アーティストの「こころ」とHSP
以前、他人の感情と自分の感情が入り混じってしまうというアーティストから相談を受けた
他人のネガティブな感情に
自分の「こころ」が浸食されてしうまうという感覚になるそうだ
例えばとてもいいステージを終えて満足して楽屋に戻ったのに、
しばらくしたら突然「イライラ」が湧いてくる…
なんだろうと思うと
演出上のトラブルで他のメンバーがスタッフに対して
ちょっとキレ気味で話をしていて
その「怒り」の感情が自分の「こころ」の中に入ってきて
やがて自分の「こころ」が「怒り」で満たされてしまい
その場にいられなくなってしまったというのだ
自分が具体的な何かに対して「怒り」を抱いているわけでもないのに…
他人のネガティブな感情で自分の「こころ」が占領されてしまう
その感覚も日によって程度に差があって
何も感じない時もあれば
ひどい時は会場にいるお客さんの感情が伝わり
一瞬にして多種多様な感情に襲われることもあるそうだ
自分の感情が分からなくなったり
周囲の人の嘘や本音がわかってしまうらしく
とても「生きづらい」ということを語ってくれた
これはあまりにも高い「共感力」が生み出す状況で
自分の「こころ」が他人の感情に乗っ取られたような感覚に陥る
このような共感力の高い人をエンパス(empath)といい
特にネガティブな感情を他人から受け取ったときに
深くダメージを受けてしまう
人の「感情」がわかるなんていう
一見素晴らしい能力であるかのように思うが
この能力をうまくコントロールできないと
「こころ」に与える負担は大きい
このように
高い能力も自分でオンオフや調整ができなければ
自己を傷つけ「こころ」に負担を残す原因となる
彼の作る歌はとても繊細で多くの人の「こころ」を掴む
その才能はこの優れた共感力が生み出したものであるが
それと引き換えに自分を苦しめる原因にもなっている
表現力やクリエイティビティーは
HSP的な超感覚を持っている事により支えられることがある
その反面、あまりに研ぎ澄まされた感覚が
実生活において情報過多となり「こころ」にダメージを与えることがある
…まさに諸刃の剣なのだ
HSPとは
HSP(Highly Sensitive Person)とは
「とても感覚の敏感な人」のことをいう
アーティスト特有の「高感度」「高出力」「高機能」な「こころ」は
まさにHSPと呼ばれる人の特徴でもあるのだ
人間の感覚には個人差があるが
生きづらさを感じるほど「敏感な感覚」を持った人がいる。
感覚が敏感であるということは機能的に優れているはずなのに
時として生きづらさを生んでしまうこともあるのだ
匂いに敏感な人は
香水を嗅ぎ分けたり
様々なものの味覚(味覚のほとんどは嗅覚による)を
分析したりすることができる反面
臭いものや不味いものから受けるダメージは
普通の間下記の人より大きい
触覚の敏感な人は
着心地の悪い素材の服を着ているだけで具合が悪くなるし
音に敏感な人は雑音が気になって仕方がない
気圧のちょっとした変化で頭痛に襲われる人も多い
HSPの特徴は「知覚」「感情」「行動」「思考」の分野においてそれぞれ現れる。
「知覚」について
知覚過敏( Sensitivity to Subtleties)
「高感度」な知覚能力で生きると言うこと
人間は外の情報を
「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」
という「五感」を通して
脳に送ることで体験として認知する
その情報の入力器官が敏感なことで
他の人が気づかないような音や光、匂いなど
些細な刺激や変化にすぐ気づくことができる
つまり、我々には見えない「映像」を視ることができ
我々には聞こえない「音」を聴くことができ
我々にはわからない繊細な「味」や「匂い」「触感」を感じることができる
つまりより詳細な情報量を持った世界を知ることができ
表現力が格段にパワーアップするのだ
それは「歌詞」の世界感や
「メロディー」の素晴らしさ
「パフォーマンス」の表現力に直結する
しかし、その感覚が日常的に過敏になると
情報過多で処理能力が追いつかなかったり
余計なノイズも入力されてしまうので
必要以上に「こころ」に負荷がかかるのだ
「高感度」な知覚機能は
より多くの情報を感じることができる反面
より多くのストレスにさらされる危険性も含んでいる
「感情」について
強共感力( Emotional response and empathy)
「高感度」な共感能力を持って生きると言うこと
人間は「感情」の生き物だ
そして「感情」は非言語でも通じ合うことができる
それは脳のミラーニューロンという細胞が
相手の表情や態度を通して反応することで
相手の「感情」を読み取ると言われている
この「共感力」の強さは
多くの人の共感を呼ぶような作品を生み出すことができる
ところがこの能力もコントロールがうまくできないと
他人の感情と自分の感情の区別ができなくなってしまったり
必要以上に他人の感情から影響を受けてしまったり
自分の「こころ」が自分のものでないように感じてしまうことがある
「共感力」の強い「こころ」は
相手の感情を受け取ったり
相手に感情を伝えたりすることができるので
感動的な作品を作ることができる反面
他人の感情で侵食されてしまう危険性も孕んでいる
「行動」について
過剰反応( Overstimulation)
「高出力」な感情エネルギーを持って生きるということ
優れたアーティストは
常にステージ上で最大限の感情表現ができる
その感情表現のエネルギーが
多ければ多いほど
多くの人に影響を与えることができる
しかし、この膨大な感情エネルギーは
日常生活においては
過剰な反応として捉えられてしまうことがある
突然泣き出してしまったり
急に怒り出したり
感情は「無意識」のレベルで生まれるが
自分でそれがコンロールできなくなった時
様々なトラブルを起こしてしまう
時にアーティストの「こころ」が
取り扱いが難しいと言われるのは
彼らの「こころ」が
「高出力」の「感情エネルギー」を秘めているからだ
アーティストの「こころ」は
「感情的」「直感的」に反応する
そのエネルギーが大きくなれば「過剰反応」として現れ
本人の生きづらさや
周囲の人間とのトラブルにつながってしまう
「高出力」の「感情エネルギー」を生み出す「こころ」は
多くの人にカリスマ的な影響を与えることができる反面
制御不能に陥った時に
様々なトラブルや
心的な損傷を負ってしまうことがある
「思考」について
深思考回路( Depth of Processing)
「高機能」な「こころ」による深い思考で生きるということ
「高機能」な「こころ」を持った彼らは
より深く考え込んだり
複雑な思考を張り巡らせ
我々が思いもよらない「発想」に結びつけたり
新しいアイデアを生み出したり
さまざまなイマジネーションを生み出したり
優れたクリエイティブを可能にする
しかし、その深い考察力や洞察力が
簡単に結論が出せるような物事を
複雑化させたり
余計な不安に発展したり
ありもしない空想を作り出してしまうこともある
高機能な「こころ」で生きるということは
深い「思考」に到達し
クリエイティブの源泉となるその能力も
周囲には理解されなかったり
厄介な問題を作り出したり
不安の材料になったり
通常の生活においてはストレスの原因となってしまうことがある
アーティストとHSPとマネジメントの関わり
HSPは「とても感覚が鋭い人」ということの総称であって
厄介な病気や不治の病のことを言うのではない
その人が
「自分の感覚は敏感すぎる」
「だから色々辛いのよ」
と自覚することから始まる
じゃあその敏感さについて
「どのように対応するか」
「どのように配慮するか」
「どのようにコントロールするか」
具体的な対策や心がけをするだけでいいのだ
誰もがHSPとは断言できないが
アーティストと HSPの関わりは深く
その特徴も当てはまる人が多い
脳が「高感度」「高出力」「高機能」であるということは
その優れた能力の過剰反応により
日常生活や人間関係に支障をきたすことがある。
我々マネジメントは
その対応を心がける必要がある
ということなのだ。
我々が彼らにとって
ストレス源になってはいけないからだ。
本日のテーマはアーティストの「こころ」と
HSPの関わりについてお伝えしました
少しでも多くの人に理解をしていただければと思います
新しい時代に向けて、メンタル・マネジメントの知識を
このブログでは、アーティストマネジメント に大切な
「コミュニケーション能力」
「カウンセリング能力」
「コーチング能力」について
なるべくわかりやすく順次説明をしていきます。
どのようにしたらみなさんにそれが伝わるか試行錯誤しながらやって行きますので、ご質問やご意見のようなものがありましたらいつでもご連絡ください。
この記事に対するお問い合わせ geess@howling-bull.co.jp
各種セッション等に関する情報:https://tellme.hp.peraichi.com/geess
ここでは私が学んだことを中心になるべくわかりやすく解説をしていくつもりですので、興味のある方はおつきあいください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
少しでもアーティストを取り巻く環境が、より良くなりますように!
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