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お客様のことどれくらい理解できてる?長谷部智也氏著『いたいコンサル、すごいコンサル: 究極の参謀を見抜く「10の質問」』

こんにちは。鬱、とか軽く書くと怒られそうですが、鬱気味で夏休みの旅行計画が全く立てられない今日この頃です。

BtoBの事業に勤しむ皆様、お客様のことはどれくらい理解できているでしょうか。
例えば、お客様から以下のような質問をされた時、即答できますか?

「わが社の属する業界の歴史と構造変化をどう見ていますか?」
「わが社の中期経営計画の鍵となる施策とその利益効果の根拠は何ですか?」
「わが社の周辺事業への展開についてどうお考えですか?」

即答できなければ「いたいコンサル」です。
私もいたいコンサルの一人です。

長谷部智也氏著『いたいコンサル、すごいコンサル: 究極の参謀を見抜く「10の質問」』は、コンサルタントの存在意義に疑問を持ち始める、社会人思春期な人たちにおすすめですので、役立ったポイントをメモりたいと思います。

あなたはいたいコンサル?

まず、この本のタイトルにある10の質問が何かを見ていきましょう。
ちなみに、冒頭で聞いた質問もこれらから抜粋しています。

●「業界構造」に精通しているか
 ▶ 質問1「わが社の属する業界の歴史と構造変化をどう見ていますか?」
●最終提言を「第0日に30秒」で語れるか?
 ▶ 質問2「今回お願いするプロジェクトの最終提言の仮説は何ですか?」
●どんな数字も「自由自在に」つくれるか?
 ▶ 質問3「わが社の中期経営計画で鍵となる施策とその利益効果の根拠は何ですか?」
●能書きではなく「アクション」至上主義か?
 ▶ 質問4「わが社が競合に勝つために取るべき最も重要なアクションは何ですか?」
●すらすらと「定石」が出てくるか?
 ▶ 質問5「わが社の周辺事業への展開についてどうお考えですか?」
●「直言」できるか?
 ▶ 質問6「現在のわが社の戦略で誤っている点、見逃している点は何ですか?」
●組織の「空気感」が分かるか?
 ▶ 質問7「わが社の『意思決定プロセスの特徴』をどう見ていますか?」
●「成功報酬」を歓迎するか?
 ▶ 質問8「今回のプロジェクトは成功報酬でお支払いしてもよろしいですか?」
●「長いプロジェクト」経験が多いか?
 ▶ 質問9「過去のプロジェクトで最長のもの、最大の効果を出したものは何ですか?」
●「パートナー」がしっかりと時間を使うか?
 ▶ 質問10「今回のプロジェクトにあなた(パートナー)自身は、どれだけの時間を使ってもらえますか?」

長谷部 智也著『いたいコンサル すごいコンサル 究極の参謀を見抜く「10の質問」 (日経ビジネス人文庫)』2024年6月4日 日経BP 日本経済新聞出版
出版, 51頁

本書では、これらの質問に対してどう答えるべきか、という解説がされているがその細かいところはテクニック的なところがあるので、一つ一つは取り上げませんが、この質問だけで分かることは、「どれだけ顧客の業界や課題を理解できているか」という点が重要か、ということです。

私もLPOコンサル、という仕事をしていた中で人のことはあまり言えませんが、現在は「○○コンサル」という肩書を持った社会人1年目みたいな人間が跳梁跋扈しています。

この本の中でも記載されていますし、BtoBのビジネスでは当たり前ですが、費用対効果(ROAS、ROI)が100%を超え、財務的な効果が見えることはコンサルの最低条件です。

それが達成できないコンサルを雇う意味があるのか、ということは常に肝に銘じて仕事をしないといけません。

業界に興味を持つ

財務的な効果をコンサルタントが生み出すためには「ビジネスレベルで顧客のことをどれだけ理解できているか」ということがポイントになります。

例えば、1個目の質問「わが社の属する業界の歴史と構造変化をどう見ていますか?」の回答のためには、「プロフィットプール」と「市場シェア対利益率」を把握しなければならないとあります。

プロフィットプール

引用元:【起動篇】わが社はいったい何者かを問いつづけよ ─ 再定義の時代 - 連載コラム/CEL【大阪ガスネットワーク株式会社 エネルギー・文化研究所】
( https://www.og-cel.jp/column/1274612_15959.html )

プロフィットプールは、簡単に言うと、業界のなかで売り上げがどこでどれくらい生まれているのか、ということを可視化したものです。
上記の自動車産業のプロフィットプールは、部品製造から、エンドの消費者が車を購入するまでが自動車産業ですが、売上が一番多いのは自動車本体の製造です。

市場シェア対利益率

市場シェア対利益率はその名の通りですが、市場シェアを縦軸に、利益率を横軸に取った企業・サービスごとのバブルチャートです。

引用元:成否を決める自社と市場の把握
https://www.miraic.jp/wp-content/uploads/2019/10/Vol.2-shinkijigyo.pdf

チャート内の位置する場所によって戦略が変わってくるというもの。

極端に矮小化して、自分の実体験を話すと、例えばLPOコンサルとかで受注したものの「CVR改善じゃなくない?まずは集客しないといけないよね」みたいな課題感になっているのに、そのままLPOコンサルでごり押しするみたいな。そういうのはいけないよね。
っていうのがビジネスレベルで考えると、上記のようなポジショニングの話になります。

また、重要なのは、どちらも時間軸を持っていることです。
常に同じプロフィットプールではないし、市場のポジショニングを維持できるということではありません。
常に業界の動向は変わるのでアップデートが必要です。

本書では、新聞やニュースを見ていればわかる、と言いますがこれは正直、きつい!という印象です。
同じく本書自身が指摘していますが、ほとんどの企業にはノウハウや事例がないため、新聞やニュースを見てもそこからビジネスレベルのアウトプットに昇華できないことがほとんどではないかと思います。

そこで私がおすすめしたいのは、競合他社の決算資料を見ることです。
これはお手軽な競合調査&市場分析なのですが、同業他社の決算を見ればどこが好調なのか、なにで失敗しているのかが定量的&解説付きで見られます。

一例としてサイバーエージェントの決算資料を見てみましょう。
以下はサイバーエージェントの2024年4月~6月の決算説明資料です。

引用元:2024年3Q決算発表 決算説明会資料
( https://pdf.cyberagent.co.jp/C4751/EyBn/Zh8q/yWbN.pdf )

サイバーエージェントを昔から知っている人からすると、広告代理店でしょ、という感じもしまうが、現在、広告事業とゲーム事業はほぼ同等の営業利益となっています。(学マスはいいぞ)
成長率も広告事業の売り上げ高は6.4%増、ゲーム事業は15.1%増の成長率です。

ちなみに、広告業界ではクライアントから広告費をもらって運用するわけですが、広告費を売り上げとして計上してよいのかという点はグレーだそうです。
広告費+代行手数料なのか、代行手数料だけなのか、はちゃんと調べておかないと判断を誤ります。

広告業界って今でも成長しているんでしょ?みたいな感覚でいると、いやいやってなることもあるって話ですね。
競合が伸びているなら何かコツがある。逆に市場は伸びていても競合が伸び悩んでいるなら、何か穴がある、みたいな形で業界を知っていくのも一つだと思います。

すべてを網羅するのは不可能。努力目標でいこう!

質問1に対しての内容を紹介しましたが、それ以外にも「ファッションブランドが飲食業界に展開する際のセオリー」なども紹介されているのですが、これは正直知識量と実績が必要ですので、一朝一夕で会得できるものではないと思います。
また、プロフィットプールや市場シェア対利益率についても、クライアントが中小企業のコンサルティングでは、情報開示されないことがほとんどでマッピング自体が不可能な場合も往々にしてあります。

本書で学ぶべきは、結果を出している戦略コンサルタントはこれくらいレベルの高いことをやっている、これくらいの知識量が求められている、ということを知ることだと思います。

大手のコンサルティングファームでなければこのようなノウハウを蓄積する機会もないでしょう。
ただし、これくらいの視野をもとうと意識するだけでも違ってくると思います。

共有したいのは、「財務的な効果が出せているのか」ということを自分に常に問うこと!

全国のコンサルタントに幸あれ!!

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