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つまらない人

彼はつまらない人だ。


本人は好き嫌いがないからだと言うが、そんなことでは到底説明はつかない。魚の骨もエビフライのしっぽも飴玉も丸呑み。

うどんだってイカの刺身だってこんにゃくだって高野豆腐だっておもちだってあっさり飲み込む。


彼はものが喉に



つまらない人だ。






彼もつまらない人だ。


小中高と生徒会長を務め、その早口演説で名を轟かせた。

大学生になると大学で知り合った仲間とヒップホップサークルを立ち上げて、即興ラップで腕を鳴らした。

その後、彼はアナウンサーとして特にお昼の生放送で活躍している。


彼は言葉に



つまらない人だ。






彼もまた、つまらない人だ。


彼は冬になるとよく風邪を引いていた。休むほどじゃないといつも学校に来ていた彼は風邪薬を持っていた。しかしそれは決まって青か銀で黄色ではなかった。

天気予報で花粉の量が予報されるようになって季節が暖かくなってもまだマスクをする人がいる中で彼は1度もマスクをしなかった。


彼は鼻が



つまらない人だ。






当然、彼もつまらない人だ。


彼は小さい頃から野球をやっていた。センスはまあまあ良かった。

ある頃から長打率で名を轟かせ、敵チームの監督からは「あいつのバットの芯よりグリップ側にボールが当たってるのを見たことがない」と言わしめたほどだ。


彼は打球が



よく伸びるパワーを持っていた。


しかも彼はいつもどこか余裕のあるというか、暇そうな顔をしていた。

「どこか飲みに行かないか」

と誘えば、いつも

「あぁ、もちろんだ」

と快諾した。


彼は予定が



がら空きだったのだろう。


その上彼はディベートが得意だった。高校1年の頃にその才能の片鱗を見せ、大学生に上がる頃には世界中の人で行われる大会に出るほどだった。

彼はアメリカで「アンサーのスピード狂」と呼ばれるほどに有名だった。


彼は返答に



早さを求める人だった。



そんな運動も出来て、勉学も得意で、友達付き合いも申し分ない彼の唯一の弱点が「合コンで百発百中でウケる方法が千原ジュニアのすべらない話をオチから話すことだと思っていること」だ。




彼はつまらない人だ。


〈完〉

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