝者赤」

決勝戦

主人公たちがドキドキして見守る

相手はカポエラダンスをして体を左右に振る構え

体を回転させながらの攻撃がマイケルを襲う

ガードして前蹴りで距離を取る

相手の回転で腕が振り子のようにフックしてくる しかしそれは囮の攻撃でマイケルがパンチのガードに意識を向けていると ニヤっと笑う相手が強烈なローキックする

足がガクっとするマイケルの前足内側を更にインローが襲う

立ち技が辛くなってきたマイケルは寝技に移行するためタックルの構え

タックルに向かうマイケルだが 相手は待っていたかのように飛び膝蹴りを繰り出しマイケルの顎を直撃する

脳震盪で視界がぼやけるマイケル

お父さん「マイケル!」

お母さんはハンカチを強く握る

主人公は心配そうに見つめる

視界がぼやけていて見えないマイケルは相手に大振りのミドルキックを繰り出す

相手は後ろへ一歩下がって回転しながら避ける そのまま回転 回し蹴り上段

マイケルはミドルキックを空振りした勢いを使って軸足による回転 回し蹴り上段を繰り出す

両者の足がクロスしてぶつかり合う

相手は回転しながらバックステップして下がり 側転して倒立した状態から床についた両手をバネのように跳ねらせて顔面に蹴りを繰り出す

マイケルは腕をクロスさせてガード

ここで1ラウンド終了

意識朦朧と椅子に座るマイケルの顔をお母さんがハンカチで拭く

主人公「マイケル」と心配そうに声をかける

お父さん「距離を取らせるな 組付け」と指示する

ぼやけた視界が戻ってくるマイケル

2ラウンド開始

ブレイクダンスで翻弄してくる相手

距離を詰めることができないマイケルは片足を上げて蹴りをガード

相手が回転して後ろを向いた瞬間 マイケルは斜め前にステップして近寄る

相手のバックブローをダッキングで回避して首相撲を組む

首を下に向けられた相手が大振りのフックを浴びせる

マイケルが肩を上げてフックの威力をブロックする

首相撲からの膝蹴りを相手のお腹へ繰り出す

相手が怯んだ隙に首相撲のまま後ろに下がって後ろに連れて行く

相手は首が下がったまま前方へ重心を移動させて歩く

マイケルは相手の斜め後ろへステップして裏に回り込む

首相撲していた腕を相手の首元に移してバックチョークする

しかし相手の片腕がバックチョークの中に入ってきたため決まらない

相手がジャンプしてバク中したことによりマイケルはバックチョークの構えのまま空中一回転して後ろに吹き飛ばされる

マイケルが相手に向かって走りながらジャンプする

相手は飛び膝蹴りが来ると思って膝を見つめながら重心を落として構える

相手が重心を落としたことによって前足の膝が少し前に出ている

マイケルは相手の前足の膝に足を乗せて更に高くジャンプ

相手は自分の前足の膝を踏み台にされたことによってバランスを崩す

空中でマイケルが肘を縦に 頭上へと降り落とす

相手はフラフラと仰向けに倒れて試合終了

アナウンス「優勝マイケル!」

セコンド三人が両手を上げて喜ぶ

観客からワー!っと声援と拍手が贈られる

トロフィーと賞金手形を受け取りお父さんに渡す

マイクを持って話しながら会場に手を振るマイケル

四方を回って両手で観客席に投げキッスしていく

主人公はリング上でマイケルの後ろ姿を眺めながらニコニコ拍手

―――――

ヘッドギアをかぶった主人公

主人公⦅ふっふっふ 相手が悪かったわね⦆と虚勢を張りながらシャドーボクシングする

遠くにいる対戦者がミットを持ったセコンドにミドルキックしている 強烈な炸裂音

主人公の虚勢が崩れて不安げな後ろ姿

お父さん「女子アマチュアは1戦のみだから全力で頑張って!」

マイケル「日頃の練習通りやれば大丈夫さ」

お母さん「応援してるわよ」

リング中央でレフリーに説明を受ける主人公と相手

レフリー「ファイト!」

主人公⦅先手必勝 先手必勝⦆

ジャブでけん制する主人公

相手がストレートを繰り出す仕草が目に入り両手をクロスさせてガードする

しかしストレートはフェイントで強烈なローキックを受ける

主人公⦅うおおおお⦆

痛くてローキックを受けた前足が少し浮く

相手のハイキックが顔に向かって飛んでくる

主人公は右肘を前に向けてブロック

続いて先ほどと同じ足にローキックを受ける

主人公が蹴られた足に視線を向けてる隙に再度ハイキックが来る

右肘を前に出してブロック しかし相手の狙いは顔ではなくブロックしている主人公の右腕

痛みで右腕の構えが下がる

相手のジャブが顔に当たる 次に来るストレートを左手でブロックする

右の顎にフックが当たり顔と上半身が左に揺れる

密着に近い接近戦

【主人公の自宅リビングでの回想】

冷蔵庫から大きな鍋を取り出す主人公

右手の甲で冷蔵庫を閉める

お母さん「閉まってないわよー」

主人公が冷蔵庫を見ると扉が閉まっていなくて全開に開いてる

両手が鍋で塞がってる主人公は背中の右肩甲骨の辺りでグッグッと扉を押して閉める

【回想が終わり試合に戻る】

相手の右フックで上半身が左に向いてる主人公はここで中国拳法の鉄山靠(てつざんこう)という技に似た攻撃を行う

背中でタックルされた相手は至近距離でありながら後ろへ軽く吹っ飛ぶ

ハイキックをブロックした右腕とローキックで受けた前足が震えている

痛そうに目を閉じてる主人公

【主人公の自宅お風呂場での回想】

湯気の出た湯舟に爪先を浸ける主人公

主人公「あつっ」と爪先を上に戻す

決心したような表情

思い切り片足を熱い湯舟に入れる

目を閉じて熱そう

気合を入れた表情で全身を湯舟に浸ける

【回想が終わり試合に戻る】

熱いお風呂に全身を浸けたときと同じ表情になり体から湯気が出る主人公

相手が前進してくる

主人公が相手の前足の膝小僧を足で押して移動を止める

主人公のストレート 相手は顔を横に傾けて回避

ストレートが空振りしたまま前方にバランスを崩す

相手が右フックを打つ構えをする

主人公のストレートが空振りした手は相手の頭の後ろにある

主人公は右手を引き戻さず相手の首は絡みつけて首相撲を展開する

【幼少期の遊園地での回想】

帰りたくなさそうに電柱に抱き着く主人公

お母さんが色んな方向に引っ張るが電柱を離さない

【回想が終わり試合に戻る】

首相撲する主人公は相手の体を振ってバランスを崩させる

バランスを崩した相手の腹部に膝蹴りをする主人公

もう一度膝蹴りを繰り出す主人公の膝を相手がキャッチし 軸足を足払いされる

首相撲中の主人公が転びそうになる

【幼少期の遊園地での回想】

遊園地の電柱にコアラが木に掴まってるような姿で両足も絡めている

離れた場所でお母さんが呆れている

周りの人たちは頭に汗マークを垂らして不思議そうに主人公を見てる

【回想が終わり試合に戻る】

転びそうになったとき両足を相手の腰に回して立った相手の首にぶら下がる

相手は両ひざを床に下してマウントを取ってる状況になる

マウント状態だが首を掴まれてる相手は顔を下に向けられながらも主人公の顔に左右でパンチを繰り返す

主人公は両肘を内側に絞めて首相撲のまま離さない

相手はぶら下がられてる状態のまま立ち上がって主人公を持ち上げる

勢いよく主人公の背中を床に叩きつける

叩きつけられた衝撃で苦しそうな表情の主人公

もう一度相手が立ち上がって床に背中を叩きつけようとする

【幼少期の公園での回想】

シーソーをする主人公とお父さん

お父さんが重すぎて主人公の座るシーソーは上を向いたまま下がらない

踏ん張った表情の主人公がシーソーの上でお尻を何度もジャンプさせて下に体重を向ける

お父さんのシーソーがクイックイッと少し浮いて嬉しそうなお父さん

【回想が終わり試合に戻る】

主人公にぶら下がられたまま立ち上がる相手 状態を後ろに下げてから勢いよく主人公の背中を床に叩きつけようとする瞬間

主人公が絡めてる両足を内側にギュッと絞める

お尻で相手の腹部をグッと前方に押して相手を後ろに倒す 受け身を取っていない相手はヘッドギア越しに後頭部を強打

主人公がマウントを取り返した形になる

主人公が急いでパンチしようとする

レフリーがストップの手を差し伸べる

立ったまま後ろに倒れた相手は意識を失っている

その後ドクターが相手選手に近寄ると意識を取り戻した相手がキョロキョロ周りを見渡す

主人公は意識が戻った相手を見て安堵の表情

レフリーが主人公の片手を天井に向けて持ち上げる

観客から声援と拍手

お父さんとお母さんが抱き合って喜ぶ

マイケルが満面の笑顔で拍手している

―――――

マイケルの家で豪華なディナー

クラッカーを鳴らす音

ミニウェディングケーキみたいなタワーケーキも置いてあって花火がパチパチと火を放つ

パーティ帽をかぶった主人公とマイケルが嬉しそうに椅子に座っている

高羽「おめでとう!すごいね!」

主人公「日頃の行いのおかげかな」と微笑む

マイケルは美味しそうにプロテインを飲み干す

翌日

牛の背中に抱き着いて寝そべる主人公「体が痛い」

庭のリング上を鼻歌まじりにモップ掛けしてるマイケル

トウモロコシ畑で作業するお父さん

飼育小屋で馬に餌をあげるお母さん

講演会の壇上で英語でスピーチしてる高羽

家の道路

黒い車が止まる

謎の人影5人が家を見ている

夜の主人公の部屋

トランクの中にヘッドギアやグローブをしまって荷物整理

牧場の馬の声「ヒヒーン」と動揺した様子の鳴き声

―――――

高羽がスクールを終えて友人たちと出てくる

バイクで迎えにきてるマイケルのもとへ近寄る高羽

高羽が今夜は友人たちと遊んでから送ってもらうと伝える仕草

マイケルが微笑みながら頷いて高羽に片手を上げたあとバイクを走らせる

花屋へと立ち寄って小さな花束を買うマイケル

花束の入った紙袋を崩さないように優しくリュックへしまう

自宅キッチン

エプロンをした主人公がフライパンの蓋を開ける

美味しそうなパエリアが完成していて喜ぶ

何かを思い出した表情でエプロンを外す

バスルームの掃除をしていたお母さんに言伝をして家を出る主人公

主人公の姿を遠くから見ている黒い車がゆっくり発進する

夕暮れ時の田舎町を歩く主人公

黒い車が現れてドアが開き主人公を車内へ引きずり込む

バイクで走っているマイケルの向かいから黒い車が向かってくる

黒い車のドアから主人公のスカートの一部がヒラヒラ揺れている

それに気づいたマイケルはバイクを止めて走り去って行く黒い車を見る

自宅に鳴り響く電話

お母さんが電話に出る

電話「身代金を持ってこい」

電話から漏れる主人公の声「離して!やめて!」

お母さんが状況を理解して驚いた表情

[夜の廃工場]

黒い車が駐車してある

マイケルのバイクが工場近くに止まる

工場内の廊下をフルフェイスのヘルメットとリュックを背負ったマイケルが歩く

突然後ろから鉄パイプで後頭部を殴られ床に倒れるマイケル

工場広場の中央でドラム缶から炎が噴き出す

ボスたちのもとへ倒れたマイケルが引きずられてくる

ボス「何だこいつは」

マイケルのヘルメットを外す

ボスがマイケルの髪の毛を掴んで顔を上に持ち上げる

ボス「あの家のガキだな 身代金は持ってきたんだろうな?」

一味がマイケルの服のポケットを漁る

ボスがリュックの中身を漁り紙袋の中を見る

紙袋に入っていた花束を床に放り投げる

紙袋をグシャッと握りつぶす

ボス「身代金はどうしたー!」とマイケルの横腹を蹴る

一味が鉄パイプで背中を殴ったり蹴り続ける

苦しそうに目を開けるマイケル

床に落ちてる花束にピントが合う その先にはボヤけた景色と主人公の姿

ピントが主人公のほうへ映るとお腹にロープを巻かれて目隠しされ気を失ってうな垂れている

攻撃し続ける一味

苦しそうにするマイケルが気合いを入れた表情に変わり 寝そべったまま足払いして立ってる男を転ばせる

両腕で地面を押して飛び上がる

格闘技で全員倒す

ドラム缶の炎がパチパチと音を鳴らせる

マイケルが息を整えて主人公のほうを向く

駆け寄って主人公の肩に手を当てる

目隠しが外されて目を少し開ける主人公は目の前がボヤけていて見えない

ボヤけている中 誰かが目の前で何かを言っている

視界が戻ってくると 必死の形相で呼びかけていたマイケルの表情が安心した様子に変わる

ロープが解かれた主人公の体を抱きしめる

マイケルの目から涙が流れ 抱きしめる腕をさらにギュっと強く抱きしめる

主人公は放心状態で上を見つめながら一滴の涙を流す

見つめ合う二人

そこに警察と両親が駆け付ける

犯人たちは警察に連行されている

病室で医師から話を聞いてる主人公 何事もなかったようで安心するお母さん

病室の廊下をお父さんがマイケルの腰を支えながら一緒に歩いてくる

マイケルは軽い手当てを受けた様子

病院の入口から高羽が駆け付ける

微笑む主人公を見て安心する高羽

―――――

牧場の牛と馬がいつも通りの姿をしてる

自室でトランクのチャックを閉める主人公

空港で両親とマイケルとハグをして両頬に頬を合わせる主人公

高羽の前に来ると「あ いや 俺はいいよ(汗)」とハグを断られる

手を振って搭乗口へと向かう主人公

遠くでマイケルが笑顔で両手を振りながら「マジヤベエッテー!」と叫んでる

日本の空港に到着した飛行機

空港には主人公の家族が迎えに来ていて手を振ってる

―――――

主人公の自宅リビングの日めくりカレンダー

8月31日

夕暮れ時の河川敷を主人公が歩いてる

主人公⦅中学校に入ってから色んなことがあったなー⦆

今までの出来事が走馬灯のように浮かんでくる

夕日に向かって歩いていく主人公の後ろ姿

川の前の茂みでトンボが飛んでいる

「私の青春は これからも続いていく」

完結

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