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税を制す者は… ~仏領インドシナ 植民地人民搾取税の妙~

 早いもので、もう年末ですね。
 今年私は、旧ベトナム王国の皇子クオン・デ候自伝『クオン・デ 革命の生涯』(1957年南ベトナムで出版)を日本語に翻訳し8月に自費出版しました。それから偶然ここ(NOTE)を知り、仏領インドシナに関する記事の投稿を始めましたが、意外に記事アイデアが湧き継続できたので自分で驚いています。
 来年も話題が尽きるまで投稿し、尽きたら、『クオン・デ 革命の生涯』に引き続き、翻訳本第2弾の本格作業に入る予定でいます。。。😌😌😌
 今日は今年最後の丁度投稿100話目ですので、再び私のベトナム生活の思い出です。😅😅  

 私は約30年前にベトナムで生活を始めましたが、その頃『さすが外国だナ。。』と思ったものに、やはりその国独特の規則とか税金がありました。ですが、後々になって仏領インドシナ史の本を読む様になってから、
 「あれ、これってもしかして単にフランス植民地時代からの古い制度だったのか??
 と、何となく類似性を感じるものがあり気になっていたので、専門家ではないですが、私個人の視点で書いてみます。😌😌

 先ず一つは、ベトナムの全成人が『IDカード=Chứng Minh Nhân Dân(人民証明)』という身分証を所持していたこと。
 不携帯の発覚時には公安当局の処罰を受ける為、肌身離さず何処へ行くにも携帯します。パスポート、契約書、申込書、申請書、証明書等々、およそその人物を証明する必要のある書類には全てこのカード内容を書き、カードのコピーを一緒に提出します。
 日本人の私など、30年前ですし、パスポートに自分の番号を見つけて何と言いますか優越感のような、或る意味新鮮な特別感があり嬉しかった位ですけど、😅😅ベトナム人がいつでも何処でも『IDカード』の所持だけは忘れないように細心の注意を払い、もし忘れでもしようものなら一目散に走り帰る様子をずっと見ているうちに段々と、「大変だなあ、、やっぱりそんな紙一枚に振り回されたり、縛られるのは嫌だなぁ、、、」と考えるようになり、私の夫(べトナム人)からも、「日本は先進国だからだよ、こんなカードと番号で管理されなくていい日本が羨ましい。」と常に言われ、、、「やっぱり日本に生まれて良かった。。」としみじみ感謝したあの日々を思い出します。。。
 
 この個人カード=IDカードでの厳しい人民管理は、共産主義国独特の人民管理方法なのかなぁ、、、などと当時はぼんやり考えていましたが、後に仏領インドシナ時代の本を読んでいたある日、面白い記述を見つけたのです。それは、1906年に日本へ亡命して来た当時のベトナム王国の皇子、クオン・デ候自伝の中の文章でした。

 「そう決めて立ち去ろうとした時、三蕉(バ・ティウ)と潘心が何か二言三言交わしました。多分私が何者か伝えたのでしょう。三蕉は、私の方を注意深く眺めてから沈黙して、速度を早めながら前を歩き出したと思ったら、突然素早く力車に飛び乗ると、その場に私を置いたまま真っ直ぐ走り去ってしまったのです。そんな奇妙な行動にはもう驚きもしませんが、慌てたのは、追いかけるにしても彼の住所を知らなかったことです。その場につっ立ったままでいたら、通りかかった警察に尋問を受けて、もし私が人頭税票を携帯していないことが判ったら大変なことになります。(ベトナム人は、年に一度人頭税を納めなければならない。政府発行の票に、氏名、年齢、出身、職業が明記されており、何処へ行くにもこの票を常に携帯し、不携帯は罰せられる。)運が良かったのは、三蕉の家から潘心の職場まで歩いた時、そんなに距離が無かったので道順をぼんやりと覚えていた。」
          『クオン・デ 革命の生涯』より

 1913年頃、クオン・デ候は日雇い労働者に変装して単身サイゴンに潜入しました。サイゴンの『インドシナ連邦銀行(Banque de I’indochine)』で働く友人を訪ねた後、案内人の三蕉(バ・ティウ)氏は人力車に飛び乗って先に帰ってしまいます。クオン・デ候は、「私が人頭税票を携帯していないことが判ったら大変なことに」なると言っているのです。

 「ベトナム人は、年に一度人頭税を納めなければならない。政府発行の票に、氏名、年齢、出身、職業が明記されており、何処へ行くにもこの票を常に携帯し、不携帯は罰せられる」

 こ、こ、これは、、、ベトナム現行の「IDカード」制度そっくりではないですかっ!😅😅😅

 『人頭税票』『IDカード』。
 
名は違えども内容は瓜双つ。。。では、この「人頭税」とはどんな税なのか?これは、先の記事にも書きましたが独立革命家の潘佩珠(ファン・ボイ・チャウ)氏によれば
 「その人頭税は公捜銀といい、…これも毎年増額される一方で、止まるところがない」
 「それぞれの公捜銀に対し、フランス人は証明書を発行し、フランス文、フランスの印を用いて、姓名・年齢・本籍を明記して身に着けさせ、忘れることを許さなかった。道を行く者でも、家にいる者でも、もし密魔邪
(=秘密警察)に取り調べられた時、この証明書(=人頭税票)がなければ、脱税の廉で告発されて重罪に処せられる。」
              
『ベトナム亡国史』より

 この証明書は、「管理当局の文、印を用いて、姓名、年齢、出身、職業、本籍を明記して常時携帯必須、忘れれば重罪」。こ、こ、これは、正にベトナム人の『IDカード』。。。じゃあ、この個人番号カードで人民の納税状況を管理するシステムは、元々『西洋資本主義国による植民地統治システム』??? 
 どおりで、私の夫(ベトナム人)が「日本は先進国だから、こんなカードで管理されて無いのだ」と繰り返し言ってた筈です。。。😵‍💫😵‍💫

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 もう一つですね、日本では既に「個人消費に課す税」3%が導入開始されていましたが、私がべトナムに行った頃は消費税が無かったのです。
 再び無消費税生活をベトナムで謳歌できて、非常に晴れやかだったし、心に余裕ができた当時まだ20代の私。。。😅😅

 そのベトナムで、1998年頃にいきなり10%の付加価値税(VAT)という名の消費税がスタートした時は、本当にガッカリでした。。😭😭
 いきなり10%!💦💦💦。 いきなりバサッと切られるのと、真綿でじわじわ絞められる(3%→5%→8%→10%)のと、どっちが苦しくないのかなぁ?!(笑)などと考えているうち、日本もあっという間に追いついて(10%到達!)、もうそろそろ追い越す(増税😵‍💫😵‍💫)とか?。。。

 このイキナリ!!の付加価値税(消費税)10%をどうやって徴収するか。笛吹けど踊らずの危険性を回避する為に、ベトナム政府は『(赤)インボイス制度』=『消費税10%を商品代金に含めて売り主が代理召集する』方法を編み出したんですね。。。今からかれこれ20 年以上前ですけど、、頭いい。。。売主に代理徴収させ納税者を増やす画期的なアイデアです! そのための必須アイテム『当局印刷の赤色インボイス』の重厚な雰囲気、綺麗な印刷、質の良さげな(赤い)紙。。鳴り物入りでこの政府インボイスが世間に御目見えした時、何となく「結構カッコいいかも、、」とちょっと思っていた当時20代の私。。。😅😅
 
 そしてやはり、その後に「あ、これ-?!」と、潘佩珠(ファン・ボイ・チャウ)著述の中にこの⇩記述を発見して、なるほどぉ。。と納得したのです。

 「契約税、
 フランス人は、世の中で田畑・家屋を賃貸売買する際には、届けや証書などで、必ず紙を使うことに目をつけて、一法を編み出した。すなわち、ベトナムの紙にフランスの印を押し、およそ用紙を必要とする手続きをなす際には、フランス人に税金を納めてこの用紙を受け取り、それを使って取り引きをしなければならない。そして、もしこの紙を使わないならば、国法に背いたことになり、いっさいの契約は無効となる」
        
      『べトナム亡国史』より

 管轄当局の印の入った特別な契約紙、、、それを使わないと、その契約は無効、、、こ、こ、これは、、ベトナム現行の『赤インボイス制度』原形?!仏領インドシナ政府では用紙を買う所が少し違いますけど、『政府発行の専用用紙を使用しなければその契約は無効』、ここがポイント。。。😅

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 『ベトナム亡国史』にこんな件があります。
 「フランス人はまずこう言った。『国民が国家のために労役に従うべきことは、古今を通じての大義である。もし一年中自分の家業だけに安んじていたいならば、人頭税の他に、労役税を出さねばならぬ」と。」
 「労役税は公益銀といい、成年男子一人につき毎年八角である」
 

 労役=公益の免除税! 働かなきゃ生きていけないから、働く時間を確保する為の税金。。😭😭😭
 日本も今から国民が自ら『国防』を税で支えるという。。。何となく性格が似てませんか、気のせいですかね。
 でも、金!金!金! 金があれば全部解決します!(笑)

 以上、私がベトナムに行った時に『さすが、外国だナ、日本と違う。』と思い、夫が、『日本は先進国だから、こんなのある訳無いのだ』と言っていた、ベトナムの税金と独創的な徴収システム-『個人(ID)カード』に『インボイス制度』。。。なんと、悪名高い仏領インドシナの植民地統治時代にその原形を発見です!😅😅  
 
 で、でも💦💦、日本の友人によるともうすぐ日本に似たような制度が…。😅😅 
 やっぱり…日本政府は…、仏領インドシナ史とか西洋植民地史とか全然興味無いのかなぁ…知ってるのかなぁ…あの当時、全世界的に悪名高かった仏印政府による課税人民搾取『控租税事件』(1908)。。。😅😅 ”当たり前じゃん、そんなの興味あるのはお母さんだけー!!” ←我が家のJKの声(笑)  

 来年も仏印史に纏わる色々な話を、古い書籍から抜粋して書いて行こうと思っています。😌 皆様どうぞ良いお年を!
 
 

 
 
 
 
 

 

 

 

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