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コンプレックスの克服と適材適所を教えてくれる絵本『しょうぼうじどうしゃ じぷた』

福音館書店《こどものとも》傑作集
作:渡辺 茂男
絵:山本 忠敬

<あらすじ>
消防署にノッポくんというはしご車と、パンプくんという高圧車と、イチモクさんという救急車がいました。3人は先日起きた大きな火事での活躍をそれぞれ自慢しています。その消防署にはもう1台、ジープを改造した小さな消防車「じぷた」がいました。
ノッポくん達の自慢話を聞いていると、じぷたは大きな火事のときに活躍した実績がないことを引け目に感じてしまいます。
 じぷたも「大きな火事の時に出動さえできれば、自分だって活躍できる」という思いを持っているのですが、ノッポ君やパンプ君やイチモクさんと一緒に並ぶと、自分がとても小さな存在だと思ってしまう等、じぷたは自尊心を持つことができないでいます。
ある日、山の中にある小屋が火事になりました。狭い山道を進むことができる消防車はじぷたしかいません。署長さんはじぷたに山小屋に向かうように指示しました。
 現場に向かったじぷたは火事が山全体に燃え広がるのを食い止めました。次の日の新聞で、じぷたの活躍が大々的に紹介されました。活躍が認められて、じぷた2号機が消防署に配備されることになりました。
 それまでじぷたを見下していた子ども達も『やぁ、じぷたがいるぞ。小さくてもすごく性能が良いんだぞ』とじぷたの存在を認めるようになったのでした。


この絵本を懐かしく思い出される方も多いのではないでしょうか?
私も幼かった長男と次男に何度も読み聞かせをした絵本なので、思い入れが深いです。
ストーリーは簡単明瞭です。起承転結がしっかりしているので物語の進行がすんなり頭に入ってきます。
小さくて大きな仕事ができないじぷたは、活躍の場がないことにコンプレックスを感じていました。
絵本ではこのじぷたの心情をうまく表現していて、自然に感情移入することができます。
絵もとても具体的で消防車など細かな描写がされていますが、背景の色合いはレトロでファンタジーな世界感を漂わせています。
最後はじぷたの特性を生かして大活躍をするのですが、それによって他のはしご車や救急車たちを卑下することはなく、適材適所を的確に示してくれています。

男の子は乗り物系が大好きです。
我が家の長男と次男も、ミニカーなど集めて遊んでいました。
この絵本を読んだ後、ドライブ中にサイレンを鳴らし素早く通り過ぎていく消防車や救急車に遭遇すると「あっ、いちもくさんだ!」と指差し、目をキラキラさせて興奮気味に眺めていました。
目的別に作られた働く車を通して、幼い子どもたちにも自分の得意分野や役割を考えさせてくれる絵本だと感じます。


1963年に発刊された絵本ですが、今でも書店の本棚に並べられています。
名作はいつの時代も読み継がれ、大人になった私たちにも思い出と初心を呼び起こしてくれる絵本となってくれています。


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