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シリーズ:ノルウェー人に聞いてみた④~ノルウェーってジェンダー平等ですか?~Tさんの場合

今回はノルウェー在住日本人の方にお話を伺いました!

今回のお相手は・・・・

Tさんはノルウェー在住10年以上で、ノルウェー語はもちろんのことスウェーデン語、エストニア語などを操るスーパーウーマンです。スウェーデン人の旦那さんと4歳の娘さんとの3人暮らしで、フィンランド発のITサービス会社のノルウェーオフィスで、マネージャーを務めておられます。民間会社、ITサービス、マネージャーという文字だけで「忙しそう!」と思ってしまいますが、さて、どのように仕事と家庭の両立をされているのか、聞いてみました!

お仕事はとてもハードではありませんか?

海外出張などもあり忙しくないとはいえませんが、職場に理解があるのでとても働きやすいです。私の職場はノルウェー人が大半なのですが、そのせいか「家族第一」「健康第一」という考え方が浸透しています。子供が熱を出して休むのも「当たり前」のこととして受け取られますし、長期休暇をとるのも、上司の許可を取る必要がないぐらい当たり前の権利として認められていて、最初は拍子抜けしたぐらいです。

7月ってほんとにみんな働かないんですか?

はい、働きません。(笑) 国全体がお休みモードなので、もちろんクライアントも動きませんし、保育園もお休みなので、休みます。もちろん仕事は何も進みませんが、それでよしとされているんです。北欧の夏はとても短いです。せっかくの貴重な夏の時期を働いて過ごすなんでもったいない!といった精神のようにも感じます。

どのように仕事と家庭の両立をされているのですか?

うちは両祖父母も国外なので、夫婦で協力しあうしかありません。夫は政府系機関勤務のため、民間会社勤務の私よりも時間に余裕があるのはとても助かっています。私が1週間海外出張などで不在のときは、私が事前に食材の下準備はしたうえで夫が家事、育児すべて担当します。夫の職場も子育てに理解があるので、無理なくできるのだと思います。幸いにも今のところ家事をアウトソーシングする必要性や、オペア(ベビーシッター)を雇う状況に迫られたことはありません。保育園の送り迎えも半々、家事も私が料理、夫が掃除・洗濯と得意領域をメインに役割分担し、寝かしつけも半々でやっています。

それぞれが50%でやっているので、大きな不満はありません。家庭運営は夫婦で協力して行うのが当たり前という価値観も浸透しています。なので女性が働くのも当たり前だし、男性が家事育児するのも当たり前。みんなそういった家庭環境で自身も育てられているのでそこに疑問はうまれません。

ほんとに男性育休ってとっているんですか?

はい、これもみなさん、当たり前に取得されています。周りでとらない人は聞いたことがないぐらい浸透しています。みなさん、上限max(15週間)でとられています。男性しかとれない育休期間(パパクオータ)というのがあって、その権利を放棄すると金銭的に損をする仕組みなので、それもあってみなさん取得するというのがありますが、それ以上に「育休期間にしかできないこと」「育休中に得られること」に魅力を感じて取得されていると思います。職場でも育休入るタイミングでお祝いランチ会をしたり、育休頑張ってねカードを渡すなど歓迎モードなので取りやすい雰囲気というのもありますね。

育休とった男性の感想は?

「人生で一番いい時期を過ごせた」「子供の成長を感じられた」「子供が懐いてくれた」「リフレッシュになった」といった前向きな話をよく聞きます。充実しすぎて「仕事に戻りたくない・・・」といったコメントまで出ることも。

女性だからという理由で差別を受けた経験はありますか?

特にありません。妊娠したときは、前職のイギリス系の会社だったのですが、とても忙しい時期で報告を躊躇していたのですが、、、話したらむしろとても歓迎されて、またまた拍子抜けしました(笑)

子供を持つことはとても素晴らしいこと
仕事以外の楽しみが増えること
逆に仕事を頑張れる
社会で当たり前のこと

「何が心配なの?」と逆に聞かれたぐらいで(^^;)今も割と忙しい会社でマネジャーをやっていますが、「ママだから」とか「子供が小さいから」という理由で仕事を任されない、昇進が遅れることはありませんし、周りでもあまり聞いたことがありません。

育休からの復帰はどのようにされたのですか?

私は最初からフルタイム復帰をしました。というのも、時短にしなくても、もともと職場に子育ての理解がありますし、休暇も取りやすい環境なので時短にする必要性をあまり感じませんでした。子供が1歳になるまでは1日1時間の授乳休暇(休憩込みで1日7時間以上働く人に限っては有給となる)も国の制度として認められていて、通常勤務の方より1時間早く帰れたので余計に。

そもそも16時にはオフィスが空っぽになるのが普通のノルウェー。渋滞も16時台がピークで18時には解消しています。金曜日は更に早く15時ぐらいに上がる人も多いのでわざわざ時短とらなくてもいいというのもあるかもしれません。

もちろん、中には75%復帰から始めるといった方もおられます。家庭の事情に応じて個人で設定が可能です。定年に近い、役職付きの方でも80%勤務を選ばれたりします。時短は「ママがとるもの」といったイメージが日本では強いかもしれませんが、こちらでは、誰もが家庭の事情や健康上の理由から取得する当たり前の権利として浸透していると思います。時短だから「リーダーになれない」とか「大事な仕事を任せられない」といった考え方もありません。

子育てを理由に派遣を選ぶといった方は少ないのでしょうか?

そうですね、ノルウェーでは派遣は若い人が様々な経験をするために積極的に選ぶことが多いように思います。派遣はフレキシビリティが魅力なので、一定期間派遣として働いて、お金を貯めて、海外に行く若者やあとは外国人の雇用受け入れ先としてもあるように思います。成人のノルウェー人が派遣で働いているイメージはあまりありません。フルタイム社員でも子育てしやすい環境が整っているので、わざわざ派遣を選ぶ理由はあまりないのだと思います。

ズバリ!ノルウェーはジェンダー平等の国だと思いますか?

はい。私はそう感じています。ただ、給料格差はいまだに男女であると聞くのでそこは改善ポイントだとは思いますが、概ねジェンダー平等は達成されていると思います。仕事と家庭の両立をしたい人にはとても住みやすい国ですね。

聞いて思ったこと・・・

そもそも「子供を持つこと」「休みをとること」に対する考え方が日本とは違う!と心底思いました。「子供は国の宝」とはいいすぎかもしれませんが、子供は各家庭で育てていくというよりも、社会全体で協力して育てていく感覚があるように思います。労働市場において子供=負担=時間を奪うものという観念が日本では強いですが、こちらではそもそも「長時間労働は悪」という視点に立つので、労働時間が減るのならば生産性をあげればいいじゃないか!と時間数に執着しないように感じました。

「休みをとること」に関しても、日本では大なり小なり罪悪感を感じさせるものですが、こちらは当たり前の権利としてみんなが行使しているものなので、休暇取得の心理的ハードルはかなり低いように思います。休み=悪ではなく、休み=善なので、育休しかり、授乳休暇しかり、長期休暇しかり、自由に取得できる土壌?カルチャー?が備わっているように感じました。それがみんなが無理なく働けるポイントなのかもしれません。

日本のジェンダー平等の鍵の一つは働き方改革=時間に関する概念を変えることだな、と更に認識を深めました。

パートナーも民間勤務で多忙な場合や子供が複数いる場合の両立実態も気になるので、今後探っていきたいと思います!


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