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子どもたち自作の『クソ将棋』 

近頃はテレビゲームに並んで昔懐かしいボードゲームや、新作ボードゲームが子どもたちの間で流行っているそうだ。
そして古くから伝統文化として確立している将棋も、藤井聡太棋士の出現がきっかけで、子どもたちにとって身近な遊びになってきている。
これから書く思い出話は、まだ藤井棋士がいない17~8年ほど前の出来事で、将棋と言えばおじいちゃんたちが縁側で、う~んと唸りながら棋盤を睨んでいる風景が思い浮かぶ、地味な趣味のひとつといった認識でいた頃の出来事です(笑)

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子どもたちがまだ小学生だった頃。
私の実家に家族で帰省していた時、夜になってゲームもなく、退屈になってきた子どもたちと将棋をしようということになった。
「確かここに将棋があったはず・・・」と母が将棋のセットを探すけど、どこにしまったのか見当たらず、わざわざ買ってくるのも面倒だし、段ボール紙で作ってしまおうということになった。
まず将棋盤を作って、次に将棋のコマ作りに取り掛かった。
誰もがコマの表の文字は覚えていても、対戦相手の陣地に入った時の裏の文字がわからない。

「確か、歩兵はだよね」
「うん、そして桂馬と銀将はだったよ」
「うんうん、じゃあ角行と飛車は?」
「えーーとね、んん?何だっけ?」
「あと香車は?」
「それもわからないねぇ~」

これじゃあ、ゲームにならないと諦めかけていた時、長男が勝手に裏の文字を考えて書き込んでいってしまった。

「飛車はじじいにしよっと」
その思い付きに乗っかって、続いて次男も
「角行はばばあね」
「そして香車はクソ!

一同笑いながらコマを並べ始め、相手陣地に入った時の効力も勝手に変更してしまった。

じじいは相手陣地に入った時はひとコマ後ろに後退する
ばばあは金縛りにあって動けなくなる。でもその代わりに相手に取られることもない
クソ!は、相手陣地に入ったら次の一手で敵王将を問答無用で取る事が出来る。

そして、いざ『クソ将棋』の始まり。
お互い自分のコマが相手陣地に入るまでは普通の対戦が繰り広げられているんだけど、一端飛車や角行が相手陣地に入ると、じじいは一向に前に進まなくなるし、ばばあに至っては相手陣地に入った途端動かなくなってしまう。
正しい将棋では飛車や角行は大活躍するコマなんだろうけど、『クソ将棋』に限っては全然頼りにならない。
以外だったのは香車がクソ!に変身した時だ。
相手陣地に入るや否や無敵のクソ!になるからだ。

「香車なんていらないよ」とか「クソ!なんてやだぁーーー」と毛嫌いしていたのに、対戦が展開していくうちに、クソ!の取り合いになっていく。
「くっそーー!あのクソ!さえあれば勝てるのに」と、いつの間にかクソ!争奪戦に様変わりしているのだ。

懐かしいなぁ~
この時は結構家族揃って熱中して『クソ将棋』を楽しんだものだが、あの時実感した家族の絆と一体感を、子どもたちは果たして覚えていてくれているだろうか?

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