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【僕のおばあちゃん】

明治生まれのおばあちゃんは、小柄で目がクリッとした、非常に社交的な人だった。

連れ添いのおじいちゃんは大工さんをしていた。おじいちゃんは物凄く丁寧な仕事をする大工で、宮大工レベルの大工だった。

ところが、丁寧で綺麗な仕事をするのはいいとしても、如何せん仕事が遅かった。謂わば芸術家気質なのだ。

おじいちゃんは腕は一流でも、要領よく人を使って金儲けをすることが苦手だったのだ。

そんな亭主を見た負けず嫌いのおばあちゃんが、さも悔しそうに言っていた。

「ワシにキ●●マが付いとったらのぉ~・・人を使うてジャンジャン儲けちゃるんじゃがのぉ~」

と、大いに悔しがったのである。

明治の女は自分のことを〈ワシ〉と呼んでいた。

そして、おじいちゃんは〈小唄〉にも精通していて、花街の芸者さん達に持て囃されたりもしていたので、おばあちゃんの機嫌は悪く、2人はよく喧嘩をしていた。

そんな訳で、〈ヤリ手女〉のおばあちゃんは、亭主の仕事ぶりや置屋通いには大いに不満を持っていたのだが、僕が高校生時分におじいちゃんが死んだ時、「おじいさ~ん❗️おじいさ~ん❗️」と、おじいちゃんの胸に顔を埋めて泣いていたのを思い出すのである。

喧嘩はしてても、やっぱり夫婦だったんだなぁと感心したものである。


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