見出し画像

【心霊研究部】

ある大学に〈心霊研究部〉があった。

何をするのかと言えば、心霊スポットに行って写真を撮ってきたり、そこで過去に何があったのかを調べたりして、大学に研究結果を報告する訳である。サークルではなくて〈部〉になるので、予算が下りるぶん研究報告の義務があったのだ。

ところがある日のことである。僧侶の経験もある、今まで顧問だった先生が退職することになり、その代わりに、心霊には凡そ門外漢な先生が顧問に就くことになったのだった。

そして、新しい顧問の先生が言うには・・

「君たちがやっていることは、決して心霊研究とは言えない。心霊スポットで起きたことや、過去の事件や事象を追っ掛けては裏を取って、それをリポートしているだけだ。事件報告だな。そんなことじゃ僕は大学側に予算の請求は出来ない」

正論をブツけられた学生たちに動揺が走る中、顧問の先生が続ける。

「研究なわけなんだから研究をしようよ。それについては僕も力を貸す。例えば心霊スポットというのは事件現場に限らないんじゃないか❓️ということだ。・・そこでだ・・この際、心霊スポットを創る研究をしてみたらどうだ❓️」

前代未聞の提案である。

その話を聞いた部員たちは思ったに違いない。

「えっ❗️・・誰かを殺しちゃうの❓️」

無論、殺人なんかする訳はないのだが・・ではどういうことなのか・・・

先生いわく・・

「心霊スポットというのは、もしかしたら人の噂が独り歩きして出来上がったものなのかもしれない。じゃあ人の噂が立った所に本当に心霊現象が現れるのか・・これこそが研究だろう。しかし公共の場所に勝手に噂を立てる訳にはいかないから、俺の父親が持っていた古民家が千葉の山奥にあるんだよ。そこを自由に使って構わないから、そこで研究をしてみたらどうだ❓️」

という訳で、噂で心霊スポットが出来るのかどうかという研究を始めることになったのである。

さて、じゃぁそこでどういう噂を立てようかということになったのであるが、色々協議した結果、以下のような噂を立てることが決まった。

〈あるカップルが道に迷った。くだんの古民家の前まで来た彼等は車をUターンさせる。入り口の少し広い場所でUターンして、さて出ようとしたところ「プスン」とエンジンが止まってしまう。そして、ルームミラーでフッ❗️と家の方を見ると、縁側のガラスの方から大きな顔がズ~~ッと近づいてきた〉

とまぁ、そういう噂を、部員たち総出で、ネットの大きな規模の掲示板に書き込みを始めたのである。

そうしてネットに火種を作っておいて、片や他の部員たちは「俺も見た❗️」「やっぱり本当だった❗️」などの追い書き込みを加えていくのだ。

これを暫くの間やっていくと、案の定、瓦屋根なのに「青い屋根の家だろ❓️」「そうそう青い屋根の家だ」などと適当に同調してくる者が現れ始めた。

ところが、部員の書き込みを禁止してから少し経った頃だ。大きな顔の話ではなくて、ひとりの老婆が現れるんだという書き込みが目立ち始めるのである。明らかに現場に行ったような書き方なのだ。

しまいには・・・

「おっかなかった❗️」

「写真に撮った❗️」

「俺も見た❗️」

等の話まで上がってくるようになる。

研究部では、「ホラッ❗️独り歩きを始めたよ❗️」ってことになったのだが、兎に角1度行ってみようかということになった。

さて当日の夜である。古民家に着くと急に物凄い雨が降りだしてしまう。仕方がないので暫くは車の中で待機することになったのだが、ひとりの女の子が窓の外を見詰めながら不安そうに呟くのだ。

「あれぇ~❓️あれなんだろう・・」

そして「ウィ~ン」と後ろの席の窓を開けるのだ。

「おいおいおい❗️窓開けたら雨が車ん中に入っちゃうだろ❗️」

仲間にそう言われるのも無視して、彼女は持っていたデジカメで外を撮り続けるのである。

「なにやってんだよ❗️車ん中濡れちゃったじゃないかぁ」

そして、やっと窓を閉めた女の子がデジカメを差し出し、怯えた声で言うのだ。

「チョッとこれ見て下さい・・」

皆んなが身体を乗り出して液晶画面を覗いてみると、そこには連続写真のように、俯いたような老婆の、縁側から玄関の陰に隠れるまでの姿が写っていたのである。最後は老婆の顔のドアップ写真で終っていた。

これは真実の話なのである。

ナポレオンが「思考は現実化する」と言ったそうだが、人の噂というか思念によって、何でもなかった古民家が本当の〈心霊スポット〉になったという話なのである。人々の思いが霊を呼び寄せたのであろうか・・・

・・・・・・・

精神的行為は、一件無意味のように見えるのだが、人間の思いというものは、良くも悪くも実現するものなのかもしれない・・・

(YouTube「ゴスコン公式まとめ7」より引用)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?