合同誌「故障かなと思ったら」に寄稿した拙作「故障とは言うまいね?」のかなり遅くてちょっと長いあとがきのような宣伝。

 おおよそ一年前に「ねじれ双角錐群」の説明書SFアンソロジー「故障かなと思ったら」に寄稿した。
 本書は昨年の2022年11月20日に開催された「文学フリマ東京35」で頒布されたものであり、イベントでは好評を博して終わり、多くの方にお買い求めいただいたと聞き及んでいる。

 現在は電子版が発売されている。
 それがこの度、2023年10月17日まで無料キャンペーンが行われることになった。

 そのため更に多くの人に本書を手に取って貰える機会が増えるだろう。
 なので、ここで少し宣伝を兼ねて、自作のあとがきのようなものを書いてみたいと思った。ただ既に他所で書いている可能性もあり、もしかしたら二度目のあとがきになってしまうかもしれないけれど。

 私は本書にて「故障とは言うまいね?」という題でSF作品を書かせていただいた。少し紛らわしいことをしたと思っている。アンソロジーのタイトルが「故障かなと思ったら」なので少し紛らわしいタイトルを付けてしまったと今となっては少しだけ気にしている。ただいつかは、アンソロのタイトルと同じタイトルで作品を発表してみたいと企んでいる次第である。真面目なことを言うと、モラルの問題としてやらないとは思う。

 あとがきというのを書くと表明しておいて少し日和るようではあるけれども、本当のあとがきというのは私の作品を読んだ方、もしくは読もうとしている方に向けて書くものであるから、詳しい作品の内容を話したところで前者の方にして見れば「何度も説明があってくどい」となるだろうし、後者なら「ネタバレになる」と怒られそうである。

 なので、少し面白そうな切り口から本書を手に取るきっかけを導入してみたいと思う。

「説明書+SF」で話を考えるのなら、あなたはどんな物語を作るだろうか。

 私は何度も書くけれど、主宰からこのテーマを与えられて、SFと説明書なら親和性がかなり高いのではないかと思い、集中的にネタを考えては捨ててを繰り返せた。この練り込みがないと作品はどこか粗が目立つようになってしまう。一発で「決まり」となるネタももちろんあるが、書いているうちに雲行きが怪しくなってくることも多々ある。結局はどれだけ面白いネタでもあっても、明日の自分の感性、一時間後の自分の感性に照らし合わせれば物足りなくなるのは必定なのだ。事実、私は「故障とは言うまいね?」を草稿を作るところから始めて、何度も変更を重ねてきた。それを可能にしたのはアイデアを誘発しやすいテーマだ。頭の中で枝分かれする展開を上手くコントロールしながら、ネタを固めていく。

 誰かに期待されている原稿でも、発表する予定のない原稿でも、取り組みに何一つ変わりはない。展開や構成で破綻しているところはないかとか、そういった物事が頭には浮かんでくる。同時に気になるのはテーマからはみ出していないかという疑念だ。あまり乗り気でない原稿にはアイデアが浮かばずにやっつけでテーマを深掘りしてしまうことがある。そういう作品はたいてい書いているうちににっちもさっちもいかなくなる。

 このアイデアの連鎖性というか数珠繋がりになる現象はどうして起きるのだろう。
 意図的に起こすのならば、何らかのテーマを自分の側に引きつけるのを意識するとやりやすい。
 一旦、自分事としてテーマを見つめ直すと、俺ならこうするだろうとか、こういうことをやってみたいとか、良いひらめきが連続するものだ。数多く湧いた案が削り合いを行って作品の背骨となってくれる。

 私は本書のテーマを知ってから頭の中でアイデア同士のぶつかり合いが起きていた。
 きっとそのきっかけはねじれ双角錐群の他の群員の方々の存在があったからだろう。
 あの人なら、こういう切り口でやって来るだろう。
 あの人はこういったやり口で話をこしらえるかも知れない。
 そんな仮定の連続があり、私の頭には「仮想アンソロ」が出来上がるのだ。あとはその作品群に負けないように自らの作品を高めていくだけである。

 いいテーマと秀でた著者陣の存在によって、私はいくつものインスピレーションに恵まれた。
 それを是非皆様にも体験して頂きたいと思っている。
 アンソロを読んで「この人よりは上手く書ける」とか「自分ならここははもう少しこうする」とか、自然と頭が創作を始めてしまう感覚は恐ろしく楽しい。

 改めて。
 説明書とSFをテーマにして皆様はどんな話を思い浮かべただろうか。

 是非、その答え合わせをするためにも、電子書籍の「故障かなと思ったら」をお買い求めいただきたいものである。繰り返しになるが、2023年10月17日までは無料だ。

 この機会にとりあえず積んでおくというのもありだろう。無料期間に手に入れたものは、もちろんいつまでも無料であるのだから。

 そして、自分だけの説明書SFを皆様にも作っていただけたら幸いである(ちなみに私は実際に「ねじれ双角錐群」に所属する前に、同じようなことをして実際に短編を書いてみたことがある)。もし私の作品によってインスピレーションを働かせるきっかけとなったなら、実に光栄なことである。別に誰の作品をきっかけにしても構わないのだけれど。

 小説という形を取る必要もなくて、例えば「こういうテーマを扱っている作品群を読んだが、自分ならこうしたなあ」みたいなことをブログやSNSで書いても良いかもしれない。

 そうしていつかどこかで、どなたかの成果物を拝見する機会があったのならば、きっと楽しいだろうなと思いながら。

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