第5回「『ここがホームタウン』と感じることにはならないなと思ってしまって」(文=橋本倫史)
小さな路地の様子が、フィルムに記録されている。『世田谷クロニクル1936-83』のNo.66、『理容店2』の映像だ。街路表示板には「北沢二丁目31」と書かれていて、そこが下北沢駅にほど近い場所だとわかる。それが何曜日で、何時頃の映像なのかはわからないけれど、多くの人が行き交っていて、どこか賑やかだ。
映像が撮影されたのは、今から50年以上前のこと。かつて世田谷の街には、どんな時間が流れていたのだろう。映像を見つめながら、その外側──映像には記録されていないものに想像を巡らせ