【鮎の塩焼】
兄嫁や弟夫婦を呼んで、父と母の法事をした。
其々が色々な手土産を持って来てくれたのだが、その中に〈鮎〉があった。
〈鮎〉は釣り好きな弟からのお土産だった。釣ってから直ぐに冷凍保存してあるので、上手く解凍すれば、釣りたてのものと変わらないくらい美味しく戴ける。
その夜、早速〈塩焼〉にして食べることになった。
「塩をもっとしっかり振っとけばよかったわね。チョッと失敗だわ」
などと言いながら家内が焼いてくれた。
〈鮎の塩焼〉は、蓼酢で食べるのが普通なのだが、僕は蓼酢は使わない。塩だけのほうが〈鮎〉そのものの味が堪能出来るからだ。
焼き上がった〈鮎〉の身を箸でほぐして口に運ぶ・・・
「・・旨い❗️」
家内も美味しそうに食べている。ところが、身だけを食べて腸を皿の横に残しているではないか・・・
「S子~なんで腸を残すんじゃ❓️」
「腸だからでしょうに・・」
「〈鮎〉は腸が旨いんだぞ」
「そうなん❓️」
「そうじゃ。苔しか食べてないから内臓も臭くないんじゃ。〈鮎〉から腸取ったら魅力半減だぞ」
「そうなん❓️じゃ食べてみるわ」
一口腸を食べた家内・・・
「わっ❗️ホント美味しいね❗️苦味がなんとも美味しいわぁ」
「なっ❓️旨いだろ❓️」
「ホントに苦味が美味しいね❗️」
〈鮎〉は〈香魚〉と呼ばれるだけあって、他の川魚のような生臭さがない。清流の石に付着している〈苔〉を主食にしていることから〈胡瓜〉や〈西瓜〉のような爽やかな薫りがする魚なのである。だから腸も嫌な匂いがしないのかもしれない。
こうして〈鮎の腸デビュー〉を果たした家内なのであった。
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