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キャラクターのネーミング(外国人編)【山奥屋9】

 ネーミングの話の続き。
 外国人というか、カタカナ名前の付け方を考える。

 当然だが、外国人はどこの国の出身かで決まってくる。
 アメリカ人やイギリス人、フランス人、ドイツ人などの名前は馴染みもあるのでそれなりにパッと出てくるかもしれない。スミス、ウィルソン、ルベール、シュルツ……なんやかんや。

 ネットで探せばたくさんある。たとえば「ドイツ語の姓」で検索したら、ほらどうだ。便利な時代になったものだ。
 こうしたリストから気に入った名前があったら、適当にいただいて、もう一度検索にかけてチェックしてみよう。聖職者や犯罪者の名前などはなるべく避けておいた方がいい。
 ただロシア人やアラブ人などは父称があるから注意が必要だ(イワノヴィチとかイワノーヴナとか)。

 普通の国なら姓(苗字、名字、ファミリーネーム)はさっさと決めてしまえば割と大丈夫だ。
 とりわけ最近の他民族国家なら、「こういう名前があるんだ」と言い張ってしまえば、当の国の人でも「まあ……そういう姓もあるかもしれんわな」と納得してくれたりする。
 筆者はすごくテキトーに名付けた「テスタロッサ」という姓のアメリカ人や、「マデューカス(※)」という姓のイギリス人(イングランド人)を劇中に出した。
 その小説は英訳もされてるし、アニメ化して英語版も出ている。
 だがこの二人の名前が、現地の人からツッコミを受けたことはほとんどない(自分の知る限りでは。もしかしたら陰で笑われてるかも!?)。
 変な名前だな、くらいには思われてるらしいが、「こんな名前、絶対にいないだろ」とは思われていないらしい。

 姓に比べて、名(ファーストネーム)はちょっと難しい。
 時代ごとに流行り廃りがあったり、平凡すぎる名前などもある。
 われわれ日本人にはかっこいい響きでも、現地の人にとっては古めかしい「権左衛門」とか、または平凡な「太郎」みたいに聞こえてしまう名前もある。「ラインハルト」とか、すげー普通の名前らしい。

 筆者もそれでミスをしたことがある。
 ゼロ年代初頭に生まれた女の子のキャラに、「クララ」と名付けてしまった。
 ドイツ系の女性名でよく聞くからいいだろう、くらいの感覚だったのだが、クララは古めかしいそうだ。現代ではあまり使われないらしい。
 日本人だったら「キヨ」とか「ウメ」とか、そんな感じか。
 いい名前なのにな、クララ。

 まあでも、普通は日本人が日本人の読者のために書いた小説なので、そこまでナーバスになることもないかもしれない。
 あなたの書いた小説が、本になってアニメ化して海外で翻訳されてから心配すればいいことだ。

 それに検索してみると、主要な国の毎年の命名ランキングなどもよくある。
 こんな具合に。
 クララと名付ける前に、ひと手間かければよかった(忙しかったのだ。仕方ない)。

 マイナーな国の出身キャラ——たとえばボツワナやベリーズ、レソトやブルキナファソの人物の名前が必要なときはどうすればいいだろうか。
 これも検索すれば、大抵はなんとかなるが……。
 おすすめはオリンピックの選手名だ。
 オリンピックは世界中からたくさんの男女の名前が集まる、名前の万国博覧会だ。チェックしてみることをおすすめする。
 ただヨーロッパの小国でも、アフリカやアラブ系の移民もいたりするので、その辺は注意が必要だろう。

 異世界の場合はどうだろうか?
 日本で異世界というのはほぼ「ヨーロッパ風」なのだが、ヨーロッパといったらキリスト教文化圏なので、あまりキリスト教を連想する名前はよろしくない。
 「ジョン(ヨハネ)」や「ポール(パウロ)」「マリア」などだ。
 まあこれも気にしすぎかもしれない。マリアなんてゴロゴロあるんだから関係ねえよ、と言われてしまえばそれまでだ。
 「ゲーム・オブ・スローンズ」とか、当の英語圏の異世界ものでも「ジョン」や「ピーター」が出てくるし(ああいうのはどういう感覚なのだろう? 一般的すぎて由来など気にならない、という感じなのかな?)。
 ただ筆者は気になる。

 あと外国人の女性名はラ行が多い印象がある。
 アイラとかラナとかレオナとか。
 日本人は「L」と「R」の区別があまりつかないし、カタカナで書けば両方ともラ行になる。外国語はラ行が多い、という印象を日本人は抱きがちだ。
 そのためオリジナルの固有名詞を考えるとラ行が多くなる傾向がある。
 ……と新城カズマ氏が昔言ってた。
 なるほどと思ったので書いておく。
 「ラ行を増やすな」というのではなく、ラ行が多いのはそういう理由、というだけの話だが。

 長々と書いてきたが、要するに一番言いたいのは「検索しろ」。
 これに尽きる。
 あとはもう、個人の音感のセンスの問題だ。教えようがない。

 それと日本人編でも書いたが、
・短い方がいい
・他作品の同じ名前を避ける
 と、これは外国人名でも言える。
 特にカタカナ名前は若い読者には馴染みが薄いので、なるべく覚えやすい短い響きのものにした方がいい。
 主人公の名前をヴェルティンゲトリクスとかプブリウス・コルネリウス・スキピオ・アフリカヌスとかにしないようにするのが一番大事だ。
 
 あとは自由に。
 なにしろあなたの小説なんだから。

(おしまい)


※マデューカス
 このキャラの名前は、自分の大好きな映画「ミッドナイト・ラン」に出てくる横領犯ジョナサン・マデューカスからもらっている。あだ名が「公爵(デューク)」なので、それが使えるかもしれないと思ったのだ。
 ずっと後にロンドンのコミックイベントに行ったとき、現地の社長さんに(スコットランドの人なので現地ともちょっと違うのだが)、イングランド人でマデューカスという名前はアリかナシか聞いてみた。
 その社長さんが言うには、自分はその名前は聞いたことはないが、まあアリなのではないか、ということだった。なんとなくエキゾチックな響きに感じる、とも言っていた。

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