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【オンライン講義第12回】閉鎖型リーグの制度設計の特徴とスポーツ産業の提供価値の変化

皆さま、こんにちは!
ガンバ大阪サッカービジネスアカデミー事務局です。
今回は、GBA史上初の試みということで、国境を超えた講義を開催します。
GBAの講義がスタートする日本時間19:30は、アメリカ現地では朝の6:30で、オンライン講義だからこそ実現できました!早朝から本当にありがとうございます。
それでは、オンライン講義第12回の模様をレポートします♪

米国のリーグ制度設計とプロスポーツの提供価値とは

今回は「閉鎖型リーグの制度設計の特徴とスポーツ産業の提供価値の変化」というテーマで、トランスインサイト株式会社 鈴木 友也代表にご登壇いただきました。1996年より大手外資系経営コンサルティング会社勤務を経て、米マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツ経営大学院に留学。その後、現在のトランスインサイト株式会社をNYに設立して代表に就任され、日本のスポーツ組織や民間企業などにコンサルティングを手掛けられています。
まずは「閉鎖型米国プロスポーツリーグの制度設計の特徴」というトピックで、開放型と閉鎖型のリーグ設計の相違点をご説明いただき、さらに閉鎖型の特徴を深ぼっていきました。球団とリーグはそれぞれ異なる立場であり、球団は「自チームを強化して収益を上げる」という個別最適の発想であるのに対し、リーグは「接戦を増やして、リーグ全体の収益を上げる」という発想であるという、根本的な違いを理解することができました。リーグ施策の具体例として、閉鎖型モデルの思想である”戦力均衡”を実現するMLBの4施策をご紹介いただきました。

講義スライド(一部抜粋)

続いて、MLS(メジャーリーグサッカー)のリーグ設計についてのご紹介をいただきました。中でも「シングルエンティティ」と呼ばれる仕組みでは、球団オーナーがリーグの投資家(株主)となり、事業をリーグが一元的に管理すると同時に、選手全員がリーグと契約を締結してリーグの従業員の位置づけになるという、文字通りリーグ全体が「単一組織」(シングルエンティティ)として設計されています(選手報酬は原則としてリーグが支払う)。日本のJリーグやプロ野球とは、全く異なるため、受講生の皆さまの知識の幅も広がったようです。
ここまではアメリカのスポーツについてのお話しでしたが、Jリーグにおける年俸格差や球団収入における選手人件費の比率にも触れられ、講義の内容をより身近に捉えることができました。

講義スライド(一部抜粋)

後半は「米国プロスポーツの提供価値の変化」にて、NBAと企業、さらにNPOが協力して制作されたボードゲーム(Math Hoops)を活用したSTEM教育の事例をご紹介いただきました。スポーツの競技としての魅力だけではなく、スポーツの持つ見えない力を使って社会課題解決を図る”ビジネスとして”全米に展開していく、新たな価値提供の手法を知ることができました。
また、昨年竣工したClimate Pledge Arenaの事例も共有していただきました。同アリーナのパートナーシップでは「Give & Take」から「Give & Give」の思想にシフトしてきており、「お金や技術など自分たちができること全てに取り組んで気候変動に立ち向かう」という志をもった人達が集まって、事業を行う今まで見られなかった経済圏ができてきているそうです。

“格差”もリーグの成長には必要!?

アメリカのリーグ制度という、普段触れないテーマではありましたが、受講生の関心の高さが伺える質問の数々が挙がりました。その中で、ひとつご紹介をさせていただきます!

受講生:「J1リーグのチーム間年俸格差が約8倍というのは、アメリカの各スポーツより大幅に広い印象ですが、鈴木さんはこうした格差をどのように捉えられていますか」

鈴木様:「そもそもの格差が良いか悪いかは、リーグの成長ステージや伸びしろとリンクして考える必要がある。ある程度成熟していれば戦力均衡は良いが、リーグがまだ成長期にあり、クラブに大きな伸びしろがある場合は戦力均衡によって成長が止まってしまう可能性もある。現時点で一定の年俸格差があるが、Jリーグはリーグ設立以来地域密着型を推進して球団の数を増やし過ぎたこともあり、まだ世界と伍して戦えるレベルのビッククラブができておらず、近年は方針を転換してビッククラブをつくることでトップを伸ばしていくという方向性に変わってきている。今はある程度の格差を認める競争環境が必要だと思う」

一方、グループディスカッションは、以下のテーマを設定しました。

講義スライド(一部抜粋)

講義にてインプットしたアメリカの実情を踏まえて、身近なJリーグに対象を変えて考えるという、思考訓練のようなディスカッションとなりました。挙げられたアイデアの一例と鈴木様のフィードバックをご紹介します。

受講生:「Jリーグとしてではあるが、アジア地域をより重視するのが良いと思う。アジア地域の選手が活躍しやすい環境をつくり、その選手が活躍することで、アジアでの放映権料が伸び、その収益をリーグから球団に分配できる仕組みを作る。リーグ側はアジア選手起用した球団に、何某かの補助を行うなどのインセンティブを提供する必要がある」

鈴木様:「アジア戦略はJリーグがここ10年ほど掲げており、今後も続けていく必要がある。一方で、収益については、国内市場にも成長の余地はあると思う。クラブ経営では足元のスタジアムに依存する収入が比較的大きく、施設のリニューアルにより、収益向上を見込める。MLSでは、年に一箇所ほどのペースでサッカー専用スタジアムができており、日本でも新たな施設を建設しやすい環境をリーグが整備する余地はあると思う。講義でもお話ししたが、Jリーグの選手年俸比率は球団収入の約50%であるのに対し、MLSは28%しかない。その分、フロントスタッフや施設に投資を行う環境を整備している。国内外双方のマーケットを見て、放映権収入の使途の精査や球団やスポーツの枠を越える他競技との連携など、柔軟な発想で考えていってもらいたい」

受講生による企画検討も大詰め!フィールドワーク第3回開催!

次回は、受講生グループによる企画が明らかになるフィールドワーク第3回!
各グループのメンバーとGBAファシリテーター間で、検討が進められてきた企画のプレゼンを受講生皆さまの前で行っていただきます。
新たな気づきや受講生目線でのフィードバック、さらには対面でのGBAファシリテーターとの議論ができますので、非常に意義のあるフィールドワークです。
次回のレポートもお楽しみに!

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