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絵本『ひとあし ひとあし』自分を守る護身術

『ひとあしひとあし』
レオ=レオニ/作
谷川俊太郎/訳
<あらすじ>
ある日、はらぺこのこま鳥が小枝にいる緑色のしゃくとり虫を見つけ、飛びつこうとした。すると、しゃくとり虫は、「食べないでくれよ。ぼくはしゃくとり虫だ。便利なんだよ。いろんなものの長さを測るんだ」。そこでこま鳥は言った。「じゃ、わたしのしっぽを測っとくれ!」。しっぽの長さを測ってもらったこま鳥は感激して、しゃくとり虫を他の鳥たちのところに連れていった。
こま鳥の次はフラミンゴ、おおはし、さぎ、きじ、はち鳥、ナイチンゲールと、美しい鳥たちが登場します。最後にはナイチンゲールの歌を測ることになるのですが……。
 

ネタバレになりますが、絵本なので良いかな?
最後のナイチンゲールに自慢の歌声を測ってくれと、無理難題を押し付けられて大ピンチのしゃくとりむしでしたが、ここでも知恵を絞って乗り切ります。
ナイチンゲールが歌うことに夢中になっている隙に、ひとあしひとあし測っている振りをしてそのまま逃げてしまうのです。
体も小さく力もなく、毒や武器がある訳でもないしゃくとりむしは、唯一身に着けている知恵を使って難を逃れることができました。

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私は日頃仕事で初対面の相手に、自己紹介を求められる場面が度々あります。
「あなたの長所はなんですか?」と聞かれると、気が強いわりにコンプレックス満載の私は、言葉が詰まってしまいます。
趣味や好きな食べ物は?とか、短所は?という質問にはすらすら答えられるのですが、自分の長所や得意分野など、アピールする事柄には事前に考えて用意していないと、その場の雰囲気に呑まれて答えることができないことが多々あります。

それには自分の実力や性格などを、日頃から俯瞰して客観的に観察している必要がります。
今の自分に何ができるか?
今出来ることを最大限利用して、どこまで仕事をこなせるか?
しゃくとりむしのように、知恵を絞って自分という道具をフル活用して乗り切る術を身に着けていなければ、難を逃れることはできません。
その術はしゃくとりむしのように、たったひとつでも大きな武器になり得ます。
しゃくとりむしにとっては測ること
その世界で生き延びるための護身術です。
そのたった一つの武器を手にれることが出来れば、自信につながり怖いものなしです。
絵本の中の、淡々とひとあしひとあし測っていくしゃくとりむしを見ていると、いつの間にか非力な自分に置き換えて応援したくなります。


この絵本はレオ・レオニらしい、パステルとコラージュで表された草むらや鳥たちの構図が素敵です。アート絵本としても楽しめる一冊。
アメリカでは、この絵本を使った「長さ」の授業も行われます。ちなみに「しゃくとり虫」は英語で「インチウォーム(Inchworm)」
身近な虫なので子どもたちにも親しみやすく、作者が同じ『スイミー』と一緒に、低学年の子どもたちにもおすすめ絵本です。


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