*26 何事もなかったかのように
星の浮かぶ早朝、人気どころか猫気さえも無い閑静な暗闇の道を、私は猛然と駆け抜けた。寝坊である。目を覚ました時刻と本来始業しているべき時刻が全く同刻であった時点で、頑張ってどうにかなるような事態ではなかったのであるが、それでも一生懸命走って一刻も早く職場に着くより他にすべき行動も無かった。私は闇夜を駆けながら、頭では色々な言い訳を拵えようと奮闘した。婆さんを助けるには幾ら何でも朝が早過ぎる。事故に遭遇するにしては車通りが無さ過ぎる。アラームの設定時刻を間違えていたと言うのが最