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共稼ぎ貧乏家族の繁盛記『からすのパンやさん』

『からすのパンやさん』
作&絵:かこさとし
出版社:偕成社


<あらすじ>
パン屋を営むからすの夫婦に、白色、赤色、黄色、茶色のカラフルな色をした4羽の赤ちゃん達が生まれました。
可愛い赤ちゃん達を愛情たっぷりに育てる、からすのお父さんとお母さん。夫婦二人だけで4つ子の育児をしながらのパン作りは忙しすぎて、仕事に手が回りきらず、からすのパン屋さんは段々貧乏になってしまいます。
食欲旺盛な4つ子達には、売り物にならない失敗したパンをおやつに食べさせる日々。
そんなある日、近所の子がらす達が4つ子と同じパンを食べてみたいと言い出します。食べてみるととても美味しい!
評判になったパン屋さんは大忙し。
子からすたちもパン作りを手伝って、アイデアいっぱいのパンをたくさん作りました。
そして大勢のからすたちが噂を聞いて押しかけてきて、大混雑の大騒ぎになり行列ができるほど。
大評判のからすのパン屋さんは、立派な素晴らしいパン屋さんになりましたとさ。

絵本作家のかこさとしさんの代表作のひとつなので、ご存の方も多いはず。
私の子どもたちも大好きで、特に次男はこの絵本のおかげかパン好きになりました。
見開き1ページに、たくさん描き込まれたパンを指差して「ぱく、ぱくっ!」と食べた振りして遊んでいました。
保育園時代には「大きくなったらパン屋さんになりたい」と、お誕生日会で発表するほどに、この絵本の虜になっていました(笑)
最初の頃は一つ一つのパンの名前を読み上げて聞かせていましたが、そのうち面倒になってしまい、しかもこのページに留まる時間がいつも長いので、夜寝る前の読み聞かせでは滅多にこの絵本は登場しなくなりました(笑)

子だくさんのカラスの夫婦が営む、いずみが森にあるパン屋さんが物語の舞台です。
カラスの子なのに黒ではなく、違った色の小さな子どもたちが4羽生まれました。
それでも、からすの おとうさんと おかあさんは、にこにこ うれしくて」と、名前を付け大切に可愛がって育てます。
この、それでもという一言が気になり深読みしてしまいました。
もしかすると障害を持って生まれた子どもを象徴しているのかも?と。
最後にパン屋さんのトレードマークになる、子カラスと同じ色の4色の風車が登場します。
そのことから、子カラスの個性を意味付けているのだということが伺えます。私の深読み通りだったとしても、それはただ単に個性の問題で、各々の個性が入り交じり躍動し、時に奇跡も見せてくれる生命力の象徴なのだとすぐに理解できました。

作者のかこさとしさんが絵本のあとがきで、この絵本の大きな影響と示唆を与えられた芸術作品の話をされています。

旧ソビエトのモイセーエフ舞踊団の「バルチザン」という演目に立ち会った時、登場人物の兵士、農民、労働者、老若男女の一人一人の人物描写が、心憎いまでに人間的な膨らみと細やかさで、舞踊的に描きつくされていることに心を打たれた。
個々の生きた人物描写と全体への総合化への大切さを学び、この絵本に登場するカラスの一羽一羽で試みました。もう一度カラスたちの表情を見て笑ってください。

からすのパンやさん<あとがき>より抜粋


いずみが森にあるカラス一家のパン屋さんは、子どもたちの手伝いもあって大繁盛します。
お客さんのご要望とアドバイスを真摯に受け止め、お店も奇麗にし品揃えを豊富にしました。
ビジネスとしても力を発揮して、客足が途絶えることはありません。

夕方になると連なって飛んでいくカラスを見かけると、もしかするとカラスのパン屋さんにパンを買いに行くのかも?なんて、想像も楽しいです。
一度食べてみたいものですね(笑)


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