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不妊治療や妊孕性温存について

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ファーストペンギン

ファーストペンギン

先日、私が所属している施設が主催しているカンファレンスが開催されました。
今回で第12回となりました。

私自身、医療者でもなんでもない人間ですが、第1回目からこのイベントの企画・運営に関わらせていただきました。12回目ともなると感慨深いものがあります。

今回は妊孕性温存の先進国として知られるDenmarkからクリステンセン先生をお招きして、開催しました。

一般の方々には意味不明かもしれません

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不妊治療を経験した方が親になること

不妊治療を経験した方が親になること

不妊治療という言葉のネガティブなイメージは以前に比べてかなり和らいだとは感じているものの、ハッピーなもの、というニュアンスはないと思っています。

不妊治療は、物理的にも、精神的にも、そして経済的にもかなり難しい治療です。

なぜこれが難しいのか、ということと、教育問題を考えていた時に僕自身が感じたことを綴りたいと思います。

不妊治療の難しさ不妊治療の難しさの根源の一つに「曖昧さ」が横たわってい

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不妊治療中の方の感染症対策について インフルエンザ、コロナ、RSウィルス

不妊治療中の方の感染症対策について インフルエンザ、コロナ、RSウィルス

インフルエンザについてコロナ禍が過ぎたものの、現在も様々な感染症が流行の兆しを見せています。
従来から、この時期の感染症の代表例であったインフルエンザがその筆頭です。

本来は冬シーズンのみで終わるはずのインフルエンザが、ほぼ年中流行しているような状況で、9月には、東京都含む数県で例年よりも早い「注意報」が発表されるなど、異例の事態になっていました。

これは様々な説がありますが、
1) 社会的に

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待ち時間に対する想い

待ち時間に対する想い

待ち時間、という言葉がどうも好きになれません。

僕がいるクリニックでも、入社当初から待ち時間短縮、という目標を掲げていて、ひたすらに無駄を削減する日々を今も続けています。

その活動に対しては、心から経緯を表します。
ただ、待ち時間(ニュアンス的には、待たせ時間)というのがなんとも幸せじゃない気がして、ずっと違和感を感じています。

待ち時間を削減し、待ち時間の感じ方を変えていくために、
医療機

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意識高いのは別に偉くないです

意識高いのは別に偉くないです

先日、友人と食事をしていた時のこと、
幸いにも第二子を授かったと報告してくれました。

以前、なかなかうまく子どもができない、という相談をしてくれて、
僕は夫婦それぞれと仲が良かったので、自分なりの考えを伝えました。

この夫婦の悩みは

「子作りしようと思うとなかなか仲良くできない」
「不妊治療をしようかどうか迷っている」
「妻は自分の体質をもっと良くしたいと思っている(切羽詰まってる)」

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計画的な受精卵凍結

計画的な受精卵凍結

最近ふと思うことが増えました。

計画的な卵子凍結よりも受精卵凍結では?という気持ち。

医療機関から見た時の卵子凍結の最大の課題の一つは、
凍結後の利用率が「まだ低い」状態であることです。

なぜこれが課題かというと、医療機関の努力でこの確率を改善することが非常に難しいためです。

いわば患者さん側の対応が必須であり、社会的な問題でもあります。

そして、これが今改善傾向にあるかといえば、まだま

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性的同意の重要さと難しさと

性的同意の重要さと難しさと

私達は、性行為にあたり、性的同意を得ることが義務付けられています。

性犯罪に対しての厳罰化は僕も大いに賛成していますし、
性的同意の重要さも理解しています。
ぜひこの徹底がされてほしいと強く願う。

特に性的同意を得るのが難しい状況を自分自身の体験から想像してみましたが、特に若い時だろうなとか思ったりします。

まだセックスがどういうものかよくわかっていなかったり、やたら鼻息荒い、勢い任せの年代

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RIF(反復着床不全)って誰が決めたのという話

RIF(反復着床不全)って誰が決めたのという話

以前からERA検査が妥当性がどうだ!ということで、標的にされています。

個人的には、ERA検査なのか?ということを感じていて、
そもそも反復着床不全(RIF)って何なんだろう、というところを感じていました。

PGTを行わない場合、形態的な良好胚を移植した時の妊娠率が40%だとした場合、2回連続で移植に失敗すること自体はそんなに稀じゃないはずです。

4割バッターが今日は5打数無安打、みたいなこ

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そもそも妊孕性温存治療をしなくてよくなる可能性

そもそも妊孕性温存治療をしなくてよくなる可能性

久々に論文チェックをしてみました。
なかなか気が向かずにいましたが、少しずつ、自分なりのペースで書いてみたいと思っています。

さて、今回紹介したい論文は以下のタイトルです。

薬剤の進歩は目を見張るものがあります。
そもそもがん治療における生存率の劇的な上昇も検査技術の向上や検査の普及による早期発見と、抗がん剤治療を始めとした薬剤治療によるものが大きいと考えていますが、薬剤の進歩はここに留まりま

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【週末に考える】少子化の根本的な問題

【週末に考える】少子化の根本的な問題

1ヶ月仕事を離れ、いろいろなこととの距離ができてしまいました。
不思議なものだなぁと思います。

不妊治療、というものに対しても、ありがたいことに少し距離をおいて見ることができました。

僕は少子化を解決したいと思っているわけではありません。
授かりたいと思っているけれど、知識の無さが原因になって、不妊状態を招いてしまっている人たちの助けになればと思っているんだなということを再確認しました。

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子宮内膜症と流産の関係

子宮内膜症と流産の関係

子宮内膜症は現在月経のある方の10%に認められると言われており、潜在的な患者数が250万人以上いるとされています。
また、子宮腺筋症は、子宮筋層に子宮内膜組織が存在する子宮内膜症のサブタイプです。子宮内膜症と子宮腺筋症は両方とも、出生率と流産を含む妊娠結果を変化させることが知られています

それほどポピュラーな疾患です。
子宮内膜症の簡単な解説は以下のnoteでもしています。

今回紹介する論文は

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これからの妊婦さんへのコロナワクチン接種は必要?

これからの妊婦さんへのコロナワクチン接種は必要?

コロナが5類分類へと移行されました。
マスク一つとっても、なかなかいろいろな議論があり、本当に日常を変えるということは大変なんだなと痛感しています。

ちなみに、僕自身は極力マスクは外していますが、エチケットとして携帯はしています。
いちいち、変なリアクションをもらうのも煩わしいし、医療機関にかかるときや初めての人と会うときなどは、マスクをしておいて、
「マスク外してもいいですか?」と尋ねたほうが

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社会的地位や学歴と妊娠・出産

社会的地位や学歴と妊娠・出産

今、日本においては、妊娠・出産は誰にでもできるものではない、と感じている人が多いと思います。

先日ニュースにもなっていましたが、少子化対策が実るイメージは、なかなかつかないのではないでしょうか。

ニュースなどではとかく「財源」という言葉が踊り、増税だ何だという議論になり、炎上しやすいテーマだなぁという印象さえあります。

個人的に、妊娠・出産の後にある育児と社会の問題が非常に根深いなと思います

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社会的卵子凍結に関しての日産婦から東京都への申し入れ

社会的卵子凍結に関しての日産婦から東京都への申し入れ

先日、日産婦から東京都に対して、社会的適応の卵子凍結に関しての申し入れを行いました。

個人的には、至極まっとうな内容だと思いましたので、簡単に紹介したいと思います。

卵子凍結は当事者の自由意志による判断で行うまずはここです。
卵子凍結云々の前に、そもそもの性と生殖に関する知識がない状態でやみくもに「キャリアと将来の妊娠のために」という文句で、卵子凍結を推奨するのは良くない、ということです。

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