「俺だってつらいんだ」に終始する男性の生きづらさ論【活動報告No.1】

2021年9月3日、理学療法士の有志メンバーでとあるジェンダーに関する記事を読み、感想を共有するシェア会を行いました。

記事は、こちら。
「俺だってつらいんだ」に終始する男性の生きづらさ論/『介護する息子たち』著者・平山亮さんインタビュー【1】

この会が発足するまで

参加メンバーは5人。女性、男性、子どものいる人、独身の人などさまざまな背景を持つ理学療法士が集まりました。

「リハビリテーション業界は、ジェンダーやセクシュアリティに対して課題意識が低いのではないだろうか…」

そんな疑問を持った人たちが集まり、この会は発足しました。セクハラやマタハラといった目に見えるハラスメントに限らず、家事や育児の負担が女性に集約され働きづらい環境が常態化している現状や、LGBTQへの知識・配慮の不足など、問題点はいたるところに見受けられます。

こういった知識の不足は、無意識の差別となり、気づかないうちに相手を傷つけます。
そうしてそれは、同じ職場で働く大切な仲間だけでなく、対象者の方、その家族など、本来わたし達が支援するべき立場の人々に対しても、意図せずして起こりうるのです。

しかし、現状ではこの問題に対して課題意識を持って取り組んでいる人は多くありません。そこでわたし達は、「リハビリテーション業界で働く人々のジェンダーやセクシュアリティに対する感度を上げたい、支援する人・支援される人の両方が安心して過ごすために何が必要なのか、一緒に考えてくれる人を増やしたい」という思いから、少しずつ活動を始めることにしました。

その最初の一歩として、最初に紹介した記事を読み、感想を共有する『シェア会』を開催しました。

シェア会とは…

最初に、各々が感じたことや気づいたことを安心して話せるよう、以下のことを共有しました。

① 沈黙(間)を大事にする
② 違いを大切にする
③ 変化を面白がる

「心理的安全性」は昨今でも話題になるキーワードですが、その実現は容易いものではありません。同じ課題意識を持っていても、集まっているメンバーは性別・年齢・立場などさまざまな背景を持っています。それぞれが自分の気持ちを素直に話せるのはもちろん、お互いを尊重し居心地の良い場が作れるよう、メンバーの橋本さんが提案してくださいました。

今回のテーマ:『男性の生きづらさ論』

あらためて、記事はこちらです。

「俺だってつらいんだ」に終始する男性の生きづらさ論/『介護する息子たち』著者・平山亮さんインタビュー【1】

今回、取り扱ったのは、大阪市立大学准教授の平山亮さんが、著書『介護する息子たち 男性性の死角とケアのジェンダー分析』の出版をきっかけにインタビューを受けた記事です。記事を書いた鈴木みのりさんは、ジェンダー、セクシュアリティ、フェミニズムへの視点から書評、映画評などを執筆しているライターであり、自らもトランスジェンダーの当事者としてメディアに出演されています。

「稼得役割」を求められる傍らで、イクメンであることが推奨される現代の日本男性において、「男性の生きづらさ」という言葉を耳にする場面が増えたように思います。しかし、真にジェンダー平等が成されたとは言い難い社会であるなかで、この「男性の生きづらさ」は本当に的を得ているのか。記事では構造的な視点から、「男性の生きづらさ」について解説されており、とても読み応えがありました。興味をお持ちの方には、ご一読をお勧めします。

シェア会では、次のような意見が出ました。

・男性の立場で読むと、耳が痛い話が多く読みにくかった
・家事や介護を女性に任せる風潮は、リハビリテーションの場面において女性の対象者に家事動作の練習を促すように、自然と『女性の役割』として認識してしまっている傾向があるのではないか、学生の頃から、このような認識があったのではないか
・男性が女性の立場を理解しづらいことについて、「わからない」原因を女性側に押し付ける風潮は実在する
・協会など大きな組織を相手にする際には、相手を逆撫でしないように気をつけながら自分たちの意思を伝えていく必要がある
・男女格差は誰の問題なのか、格差を感じたことのない人たちにどうやって共感してもらうかが課題

また、会を終えて、メンバーからは次のような感想が出ました。

・同じ記事を読んで、それぞれが違うところに気づくのは良い点だった
・自分の仕事やプライベートに置き換えると、改めて想起されることがあった
・こういった問いを投げかけるだけでも、刺さる人がいるのではないか、と感じた
・そもそも記事のような問題を知らない人がいる。課題を投げることで気づく人やもっと知りたいと思う人もいるのではないか


感想にもあったように、さまざま立場の人が気づいたことを共有する中で、新しい視点やそれまで触れてこなかった課題に気づくことができ、とても有意義な時間を過ごすことができました。そして、それをその場で終わらせるのではなく、こうして文字に残すことでもっと多くの人に知ってもらいたい。そんな想いから、このリポートを書くことにしました。

まとめ

ジェンダーやセクシュアリティはセンシティブな面もあり、日常生活の中で触れる機会のない方は多いかと思われます。しかし、誰かの人生の一部に触れ、時にはプライベートな領域まで踏み込んで支援をする立場のわたし達にとっては、見過ごすことのできない問題でもるようにも思います。

もしも、興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、まずは平山さんの記事だけでも読んでいただけると幸いです。そして、もう少し踏み込んでみたいと思ったら、記事を読んで感じたことや疑問に思ったことを、身近な人に話たりSNSで共有したり、と少しずつ行動範囲を広げてみてはいかがでしょうか?

このリポートは、どこかの誰かの、些細なきっかけになることを願って書いています。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

記事:楠田菜緒子

おまけ

今後も月に1回程度のペースで、今回のようなジェンダーやセクシュアリティに関する記事を読み、参加メンバーで感じたことや課題に感じたことをシェアしていく予定です。定期的に更新し、皆さまにもシェアできるよう準備をしておりますので、是非ともご覧ください!


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