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幽閉returns ⑳カニの館への潜入…

よし、着いたぞ…

明け方に車で家を出て

モーターボートに乗り継ぎ

昼過ぎの今、やっと島に着いた…

俺がここへ来るのは二度目だな…   (幽閉⑭ 参照)

前も一人で娘の救出に来た

もう、再びこの島に来る事は無い

そう思って娘のくみと、この島をあとにした

こんな島… 二度と来たくは無かった

だが、ヤツが本当に生きているのなら

決着を付けなければ…

俺とくみは前へ進めない

安心して幸せな生活を送れない

ここで終わらせるんだ、あの悪夢を…

俺の手で悪夢のみなもとって…

そして、俺の最高の相棒だった

佐々木のかたきを必ずってやる

俺はもう刑事デカじゃない…

これから俺がやろうとしてる事は

まぎれもない犯罪行為だ

しかも… 殺人なんだ…

いや、違う!

ヤツが人間であるはずが無い

かつては、そうであったとしても

人間があの状態で生き残れるはずが無い…

俺とくみは間違いなくヤツを殺した

だが…

それなら、いったいどうして…

いや、考えてたって始まらない

とにかく、この島まで来た以上

今度こそヤツにとどめを刺す…

この島にヤツが隠れているのなら

きっと、あの館だ

あそこしか考えられない

この島は、そう広くは無いんだ

前に一度来たんだ、道は分かっている

いや、忘れられるものか…

これで最後にしてやるぞ

今度は、あの館を焼き払ってやる

焼き尽くして何も残さない…

ヤツの生きた痕跡こんせきさえだ

全部消し去ってやる、俺の手で…

俺は、持って来た自動拳銃の

ベレッタ92Mを構え

スライドを引き薬室やくしつに弾を装填そうてんした…

そして銃の安全装置をはず

これで、いつでも撃てる…

よし、ヤツとの戦闘開始だ!

********

何だ、これは…?

このやかたは一体…

前と全然違う…

この建物の壁… これは、まるで…

カニ… カニの甲羅こうら…だ

あの色…形… 突起や毛まで生えている…

なんて、おぞましい形に…

それに、この生臭なまぐさにおいは…

俺は昼間から夢を見ているのか…?

これが現実なんて…あり得るのか?

俺は一体、何と戦おうとしてるんだ…?

ここはカニの…

カニの館…なのか?

うっ…!

このカニの館との壁と言い

周辺の地面と言い…

小さなカニがウジャウジャっている

なんて気味が悪いんだ…

くみなら気絶するだろうな…

この建物はいったい、どうなってるんだ…?

だが、ヤツがこの中に居るのなら

気味が悪いなどと言ってはいられない

とにかく中へ入って見なければ…

この館の外観は、すっかり変わってしまったが

中の間取りは同じ様だ…

だが、館の外壁がカニの甲羅こうら

まるで装甲のようにおおわれている

玄関の扉は… 開いているぞ

俺を誘っているのか…?

いつでも撃てるように拳銃を構え

俺は玄関扉を、そうっと開けた

玄関には誰もいない…

館の中は外側と違い普通だった

俺は少しホッとしながらも油断はしない

本当は靴を脱ぐべきところだが

俺は構わずいたまま家に上がった

何があるか分からないんだ…

俺は廊下を進みながら

部屋をひとつひとつのぞいて行った

部屋を覗く都度つど、用心はおこたらなかった

どの部屋にも人の姿も気配も無かった

だが、廊下にも部屋にも

そこかしこに無数の小さなカニが這っていた

まさにカニの館だな…

静かに歩く俺の靴にまれたカニが

グチャッとつぶれる感触が気持ち悪かった

次に入った部屋は…

以前にヤツと銃撃戦をした居間だった    (幽閉⑭ 参照)

部屋は撃ち合いなど無かったかの様に

元通りに修繕されていた

そう言えば…

ヤツがユンボで破壊した箇所も

壊れた形跡が残っていない    (幽閉⑲ 参照)

やはり直された様だった

サイコパスの割に几帳面きちょうめんなヤツだ…

居間の窓は閉まっていた

窓ガラスの外は雨戸というよりも

例のカニの甲羅こうらのような物でおおわれていた

やはり、あのカニの甲羅が

外敵からカニの館を護るための装甲…

その時だ…

「ギシッ!」

俺が立つ居間の入り口の反対側で

奥まった位置にある暖炉だんろそばで音がした

音がしたのは床の高さだったのだが

ソファーの影になり見えない位置だった…

いつでも撃てるように銃を両手に構え

脇を締めた射撃体勢のまま

俺は音のした場所にねらいを付けた

「誰かいるのなら、手を上げて出て来い…」

俺の呼びかけに返事は無かった…

俺は強硬手段に出る事にした

「出て来い!」

そう叫んだ俺は

邪魔なソファーを蹴飛けとばして銃を向けた!

だが…

そこには何もいなかった…

「あの音は何だったんだ…?」

俺は音のした位置に立ち、まわりを見回した

「ガタンッ!」

大きな音がしたと思ったら

突然、俺の足元で床が消え去った!

「うわああっ…!」

俺は成すすべも無く真下へと落ちていった…

………



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