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「ヤマノススメ」の影響で富士山に登った大学生3人のはなし

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エッセイシリーズ第2弾。2023年9月の登山記です。
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「ヤマノススメ」の影響で富士山に登った大学生3人。0話

「ヤマノススメ」の影響で富士山に登った大学生3人。0話

 私には3年前に学生団体で知り合った同じ大学の友人がいる。アニメとドラクエが好きで、論理的なツッコミ派の男だ。Kというその友人の家によくお邪魔しては、朝までいっしょにアニメを見たり、どうでもいい話をしていたものだ。別に夏目漱石の小説のようにこのあと恋人を取り合うことも悲劇の別れになることもない、健康な付き合いだ。

「なんか山に登ってみたくなったんだよね」

 どちらかと言えばインドア派なKが唐突

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土砂降りの大山を気合いで攻略する

土砂降りの大山を気合いで攻略する

3700mの富士山を、登山初心者が登るにはどうすればいいのか。技術か、体力か、経験か、道具か。現状も課題も何も分からない。強いて言えば分からないことが課題。と言うことで、百名山で肩慣らしと行こうと、鳥取県の大山登山をすることにした、そんな話である。

鳥取県西部にある独立峰、中国地方で最も高い山、大山(1700m)。島根や鳥取での信仰の対象でもあり、8合目には天然記念物のキャラボクという低木の森も

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夜行バスに乗り遅れた!さてどうする!〜「ヤマノススメ」を見て富士山を目指す大学生〜

夜行バスに乗り遅れた!さてどうする!〜「ヤマノススメ」を見て富士山を目指す大学生〜

富士山を目指すにあたり、まずは夜行バスで東京へ向かい、そこから静岡の東部、沼津を目指す。広島からだとこのルートが最安なのだ。夜行バスも含めると5日間の旅になる。それでもなるべく荷物を減らすため、荷物はバックパックひとつにおさめた。真夏でも頂上は真冬並みの気温なため、ヒートテックやらジャケットやらがどうしてもかさばってしまう。なんとか詰め込んで家を出発、午後4時に駅に集合した。

広島へは電車で3

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富士山初日は台風と高山病との戦い

富士山初日は台風と高山病との戦い

朝6:30。3人のアラームが同時に鳴った。ここから沼津駅→御殿場駅→須走口登山道というルートだ。足早にホテルを去り、通勤通学でいっぱいの列車に乗る。天気予報は台風の予想が遅くなったと報じているが、シンプルに雨模様らしい。

御殿場についたら、数十分バスを待つ。帰りもこの御殿場駅を使うので、要らない荷物をコインロッカーに押し込み、手持ちは行動食と水、防水、防寒グッズのみに。

バスに乗り、1時間ほど

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山小屋は寝られない!絶望のコンディションで富士山山頂、ご来光を目指す

山小屋は寝られない!絶望のコンディションで富士山山頂、ご来光を目指す

富士山登山において、もっとも難しいこと。それは、山小屋で寝ることである。合宿所のような寝床に分厚い寝袋は素晴らしい設備に感じるし、無茶苦茶に疲れてるんだから問題ないでしょと思ったら大間違い。空気のないということの恐ろしさを存分に味わう羽目になった。

まず、酸素が足りないため、寝転がっていてもジョギングほどのスピードで呼吸する必要がある。そして、眠りについたらついたで、十分な酸素を取る事ができな

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富士山の急斜面を爆速で駆け下りる大砂走を知っているかい?

富士山の急斜面を爆速で駆け下りる大砂走を知っているかい?

前回までに、富士山最高峰剣ヶ峰の登頂までを書いた。マガジンにまとめているので、是非この後に見て頂きたい。今回は、御殿場ルートでの下山の話。

御殿場ルートは、富士登山主要4ルートの中で1番過酷とされているルート。標高差、道の距離ともに1番大きいなのだ。そんな御殿場ルートでの下山を選んだのには、理由がある。

まず、バスが御殿場駅へ出ていること。行きで御殿場駅に荷物を預けているので、便利。ち

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