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韓国版万引き家族!?「パラサイト半地下の家族」をレビュー

※本レビューはややネタバレを含みます。未見のかたにおかれましてはご注意ください。

現時点では世界一不穏な映画を作ればうまい監督の巨匠であるポン・ジュノ監督による「パラサイト半地下の家族」を観てまいりました。

わかりやすくいえば、間違いなく傑作といえる出来であったことをここに書いておきます。

ただし、過去作の「グエムル」や「殺人の追憶」などと比較すると詰めが甘いというか心に与えてくるダメージや不穏さは少なくなっていたのは寂しい限りでした。

あらすじは簡単に説明すると貧乏な一家が金持ちだが頭が悪い資産家一家に取り込み、彼らを利用してそしてそのための邪魔者を排除しながら生きていくという中々不穏なもの。

しかし、本作は終盤まで終始コミカルで描かれるので不愉快指数は少なくかえってそのコミカルさが終盤起きてしまう悲劇の切なさ・惨劇の恐ろしさをよりキツいものにしてしまうブラックコメディに作り変えることに成功している。

主人公一家の父親は「殺人の追憶」や「グエムル」でポン・ジュノ監督とコンビを組んでいたソン・ガンホが演じている。

体はでかいけど脳味噌が足りないキャラクターをガンホさんはまた巧みに演じている。

俺はてっきりこの映画もしかして「尼崎事件」みたいに貧乏家族が金持ち家族を洗脳する・・・みたいな内容になるのかとおもったらなんと大違い。

それどころか、金持ち家族の家の地下に寄生していた昔の使用人夫婦と殺し合うという内容に突き進んでいくのであった。

大体アメリカ映画であれば、金持ちを一緒にハメるために貧乏人同士が知恵をひねりだしながら共闘するオチになりそうだが内輪揉めで争い合うようになっていくというのは実にアジア的なオチである。

貧乏一家も余計なことをしなければいいのに、金持ち家族がいないのをいいことに家を占拠してやりたい放題をやり始めたり、そもそも両家族のことを知っている人(共通の知人が息子にいる)がほかにいるのにわざわざ家族総出で金持ち一家に寄生しようとするなど・・・「こんなことするから貧乏人のままなんじゃん」と苦笑してしまうこと請け合いである。

技術とその場の機転は優秀なんだけど、立ち回りが悪い人って永遠に出世ができない。って代表例だ。

対する金持ち一家も人使いが悪く、頭も悪い(こんなバカが大企業の社長というのがアホらしいが、そこがリアリティがあって恐ろしい)あっさり人に騙される・・・と思いきやそれも上から目線で見下していたからだった・・という話になってしまう。

うちの爺ちゃんも金持ちだったけど、社員をコキ使いすぎて恨みをいっぱい買っていたなあ・・・と思い出してしまった。

だます側・騙される側双方そろって感情移入できない。

同じ格差を題材にした日本の「万引き家族」なんてのもあったが、所詮ヒューマンドラマだったあれと違い本作は人間のむき出しの欲望と愚かさを描いており、日韓貧乏映画プロレスは韓国の大勝利であった。

ウリナラマンセー!!!


いつもであれば全文にわたってあらすじを書いてネタバレをしてしまうが、本作に関してはややネタバレでとどめておこう。

点数は・・・75点/100点

非常に面白いのでみなさんにぜひみてほしい力作である。


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