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サッカー選手の体力特性

はじめに

サッカーは、瞬発的な高強度運動と、歩行、ジョギングなどの低強度運動を交互に繰り返す間欠性運動であり、単に早く走り、強く蹴ることではなく、瞬時に変化する状況下で最適なパフォーマンスを発揮することが重要です。

近年のサッカーにおけるフィジカル(体力)に対する考え方の変化は著しく、選手が①戦術の理解、②相手に走り負けないスピードとスタミナ、③ボールをキープしコントロールする高いスキル、を備えてプレーしなければチームとして戦えないとされています。

②の相手に走り負けないというのは、試合中に相手より多く走ったかということではなく、1試合での選手の移動距離は10km前後との報告もありますが、年々増加傾向にあり、Jリーグの試合では12km~13km程度です。
しかしながら、世界的な大会での優勝チームでの移動距離が短かったとの報告もあり、移動距離自体は競技レベルと直接的な関係がないとも言われています。

生理学的強度

【サッカーの試合における平均的な生理学的強度】
最大酸素摂取量(VO₂MAX):70%~80%
心拍数:170前後
※ 90分間の試合での移動距離を10kmと仮定すると走行速度は平均で分速111mとなり、これは歩くことも可能でVO₂MAXは50%にも満たないです。しかし実際には1試合当たりVO₂MAX70%~80%となるため、瞬発的な高強度運動を瞬時の判断で繰り返しおこなっています。

サッカー選手に求められる体力特性

近代サッカーにおいて勝利するためには、戦術を忠実に消化することができる身体能力をいかに多く持ち合わせているかにかかっていますが、サッカー選手にとって重要な体力のパラメーターは「最大に」ではなく、「最適に」発達させることが重要です。

サッカー選手のトレーニングとして求められるものは、スキル系、スタミナ系。パワー系の3要素に分けることができます。

年代別の体力特性

Jリーグトップチームと高校年代のユース選手、中学年代のジュニアユース選手を比較した研究によると

・筋肉量はトップ選手が多い
・等速性筋力はトップ選手が強い
・VO₂MAXの体重比別ではユースとジュニアユースが高い

この結果が示すように、より高いレベルでプレーするサッカー選手に求められる体力については、高い活動量を維持するための有酸素能力よりも、競り合いや瞬発的な動作(高強度運動)に必要な筋力が重要です。

アスレチックリハビリテーションの目安

サッカーに必要とされる体力の指標を知ることができれば、怪我後の競技復帰へ向けたアスレチックリハビリテーションの目安を設定することができます。

通常、幹部に対する負荷量を段階的に上げていくのであれば、有酸素性持久力(歩行→ジョギング→ランニング)から無酸素性持久力(ランニング→スプリント→ダッシュ・方向転換)へ漸進性の法則に従っておこなっていきます。

サッカーへの競技復帰では、90分間で10km以上走る有酸素性持久力が必要なため、有酸素性持久力ではVO₂MAX60%~80%で走るLSD(long slow distance)トレーニングから開始するのが一般的です。

サッカーでは競技特性上ダッシュとインターバル(歩行・ジョギング)の反復となるため、競技特性に則したインターバルトレーニングが競技復帰直前に必要となります。負荷量設定する上で、チームとしての基準を設ける方法もありますが、選手によって基礎持久力に開きがあるため、目標心拍数を設定しておこなう方法がおすすめです。
例えば、心拍数170~180程度になるまでダッシュをおこない、ジョギングで120程度になるまでインターバルを挟み、ダッシュを繰り返す方法では、個人の心拍数目標で調整できるため、個別性とサッカーの競技特性に則した負荷量にコントロールすることができます。

まとめ

サッカーで重要となる体力は、ただ長く走れることではなく、状況にあわせて「最適」に動けることです。

しかし、アスレチックリハビリテーションなどの怪我からの競技復帰をする場合にはサッカーに限らず、スポーツ競技の特性と心拍数目安を知ることで、アスレチックリハビリテーションの負荷量設定と競技復帰の目安にすることができます。

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