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刀剣の購入経路の比較


 

刀剣の購入経路、色々

「自分の刀がほしいな……」と思った時、入手経路は色々です。
で、ちょっとネットで情報収集をすると、
「最初は〇〇がいいと思います」
「△△だけはやめとけ!」
みたいな情報が色々出てきます。
で、時々、
「『最初は〇〇がいい』って言われてるけどそうとは限らない」
「『△△だけはやめとけ!』って言われるけど使い方次第だよ」
みたいな、反論に行き当たったりもします。
色々な情報を見て回るうちに、結局良く分からなくなり、
最初の一歩が踏み出せない――みたいな感じ、あると思います。
これがどうして起きるかというと、それらの情報を書いている人の
価値観は人それぞれであり、さらに言うと、その人達の価値観と
自分の価値観が同じとは限らない、という点に集約されます。
ここでいう価値観というのは、購入に当たっての「優先順位」。

一番いいのは、「これは自分の価値観に近いかも」という記事を見つける
ことなんですけど、そのためには色々読んで回る必要があります。

という事で、何かの参考になるかもしれない記事を、
私も1つ、ネットの海に増やしてみようというのが今回の企画です。
刀剣をお迎えしたい、と思っている方々の一助になれば幸いです。
 

一般的には、こんな感じ

レアケースまで拾い上げようと思ったら、お爺ちゃんの遺品整理してたら
蔵の奥から出てきた! みたいな入手経路もあるんですが、
さすがにそのレベルまでは網羅できませんので、ここでは、
「よし、刀をお迎えしよう」と、自分からアクション起こせる範囲で。
ザックリと図説してみました。

おそらく一般的には、こんな感じ。


一般的な刀剣の入手経路

①~⑤で分類してみましたので、それぞれについて解説したいと思います。
 
 

①イベントで購入する

 

ざっくり二系統

イベントです。展示即売会です。
こちらについては、「①-1」と「①-2」に分けてみます。
いずれも、実物を目の前で見て検討できる、というのは利点です。

①-1:刀鍛冶イベントで購入する

現代刀匠を主役に据えて、新作刀の展示即売を行うイベントです。
有名百貨店の催事場やギャラリーなどで開催される事が多いです。
 
 ・現代の名工による『日本刀』展 2023年6月28日(水)~7月4日(火)
 ・刀匠 月山貞利展 ~百錬精鐵~ 2023年10月25日(水)~10月30日(月)

現代刀匠の皆様の入念作(特に力を入れた作品)が並ぶイベントです。
刀匠が直接提供するので、新作です。購入者が最初の所有者になります。
会場は非常に入りやすく、美しい刀剣を見学するだけでも楽しいです。
美術館のような展示方法ですので、ガラス越しに、ライトアップされた刀を見る形になります。刀を手に取らせてもらうのは、ほぼ不可能。
また、その価格帯も、初心者にはちょっと背伸びが必要な事が多いです。

②-2:刀剣商イベントで購入する

刀剣の専門店が主役となって、様々な刀剣の展示即売を行うイベントです。
これも、複数の刀剣商が合同で行う形(コミケ、コミティア系)と、
お店が単独で行う形(アニメイト、とらのあなのセール系)があります。

【合同】
 ・大刀剣市2023(東京) 2023年11月18日(土)~11月19日(日)
 ・刀座2023(大阪)   2023年4月1日(土)~4月2日(日)
合同の場合は、とにかく売り場面積が広く、品数が豊富です。
店舗のPRや格付けも兼ねるので、すごい刀が並んでたりします。
ある種のお祭なので、混雑具合はまぁまぁすごいです。

【単独】
 ・株式会社安東貿易(京都回)2023年9月9日(土)~9月10日(日)
 ・ 美術刀剣松本(仙台回)2023年10月27日(金)~10月29日(日)
自社ビルで開催されるパターンと、地方巡業のパターンがあります。
大抵はそれほど混雑しないので、落ち着いて刀を見ることができます。
想像するほど、「何か買わなきゃ出られない」みたいな雰囲気は無いです。
 ※自社ビルでの開催だと、後述の ④-2 とほぼ一緒になります。

いずれの場合も、実際に刀を手に取る事ができたり、お店の方に色々と
相談したりできますし、刀に限らず刀装具(鐔とか金具類)も並びます。
価格帯も、上から下までバランス良く並ぶことが多いです。
【単独】の方だと特に、10万円くらいの品も並んでたりします。
 

②オークションで購入する


賛否両論の……

オークションです。これは本当に賛否両論です。全体では、否が優勢かも。
ただ、便利だし、出物の数は多いし、見てて楽しいです。

 ・ヤフオク:アンティーク、コレクション>武具>「日本刀、刀剣」

ヤフオク以外のオークションもありますが、うーん…… って感じ。
開店休業状態だったり、簡単に出品取り消しされて落札できなかったり。
ですので、一旦ヤフオクを例に書きます。
ヤフオクに関しては、出品者が個人のケースと刀剣商のケースがあります。
ネガティブ意見が出やすいのは刀剣商の場合、
「なんでお店で売らずにヤフオクに出すの?」って所で裏読みされます。
実際の刀を良く見たら傷や欠点があるけど、Web上の画像なら誤魔化せる、
とか、そういう可能性。
これは売り手が個人の時も一緒で、写真を撮る際の光の当て方とか、
トリミングの仕方とかで色々誤魔化しが効くよね、というリスクです。
オークションは原則自己責任です。返品可能、とか書いてあっても不安。
なので、その辺を割り切れるかどうかが、オークション適性になります。
多少傷とかあるかもしれないけど、この値段ならアリでしょ、みたいな。

あと超有名な刀は基本、偽物だと思った方がいいです。虎徹とか村正とか。
 

③個人から購入する


あまり無いケースかな

刀剣は、「銃砲刀剣類登録証」が付いていれば個人売買も可能です。
が、オークションを通さないこのルートは薄いかな、と思っています。
一応経路として書きましたが、私がこの記事で想定しているのは、
「色々考えた結果、やっぱり自分だけの真剣が欲しい」と思った人、です。
多分、身の回りに本物の刀を持っている人はいないか、
いても「最近、最初の一振を手に入れて大切にしている人」だと思うので。
SNSで写真UPした人に「その刀売ってもらえませんか?」とか言えないし。
いや、でも「この刀を引き取ってくれる方を探しています。
お値段はDMにてご相談」みたいな投稿も、無い訳ではないけれど……

この辺は縁や巡り合わせなのでなんとも言えませんが、
もし機会があったら、検討してもいいかもしれません。
相手との距離感や、信頼関係次第で。あとは予算との折り合いで。
 

④刀剣商から購入する


④-1、④-2、④-3 で分岐

ちょっとややこしい書き方をしていますが、まずそれぞれの概要を解説。
④-1:刀剣商が刀匠に「うちで売る刀を打ってください」と依頼し、
   刀匠が新規作刀した刀を刀剣商に卸した刀を店舗で購入する形。
   新作の現代刀。購入者が最初の所有者になります。
④-2:刀剣商が個人等から買い取った刀を、刀剣商の店舗で購入する形。
   場合によっては研磨や拵の新調、補修などを行ってから販売する。
   現代刀から古刀まで。安価から高価まで。
④-3:④-1、④-2 は刀剣商の実店舗で購入する形を想定していますが、
   ④-3 は刀剣商のWebページで購入し、郵送してもらう形です。
 

④-1:刀剣商で購入する(新作刀)

世に生まれた刀の、最初の所有者になりたい、という希望がある場合、
このルートは選択肢の一つになります。
利点は、刀が既に完成している点。
その刀の姿や刃文など、実物を確認した上で購入を検討できます。
その刀がもし白鞘だけだった場合も、多くの刀剣商で「応相談」として、
拵の製作を引き受けてくれたりもします。
 ・池田美術  【新作現代刀・超軽量・樋鳴り抜群】「長船助光」74.1cm

④-2:刀剣商で購入する(中古刀)

中古、という表現が適切かどうかは微妙ですが、分かりやすさ重視で。
実店舗を構える刀剣商というのは、信頼と実績を重視します。
なので、そうそう下手なものは売れません。
お店を訪問して色々な刀を見て、お店の方と少し会話してみて、
という時間を過ごすうちに、自分が本当に欲しい刀の姿が見えてきたり、
自分の欲しい刀を店員さんが奥から出してくれたり、という感じ。
この流れも、縁や出会いに恵まれるかどうかで千変万化です。
良い店に出会えるかどうか。ちょっと勇気を出してお店に入れるかどうか。
とりあえず、Googleマップの行動範囲で「刀剣店」と検索を……とか。
あと、刀剣商イベントに出店するお店は、名の通ったお店です。
 ・大刀剣市2023 出店者一覧

④-3:刀剣商で購入する(通販)

④-1、④-2 という分け方とは別の切り口で、
お店に行かず通販で購入、という方法もあります。
難点は②のオークションと共通で、写真を撮る際の光の当て方とか、
トリミングの仕方とかで色々誤魔化しが効く、という点。
ただ前述の通り、実店舗を構える刀剣商は信頼と実績を重視します。
今どき、口コミで☆1 付けられる、とか色々ありますから……
という訳で、ヤフオクよりは信頼性高いと思います。一般論として。
オススメは、欲しい刀がピンポイントで決まっている場合かな。
「兼定の刀が欲しい」「水心子正秀を探している」みたいな。
なんせWebブラウズなので、短時間で大量に探せます。
 ・刀剣杉田
 ・永楽堂
 ・葵美術
 ・e-sword
 ・刀心
 ・刀剣 はせ川  などなど……

店舗のサイトを見て回るのも良いですが、条件を全部 Google にぶち込んで
検索してダイレクトに当たってみるというのも手です。
私がよくやっていたのは、
 ・Google画像検索:「短刀 冠落とし 保存刀剣」期間指定=1年以内
みたいな感じ。

基本的にはAmazonや楽天の通販と一緒の流れです。ECサイトです。
いいな、と思った商品をカートに入れて、支払い設定を入力。
多くのサイトではクレジットカード払いができますし、
サイトによっては、分割ローンも準備してくれてたりします。
注文したら、早ければ3日、遅くとも10日くらいで刀がお手元に。

④-3は特に値段が明示してあることが多いですが、重要刀剣とかになると
「お問い合わせください」みたいな表示になることが多いです。
このパターンの刀は、1,000万とか1,600万とかって値が付いてます。大抵。
 

⑤刀匠から直接購入する


産地直送、という形

こちらも、2通りに分けてみました。刀匠から直接購入する点は一緒。
⑤-1:刀匠が自身の作品として打った刀を、刀匠自身が販売する形。
⑤-2:購入希望者が刀匠に依頼し、自分の為に打ってもらう形。

⑤はいずれも、自分の支払ったお金が直接刀匠に届きます。
「推し刀匠がいる」とか「微力でも刀剣文化を後世に残す一助になれば」
みたいな気持ちがある場合、この選択肢は有用かと思います。
どれだけ高値で刀剣商から買っても、原則、刀匠には届きませんので。
この辺、本やゲームの中古売買と一緒ですね。

⑤-1:刀匠の自作販売

誰かの依頼ではなく、刀匠が自分の作品として作刀します。
当然、刀匠自身のオリジナリティや特徴、作家性が出やすいです。
たまに実験的な作品も出たりするので、面白いです。
研磨されていない「打ち下ろし」で売られることもあれば、
研磨後の「白鞘」、全て揃った「拵付き」の場合も。
場合によってはコンクール入賞作も出たりします。
 ・刀鍛冶 長船助光 > 在庫品紹介
 ・大橋日本刀製作所 > 販売商品

利点は、完全新作刀を「ほぼ待ち時間なく」入手できる点と、
作者から直接購入なので、間違いなく本物(偽銘ではない)という点。
あと完成品なので、写真や実物を確認した上で購入検討できる点です。

⑤-2:刀匠に作刀依頼をする

刀匠に「こんな刀を作ってください」とお願いする形です。
刀匠のWebサイト、SNS、あるいは全日本刀匠会の会員名簿から電話、
などの方法でコンタクトを取り、まずはご相談する所から始まります。

刀匠にも受けられる注文と無理な注文があるので、
 ・ぜひ◯◯刀匠に、作刀をお願いしたいと思っている。
 ・長さ、造りなど、希望はこんな感じで考えている。
 ・今、ご依頼は可能でしょうか?
みたいな感じでのご相談になるかと思います。
Webサイトに価格帯などが記載されていれば事前に予算チェック。
直接お電話の場合は、希望を伝えて先方に概算見積を出してもらう感じ。

相談内容がまとまって、タイミング的にもそろそろ取り掛かれそうです、
というタイミングで最終的な「依頼する / しない」の確認があり、
「依頼する」となったら、着手金、あるいは前払いを行う流れが一般的。
フルオーダーメイドなので、作刀が始まったらキャンセルはできません。

利点は、自分の好みの長さ、厚さ、造り、刃文、樋などが選べる点や、
銘切りで希望の漢字や熟語を為名、追加名として入れてもらえる点。
また、利点とは少し違いますが、
「自分がいなければこの世に生まれなかった一振」
――という特別感は至高です。
難点は、とにかく時間がかかること。
早く手にしたい! まだですか!? という方には不向きな選択肢です。

「作刀依頼」に関する価格帯は別記事でもザックリまとめてますので、
もし作刀依頼をお考えの方は、覗いてみてください。
  ――「作刀依頼の相場感」2023年11月22日 19:54
 

なんでこんな記事を?

ぶっちゃけ、実際の刀の購入に進む方が一人でも増えたらいいな、と。

自分自身が刀を購入してからめっちゃ楽しいので、
迷ってる方がいたら「沼」に引き込みたい、と思って書いています。
自分の刀をお手入れしたり、写真撮ったり、SNSで同好の士を見たり。
博物館や寺社仏閣で展示されてる刀の見方も色々変わってきます。
とはいえ、決して安いものではないし、
置き場所とか保管の仕方とかお手入れ頻度とか考えると、
なんとなく二の足を踏んでしまう、というのも良く分かります。
なので、判断材料の一つとして、何か記事が書けたらいいなと思いました。

私自身、気がつけば大小四振の刀剣所持者になっていて、
 ・最初の一振は、拵付きの脇差。京都の刀剣店を訪問して購入=④-2
 ・二振目は、白鞘入りの刀。刀剣商が流した品をオークション=②
 ・三振目は、刀匠への作刀依頼。「作刀依頼にて短刀を願う」=⑤-2
 ・四振目は拵・白鞘付きの短刀。刀剣店のWebサイトでの通販=④-3
と、色々な購入経路を通っているので、体験含め、まとめてみました。

それぞれ、利点と難点がありますので、
どんな刀が欲しいか、何を最優先にするかで選ぶとよいかと思います。

 

#刀 #脇差 #短刀 #日本刀 #刀剣 #刀匠  
 

ヘッダー画像:自撮り写真・四振目の短刀「藤原元彦」拵

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